余録

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余録:韓国のプロ野球

 韓国でプロ野球が産声を上げたのは1982年。国民の人気が高いのはサッカーで、野球が定着するのか危ぶむ声が高い中での旗揚げだった。軍事政権が国民の目を政治から野球にそらす狙いがあるのではという声も聞かれた時代だ▲最初に直面した問題は選手不足。韓国では日本のように全国津々浦々の高校生が野球をしているわけではない。そのときに大いに力になったのが日本のプロ野球に所属していた在日韓国・朝鮮人のプロ選手たちだった▲発足2年目に広島カープから三美スーパースターズに移った張明夫(日本名・福士敬章)投手はシーズン100試合中、実に60試合に登板し、30勝16敗で最多勝。84年には元巨人エースの金日融(同・新浦寿夫)投手が三星ライオンズに入団、16勝10敗3セーブと大活躍した▲中には日本国籍を取得していた選手もいたが、等しく「在日僑胞」として迎えられた。彼らは日本で生まれ、日本の教育を受けたため韓国語は話せず、食事や文化の違いにも苦しんだ。それでも父や母が生まれた「祖国」の野球普及のため礎石になる決意で玄界灘を越えたに違いない▲大詰めを迎えた第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本と韓国が準決勝に進み、決勝で日韓両国が世界一を争う可能性も出てきた。ここまでの直接対決は2勝2敗と全くの互角だ。決着の舞台がWBC決勝戦となれば最高の条件が整う▲27年前には想像もできないほど日本と韓国の野球レベルが接近した。センバツが開幕し、野球の季節が満開となった今、身をもって日韓交流の懸け橋となった野球人たちの労苦にも思いを巡らせたい。

毎日新聞 2009年3月22日 0時02分

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