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日教組会場問題:宿泊拒否、プリンスホテル書類送検 旅館業法違反容疑、社長ら4人も

 グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)とグランドプリンスホテル高輪(同)が07年11月、日本教職員組合(日教組)の全国集会の会場使用を拒否し、集会参加者190人分の宿泊を取り消した問題で、警視庁保安課は17日、経営する「プリンスホテル」(豊島区)の渡辺幸弘社長(61)と両ホテルの小山正彦総支配人(52)ら幹部計4人と、法人としての同社を旅館業法(宿泊させる義務)違反容疑で書類送検した。同課によると、全員容疑を認め、渡辺社長は「右翼団体などの活動で周辺住民や利用客に多大な迷惑をかけてしまうと思い、やむを得なかった」と供述しているという。【武内亮】

 旅館業法は、伝染病感染や賭博などの違法行為の恐れがある客らを除き、宿泊を拒んではならないと定めている。保安課は予約を一方的に取り消したプリンス側の行為を悪質と判断した。

 他に送検されたのは▽管理部門担当の支配人(45)▽宴会部門担当の支配人(54)の2人。

 送検容疑は、日教組から第57次教育研究全国集会(08年2月)の集会参加者の宿泊用として、08年1月31日~2月4日の190人分の予約申し込みを受け、07年8月に承諾。ところが同11月12日、拒否の理由がないのに宿泊予約を一方的に取り消したとしている。

 日教組は同12月、東京地裁に施設使用を求める仮処分を申請し、地裁は使用を認める決定を出したが、プリンス側が抗告。東京高裁は抗告を棄却したにもかかわらず、プリンス側は「裁判所の判断は尊重しなければならないが、営業上の判断としては開催できない」と改めて使用を拒否、全体集会は史上初めて中止となった。

 日教組は08年3月、渡辺社長らに対し慰謝料など約3億円の損害賠償を求め東京地裁に提訴。8月に旅館業法違反容疑で警視庁に刑事告訴していた。

 ◇「重く受け止める」--プリンスホテル

 書類送検を受け、プリンスホテルは「利用者や周辺住民らへの迷惑を避けたい一心からやむを得ず日教組による宴会場の利用を断った。その結果、宿泊も不要になると考え断った。宿泊を断ること自体を目的としていたわけではないが(書類送検された)事態は重く受け止めている」とのコメントを出した。

 ◇「厳正な処分を」--日教組

 日教組は「(書類送検を受けた)地検には厳正な処分をしてほしい」と話している。

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 ■解説

 ◇順法精神欠如に警鐘

 警視庁が日教組の教研集会参加者の宿泊予約を一方的に取り消したプリンスホテルの渡辺幸弘社長らを書類送検したことは、順法精神を欠いた企業体質に警鐘を鳴らすものといえる。

 プリンス側は07年8月に予約申し込みを承諾しながら、宿泊施設の基本ともいうべき旅館業法を無視して3カ月後に解約した。さらに、会場としての使用を命じた東京地裁や高裁の決定も拒否した。

 プリンス側は「周辺の学校の受験生や病院の患者にも迷惑がかかると考えた」などと主張する。確かに、教研集会の会場周辺では大規模な抗議活動が半ば慣例となっているが、警察当局との事前の打ち合わせで混乱はほぼ防止されてきた。

 また、日教組によると、会場側の使用拒否で訴訟となったケースは計4回あるが、いずれも日教組側の言い分が認められ集会は予定通り行われてきた。その意味で、全体集会の中止は極めて異例だった。民間ホテルが全体集会の会場となったのは初めてだが、その点を考慮してもプリンス側の主張に説得力がないのは明らかだ。

 日教組側は「企業の論理を司法より優先させた。理不尽な対応が許されれば、(憲法で定める)集会の自由は保障されない」と訴える。私企業である前に社会の一構成員であることの意味をプリンス側はかみしめる必要がある。【武内亮】

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 ■プリンスホテルの旅館業法違反事件の経緯■

 <07年>

 5月    日教組がプリンスホテルと会場使用契約を締結

 8月    日教組がグランドプリンスホテル新高輪・高輪計190人分の宿泊を予約

11月12日 プリンス側が契約解除を通知

12月 4日 日教組が契約解除の無効を求めて東京地裁に仮処分を申請

 <08年>

 1月16日 東京地裁が会場使用認める仮処分決定

   30日 東京高裁がプリンス側の抗告を棄却

 2月 1日 日教組が教研集会の全体集会中止発表

    中旬 宿泊予約の取り消しも判明

   26日 プリンスホテルの親会社、西武ホールディングス社長が初めて会見。「宿泊客らの安全を守りたかった。集会と宿泊は一体で共に解約した」

 3月14日 日教組側がプリンス側に約3億円の損害賠償を求め東京地裁に提訴

   28日 ホテルを監督する東京都港区が「宿泊拒否は旅館業法違反」との判断を示しホテル側も認める

 4月 4日 プリンス側が再発防止策を港区に提出

   15日 港区が旅館業法に基づきプリンス側を厳重注意

 8月    日教組が渡辺社長らを警視庁に刑事告訴

毎日新聞 2009年3月17日 東京夕刊

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