話題

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

育休切り:不況理由に「戻っても仕事ない」 相談件数3倍

育休に関する相談件数の推移※東京労働局調べ。左棒グラフは相談件数。右棒グラフは、そのうち不利益取り扱いに関する相談件数
育休に関する相談件数の推移※東京労働局調べ。左棒グラフは相談件数。右棒グラフは、そのうち不利益取り扱いに関する相談件数

 不況にあえぐ企業が人件費削減のため、育児休業中の正社員を解雇する「育休切り」が広がりつつある。育児・介護休業法に抵触する疑いが強いが、被害者の多くは再就職の妨げになることを恐れて泣き寝入りするケースが多い。法令が守られているはずの働いて産み育てる権利が脅かされている。【中西拓司】

 「経営悪化でほかの社員に苦労させている。残念だがあなたが戻っても仕事はない」

 建設会社勤務で、育児休業中だった関西地方の30代女性は、08年末、社長に呼び出され、こう告げられた。女性は勤続10年の中堅社員。昨年2月に出産し、先月に復職予定だった。

 会社は世界同時不況で経営が悪化。数字を示して退社を促す社長の姿に反論の意欲をなくした。「あなたの机を使いたい。すぐに中身を整理してくれ」。黙ってうなずくしかなかった。

 育児・介護休業法は子どもが原則1歳になるまで休業できると定め、育休取得を理由にした解雇などを「不利益取り扱い」として禁じている。厚生労働省によると、このケースは、解雇対象を女性のみに限定しているため同法違反が濃厚だ。それでも女性は「再就職の際に今の会社から報復される」と恐れ、不当な扱いに耐えて再就職先を探している。

 「社員が産前休業を取りたいと言い出した。この際、解雇できないか」。東京都の社会保険労務士は2月上旬、顧問先の会社社長からこんな相談を受けた。産前休業を理由にした解雇は男女雇用機会均等法違反だ。社労士は「経営者がここまで人切りに走るとは思わなかった」と驚きを隠さない。

 9月以降、連合の労働相談には▽「会社が復職を受け付けず、逆に退職を勧められた」(外資系企業勤務の30代女性)▽「復職しようとしたら、パート勤務を命じられた」(教育関連企業勤務の30代女性)--など育休に関する悩みが多数寄せられている。

 東京労働局によると1月の育休相談は前年同期の2倍弱の73件。このうち解雇など「不利益取り扱い」の相談は30件に及び前年の3倍に膨れあがっている。

 【ことば】▽育休切り▽ 育児休業中の正社員を解雇したり、非正規社員化すること。不況に伴う企業の人員削減に伴って最近、労働関係者の間で使われ始めた。育休を理由にした解雇は育児・介護休業法違反となるため、経営悪化などを理由に退職を迫るケースが多い。解雇された側が労働局に訴え出ても、育休と解雇の因果関係の立証が難しいため、解雇撤回にこぎつけられた事例は少ない。

毎日新聞 2009年3月6日 2時30分(最終更新 3月6日 3時25分)

検索:

関連記事

3月6日育休切り:不況理由に「戻っても仕事ない」 相談件数3倍写真付き記事

話題 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報