少子化対策PTの第3回会合に識者として出席した(左から)不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さん、国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長
少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第3回会合が9日、内閣府で開かれた。不妊治療の実態を知り、少子化問題とかかわりがあるのかどうか検討した。この日は不妊治療の医療現場にいる国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長、不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さんからのヒアリングと、プロジェクトチームメンバーとの質疑応答があった。
PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香織さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。この日の進行は勝間さんが務めた。
◇ますます必要な生殖補助医療
斉藤さんは、晩婚化▽子宮内膜症の増加▽乏精子症・無精子症の増加▽性感染症の増加--などから「生殖補助医療がますます必要とされている」と説明。現状、個人クリニックで顕微受精など高度な治療を受ける人が8~9割だが、不妊治療は体の状態で行うため土日祝日も診療ができる体制▽カップルに十分な時間をかけ心のケアに配慮した診療体制▽なかなか妊娠に至らない難治患者に対し最適な戦略を立てられる体制--が本来は求められていると述べた。さらに、研究の必要性や治療内容・技術の標準化を図るうえでも、公的な不妊専門センターを設立し、理想的な不妊治療体制を整えるべきだと提案した。
斉藤さんはまた、全初婚妻に占める35歳以上の妻の割合は、1950年は約1%だったが90年には約3%、2006年には約8%となり、分娩(ぶんべん)年齢調査では35~39歳の割合が80年は約4%だったが06年は約16%に増えたと紹介。「20代の後半から妊娠率は下がるということを知らず、年をとってから焦って来院する人が少なくない。年齢が上がると母胎にも負担がかかり、病気や障害をもって生まれる赤ちゃんも多くなる」と報告した。
鈴木さんは、不妊治療を続ける苦しさ・つらさは、外からも心の内からも発生すると説明。「お子さんは?」などと聞かれたり「子どもを生み育てるのは国民の義務だ」などと言われる悲しさ、「自分は劣っているのでは?」「パートナーに申し訳ない」などの悩み、「預金を取り崩した」「仕事と病院通いの両立が難しい」などの生活上の課題など、社会的な意識・制度の未熟さを指摘した。さらに、不妊治療=少子化対策ととらえるのではなく、家族政策や労働政策、科学技術政策、医療政策にも深くかかわっていると強調した。