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朝日新聞阪神支局襲撃:「実行犯」手記掲載 新潮社、抗議男性と和解

 ◇訂正、謝罪は出さず

 朝日新聞阪神支局襲撃事件など一連の警察庁指定116号事件を巡り、週刊新潮が「実行犯」を名乗る島村征憲氏(65)の手記を掲載した問題で、発行元の新潮社が手記で犯行の「指示役」とされた元在日米国大使館職員の男性(54)から抗議を受け、この男性と和解していたことが分かった。和解内容は非公表だが、男性は毎日新聞の取材に「事件にかかわっていないとの抗議を新潮社が重く受け止め、真摯(しんし)な姿勢で応えてくれたため和解した」と話している。

 手記は1~2月に4回にわたり掲載。男性は2月12日号以降の3回で取りあげられ、米国大使館に勤務していた86年に島村氏に散弾銃や現金を渡し犯行を依頼したとされた。2月19日号では、島村氏に呼び出され、都内の公園で島村氏と話しているモザイク加工の写真を掲載された。

 これに対し男性は2月23日に新潮社を訪れ、「手記で犯行を依頼したとされる86年当時は島村氏のことは知らなかった。事件とは無関係」などとする抗議文を渡し、謝罪と記事の訂正を求めていた。

 関係者によると、男性は新潮社と数回にわたり話し合った結果、「納得できた」として、今月19日に新潮社と和解の合意書を交わしたという。毎日新聞が和解の事実確認を求めたところ、週刊新潮編集部は文書で「和解内容については明らかにできませんが、訂正や謝罪記事も出すことはありません」と回答した。【石丸整、臺宏士】

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 ■解説

 ◇和解内容詳細に説明責任果たせ

 今回新潮社と和解した元米国大使館職員は、島村征憲氏が「犯行の指示を受けた」と明かした事件の核心部分を握るキーパーソンだ。事件への関与を否定し、訂正・謝罪を求めて抗議した職員が納得した形で和解に応じたことは、週刊新潮が島村氏の告白に基づいて描いた事件の構造が崩れたことを意味する。

 毎日新聞は20日、記事が誤報だったかどうかについて、改めて新潮社に文書で質問した。これに対し、同誌編集部は和解内容について「第三者条項があるので明らかにできない」としたうえで「訂正や謝罪記事も出すことはない」と回答した。

 一連の連載記事は、新潮社と職員が外部に漏らさないことを約束する形で、内々に和解して済む話だろうか。記事はさまざまな波紋を広げた。例えば、公訴時効を迎えた後も「犯人が名乗り出てくるかもしれない」と期待していたという被害者の故・小尻知博記者の両親は一方的な告白を掲載した記事に対して「残念で仕方ない」と怒りを口にした。新潮社がこのまま口をつぐむのであれば、雑誌ジャーナリズム全体の信用が揺らぎかねない。和解内容について詳細に説明する責任を果たすべきだ。【臺宏士】

毎日新聞 2009年3月21日 東京朝刊

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