IT普及の基本指標はパソコンやインターネットの世帯普及率である。 パソコン世帯普及率は2人以上の世帯を対象とした内閣府(旧経企庁)調査と単身者を含む総務省(旧郵政省)調査とがある。 内閣府調査によるとパソコン普及率は1990年代前半までは10%台と一部専門家やマニアに限られた普及であったのに対して、90年代後半からはどんどん普及率が上昇し、2001年には半数を越え、国民に広く普及したことが解る。2004年には65.7%と前年の63.3%から2.4%ポイントの増と上昇幅が縮小し、こうしたものの普及率が一般的にたどるいわゆるロジスティックカーブの後半局面に入っていることがうかがえる。そして2005年にはついに対前年マイナスの64.6%となったが、2006年以降、再度、普及率は上昇し2008年には73.1%と過去最高となった。一方、総務省調査では2006年末にパソコン普及率はかなり低下したのち2007年末に85.0へと再度上昇している。 インターネット普及率については、総務省の調査が96年から行われているが、2002年からは総務省統計局の家計調査の付帯調査でも私的利用に限って四半期別に調査されるようになった。 96年からのインターネット世帯普及率を見ると2000年頃から急速に普及が広がったことがうかがえ、これが、上記のパソコン普及率上昇にも影響を与えていることが解る。2003年には88.1%と9割近くに達している(携帯電話のiモードなども含んでいるので同じ総務省のパソコン普及率と比べても高い値となっている)。その後、パソコンと同様ロジスティックカーブの後半局面に入り、2004年にはついに対前年マイナスの86.8%となったが、07年には再度91.3%へ上昇した。 一方、家計調査によるインターネット世帯普及率は、総務省調査が横ばいに転じているのに対して、なお、上昇傾向を辿っており、2006年第3四半期にはついに50%を突破している。ビジネス利用は一段落したが私的利用はなお増え続けていると考えることができる。もっともこれも2007年〜08年には横ばい状態となった。 インターネットの人口普及率については、総務省によって推計されているので、図録6210に掲げた。これを見ると、世帯普及率とは異なり一貫して普及率が上昇している。なお図録6210には、年齢別の利用格差(デジタル・デバイド)の状況についても図示したので参照されたい。 一方、インターネットの利用密度は、世帯普及率のように一段落という状況でない。国民平均のインターネット利用時間は長くなり続けており(図録3960)、またウェッブ・サイト上の情報量(コンテンツ量)の拡大も止まるところを知らない(図録6310)。 関連して携帯電話の世帯普及率は図録6350参照。中国の都市世帯当たりパソコン普及台数は図録8200参照。 (統計調査についてのコメント) 内閣府調査は、家電新旧「3種の神器」の普及率などでもよく引用され、信頼度の高く、パソコン普及率では長期時系列を得られる調査である。総務省(旧郵政省)調査はやや信頼性に欠けるので使用に当たっては注意が必要である。両者とも調査対象世帯数は同程度であるが(内閣府調査04年5000世帯程度、総務省調査03年6400世帯程度)、有効回答率は内閣府調査がほぼ100%であるのに対して、総務省調査は半分程度(03年52.4%)となっており、情報通信に関心が高く普及率も高い世帯が多く回答するというバイアスがかかっている可能性が高い。従って総務省調査を使用するときはこうした点を考慮し、割引して評価する必要があろう。パソコン普及率、インターネット普及率ともに、総務省調査は単身世帯を含んでいるが、高齢単身世帯の多くは回答していない可能性があり、値も高く出すぎている感じが否めないのである。 (2004年5月29日パソコン普及率A95年値追加。統計調査コメント修正追加、2004年5月20日インターネット世帯普及率の推移の図の(注)を修正、2005年4月18日、5月17日、11月11日更新、2005年12月23日インターネット利用密度のコメント追加、2006年4月24日・5月20日・8月14日・11月10日・2007年2月13日・5月26日・8月10日・10月22日・2008年2月15日・5月13日・6月12日更新) |
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