イチローが決めた「神が降りた」/WBC
<WBC:日本5−3韓国>◇23日(日本時間24日)◇決勝◇米カリフォルニア州ロサンゼルス、ドジャースタジアム
さすが日本が誇る世界一のバットマン! イチロー外野手(35=マリナーズ)が3−3で迎えた延長10回表2死二、三塁のチャンスで、中前へ勝ち越しの2点適時打を放った。粘る宿敵韓国を突き放し、4時間の死闘にケリをつけた。ここまで不調だったが、WBCタイ記録の1試合4安打をマーク。世界一連覇の立役者となったイチローは「僕は(強運を)持ってますね。神が降りてきました。イキそうになった」と興奮した。
もがき苦しんだ先に、最高の結果が待っていた。グラウンドにカラフルな紙吹雪が舞う中、金色のチャンピオントロフィーを高々と掲げたイチローは誇らしげに、頼もしげに、一緒に戦い、支えてくれた仲間を見つめた。韓国との決勝まで通算38打数8安打、打率2割1分1厘と不調だった。だが最後の決戦で4安打と本来の力を発揮した。
イチロー 個人的には想像以上の苦しみ、つらさ、痛覚では感じない痛みを経験した。谷しかなかったです。最後に山に登れて良かった。日本のファンの方々に笑顔を届けられて最高です。日本のすべての人に感謝したいですね。
連覇まであと1アウトから同点に追い付かれて迎えた10回表2死二、三塁。締め付けられるような緊迫感を突き破ったのは、イチローのバットだった。メジャーの公式戦では、ほとんどのチームが敬遠策を取るケース。韓国ベンチも「無理に勝負しなくていい」サインを捕手へ送ったが、伝達ミスで4番手の林(ヤクルト)は真っ向勝負を続けた。粘った末の8球目。中前へはじき返した2点適時打が、宿敵の息の根を止めた。
イチロー 僕は(強運を)持っていますね、やっぱり。神が降りてきましたね。(打席では)本当は無の境地でいたかったが、めちゃくちゃいろんなことを考えました。今(日本は)ごっつい視聴率だろうなあとか、オレは(ツキを)持っているなあとか。ここで打ったら、日本がものすごいことになるって、自分の中で実況しながら。こういう時って結果が出ないんですけどね。そういう意味ではひとつカベを越えた気がしました。
世紀の一戦で千両役者は健在だった。だが、頂点に立つまでのイチローは、これまでとは違う重圧と闘ってきた。元来、自他ともに認めるスロースターター。公式戦でも「4月は助走時期」と言うほどで、状態を3月中旬にピークを持っていくことは生易しいことではなかった。東京での第1ラウンド2戦目の韓国戦で3安打したものの、その後は低迷。「心が折れそうになった」とこぼしたほどで、試合後は、みけんにシワを寄せ、険しい表情のまま引き揚げる日々が続いた。
その原因は、筋肉の質にあった。「スポーツ界でも屈指の柔らかい筋肉」(森本専属トレーナー)を持つイチローは、例年、実戦を積んでいく5月ぐらいから筋肉の質が変わる。このオフはWBCに備え早めに仕上げてきたが、アリゾナ合宿後も「しまりのないままの筋肉」(同トレーナー)だったが、20日にロサンゼルス入り後、質が変わった。体重は変わらないままウエストと両足ふくらはぎが、それぞれ約2センチ減少。本来のキレ味が戻るのは時間の問題だった。
2月の宮崎合宿以来、日本中の注目を集める中、肩書こそなかったが、リーダーとして連覇へ導いた。実は首脳陣のキャプテン就任依頼も断った。だがこの試合前にはベンチ前でナインが円陣を組んだ中、「世界一をとるゾ!」とゲキを飛ばした。「聞こえちゃいましたか。さすがに今日だけはやっちゃいました」と照れた。
次回の2013年は39歳となる。出場の可能性を聞かれたイチローは、笑顔で言った。
イチロー むちゃな質問しますねえ。4年後なんて生きてるかどうかだって分からないじゃないですか。
重圧からの解放感、世界一の満足感にひたるイチローから、笑顔が途切れることはなかった。【四竈衛】
