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ちば知事選2009:県政への課題/下 地域医療 /千葉

 ◇医師不足で窮地 病院縮小し診療所に…県内では20診療科減

 かつて病室だった部屋のベッドは、片隅に寄せられていた。医師不足で07年11月、病院から診療所に規模を縮小した市原市国保診療所(同市養老)。2階の病棟は閉鎖され、ナースステーション、廊下、病室に人の気配はない。

 07年1月、同市国保市民病院(当時)は、千葉大医学部の医局に復帰する外科医2人の代わりの医師の派遣を同大に要請した。しかし、千葉大側から「医局にも人がいない」と断られた。同院では06年12月に院長が急逝。院長を含め4人いた常勤医は1人に減った。医師確保のめどはたたず、07年11月に病院を廃止。ベッドをなくし、診療所に縮小して診療業務を続けている。

 同病院は77年に設立。市南部の人口が少ない地域で、地域医療を担っていた。毎年赤字を出していたが、地域医療の拠点として、市に廃止する考えはまったくなかったという。

 しかし、降ってわいた「医師不足」。「千葉大に医師の供給を頼り切っていた。『来ない』となったら、他の手段がなかった」。市保健福祉部の鹿島毅次長は振り返る。診療所も今年7月に廃止の予定で、「民設民営」の診療所に生まれ変わる。自治体病院がまた一つ、なくなる。

 04年度に導入された「新臨床研修制度」。新人の医師が自由に研修先を選べる制度で、最先端の医療設備が整い、症例が多い病院に集中する傾向が顕著になった。公立病院の医師の供給元だった大学病院も人員が減り、市原市には「代わりの医師」が派遣されなかった。

 医師が診療を通じて上げる年間収益は「1人1億円」とされる。医師不足はそのまま、病院の経営に直結する。多くの自治体が財政難に悩まされる中、「経営悪化」は病院存続の危機につながる。県内の自治体病院の常勤医はこの4年間で、29人減った。

 県医療整備課のまとめでは、04年以降、銚子市立総合病院が08年10月に診療を休止。「医師不足」を理由とした産科、小児科などの診療科の廃止は3病院で5科、休止は8病院で15科に上る。

 県内の人口10万人当たりの医師数は全国ワースト3位。ただ、02年からの4年間で、医師数自体は817人増加している。県医療整備課は「医師の数は増えているが、待遇の良い診療所や、開業する医師が多いのでは」と分析している。

 県は医師確保策として、研修医や医学生に資金を貸し付け、自治体病院での勤務を条件として返還を免除する制度や、県外から医師を招へいする場合、自治体が研究費を貸して県が半分を負担する制度などを設けている。

 また、「ドクターバンク事業」として06年10月から、転職、再就職を希望する女性や退職した医師の就業支援を行っている。しかし、これまでの成功実績は1件だけ。今年1月時点でも、245人の求人に対し求職する医師は5人と、「需要過剰」な状況が続く。

 市原市国保診療所の待合室で診察を待つ男性(64)は「この地域は捨てられたんだよ」と寂しげに話す。この男性のつぶやきに、どう応えていくのか、県の医療行政が問われている。【神足俊輔】

 ■候補者アンケート(届け出順)

 ◆質問

 医師不足など地域医療問題への取り組みは?

 ◇森田健作氏

 医師や看護師不足の解消のため、県内就業の促進や離職の防止、再就業のための支援強化が必要。さらに全国の先進優良事例を参考にしながら、県内の医療関係者や医療機関と連携して医療を守る県民運動を推進する。

 ◇八田英之氏

 県立病院の充実など県が地域医療に責任を果たす確固とした姿勢をまず示す。その上で、医師や看護師など医療スタッフ確保の独自対策を強める。国追随の自治体病院つぶしをやめ、県として存続・充実への支援を講ずる。

 ◇西尾憲一氏

 現在の医師不足に対応するためには、現在の医療機関施設に医師がいてもらえる魅力作り、例えばICUを装備したドクターカー導入や、IT技術を利用した遠隔治療制度の導入で、将来は県立医科大学創設で対応します。

 ◇白石真澄氏

 病院局の地方独立法人化により、県立病院の合理化と自立化を図り、一般会計の繰出金を抑制し地域医療の中核病院への支援に回す。教育機関との連携のもと医療従事者の確保に努める。医療連携のシステム化を進める。

 ◇吉田平氏

 「助かる命を必ず助ける」ための救急医療システムを構築。民間と協力し4年制医大を創設、千葉大医学部の定員を増やし、県内の医療機関に医師を確保します。銚子市立病院など自治体病院を県がバックアップします。

毎日新聞 2009年3月25日 地方版

 
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