2009年3月21日18時0分
空爆の被害がいまだ残るベオグラードの元中国大使館=国末写す
99年の北大西洋条約機構(NATO)による対ユーゴスラビア空爆で誤爆されたベオグラードの中国大使館が、10年たった今も廃虚のまま放置されている。再利用のめどは立たず、中で勝手に暮らす人もいるほどだ。
大使館は99年5月7日夜、空爆を受けて大破、死者も出た。当時のクリントン米大統領が誤爆を認め、中国側に謝罪。その後大使館は移転し、建物はセルビア当局の管理下に置かれたが、壊れたまま放置され、荒れ果てた。
勝手に住み着いた男性が館内にいた。ブディミル・ヤニッチさん(48)は、かつて田舎町の電力会社で技師として働いたが「家族とのトラブルがあり、酒も飲み過ぎた」ことから家を出て、3年半前に大使館内に転がり込んだ。
館内には当局の警備員がいるが、これまでは大目に見てもらってきたという。もっとも最近、うっかり地元テレビの取材を受けたら、番組を見た警察が踏み込んできた。退去を命じられたうえ、殴られたという。
ベオグラード市内は、空爆後10年を経ても、破壊された建物の多くは廃虚のまま。昨秋の金融危機の影響もあり、修復や建て替えは当面見込めないという。(ベオグラード=国末憲人)