さすが日本が誇る世界一のバットマン! イチロー外野手(35=マリナーズ)が3−3で迎えた延長10回表2死二、三塁のチャンスで、中前へ勝ち越しの2点適時打を放った。粘る宿敵韓国を突き放し、4時間の死闘にケリをつけた。ここまで不調だったが、WBCタイ記録の1試合4安打をマーク。世界一連覇の立役者となったイチローは「僕は(強運を)持ってますね。神が降りてきました。イキそうになった」と興奮した。
もがき苦しんだ先に、最高の結果が待っていた。グラウンドにカラフルな紙吹雪が舞う中、金色のチャンピオントロフィーを高々と掲げたイチローは誇らしげに、頼もしげに、一緒に戦い、支えてくれた仲間を見つめた。韓国との決勝まで通算38打数8安打、打率2割1分1厘と不調だった。だが最後の決戦で4安打と本来の力を発揮した。
イチロー 個人的には想像以上の苦しみ、つらさ、痛覚では感じない痛みを経験した。谷しかなかったです。最後に山に登れて良かった。日本のファンの方々に笑顔を届けられて最高です。日本のすべての人に感謝したいですね。
連覇まであと1アウトから同点に追い付かれて迎えた10回表2死二、三塁。締め付けられるような緊迫感を突き破ったのは、イチローのバットだった。メジャーの公式戦では、ほとんどのチームが敬遠策を取るケース。韓国ベンチも「無理に勝負しなくていい」サインを捕手へ送ったが、伝達ミスで4番手の林(ヤクルト)は真っ向勝負を続けた。粘った末の8球目。中前へはじき返した2点適時打が、宿敵の息の根を止めた。
イチロー 僕は(強運を)持っていますね、やっぱり。神が降りてきましたね。(打席では)本当は無の境地でいたかったが、めちゃくちゃいろんなことを考えました。今(日本は)ごっつい視聴率だろうなあとか、オレは(ツキを)持っているなあとか。ここで打ったら、日本がものすごいことになるって、自分の中で実況しながら。こういう時って結果が出ないんですけどね。そういう意味ではひとつカベを越えた気がしました。
世紀の一戦で千両役者は健在だった。だが、頂点に立つまでのイチローは、これまでとは違う重圧と闘ってきた。元来、自他ともに認めるスロースターター。公式戦でも「4月は助走時期」と言うほどで、状態を3月中旬にピークを持っていくことは生易しいことではなかった。東京での第1ラウンド2戦目の韓国戦で3安打したものの、その後は低迷。「心が折れそうになった」とこぼしたほどで、試合後は、みけんにシワを寄せ、険しい表情のまま引き揚げる日々が続いた。
その原因は、筋肉の質にあった。「スポーツ界でも屈指の柔らかい筋肉」(森本専属トレーナー)を持つイチローは、例年、実戦を積んでいく5月ぐらいから筋肉の質が変わる。このオフはWBCに備え早めに仕上げてきたが、アリゾナ合宿後も「しまりのないままの筋肉」(同トレーナー)だったが、20日にロサンゼルス入り後、質が変わった。体重は変わらないままウエストと両足ふくらはぎが、それぞれ約2センチ減少。本来のキレ味が戻るのは時間の問題だった。
2月の宮崎合宿以来、日本中の注目を集める中、肩書こそなかったが、リーダーとして連覇へ導いた。実は首脳陣のキャプテン就任依頼も断った。だがこの試合前にはベンチ前でナインが円陣を組んだ中、「世界一をとるゾ!」とゲキを飛ばした。「聞こえちゃいましたか。さすがに今日だけはやっちゃいました」と照れた。
次回の2013年は39歳となる。出場の可能性を聞かれたイチローは、笑顔で言った。
イチロー むちゃな質問しますねえ。4年後なんて生きてるかどうかだって分からないじゃないですか。
重圧からの解放感、世界一の満足感にひたるイチローから、笑顔が途切れることはなかった。【四竈衛】
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