桜井淳所長から東大大学院人文社会系研究科のH先生への手紙 -神学研究の方法 23-
テーマ:ブログH先生
比較宗教学の視点から、『梅原猛著作集第9巻-三人の祖師-』(小学館、2002)の「歎異抄」(pp.371-687)を熟読吟味してみました。梅原先生は、「歎異抄」を最高に高く評価していますが(人生最高の書とまで持ち上げています)、私は、とても、そのように受け止めることは、できませんでした。「歎異抄」は、全18条(pp.641-686)からなる親鸞による浄土真宗の根源的理念である"他力本願"の意味を誰にでも分かるくらい砕けた表現で解説したものです。最澄や空海の仏教論とその宗派の根源的理念を比較し、親鸞の浄土真宗の「南無阿弥陀仏」の誰にでも唱えられる経の単純さと深さを示したものです。そして、何の知識も徳もないどうしようもない悪人ですら、それだからこそ、善人よりも、より救済されなければならないと諭しています。実は、この部分の解釈をめぐって、悪人の方が尊重されているかのように解釈しているひとがいるようですが、そのようなひとたちは、仏教の理念と「歎異抄」に書かれている全体をとおしての意味と主張を理解できないのでしょう。梅原先生はそのあたりをきちんと解説しています。私は、梅原先生の解説を読む前から、梅原先生による18条の現代訳を読むだけで、理解できました。親鸞は、鎌倉時代、京都から離れ、いまの水戸市より西に20kmに位置する笠間市稲田(当時は常陸の国の稲田)で布教活動をしていた時期があり(p.366)、そのことを知ることができただけでも、著作集を読んでよかったと感じました。
桜井淳
同じテーマの最新記事
- 【事務所報告】桜井淳所長の最近の講演内… 03月19日
- 桜井淳所長から京大原子炉のT先生への手… 03月19日
- 【事務所報告】桜井淳所長の最近の講演内… 03月19日