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定額給付金とモラルの退廃

2009年3月20日

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 08年度第2次補正予算の財源特例法がやっと国会で成立し、懸案の定額給付金も市町村を通じ国民に配られ始めた。この定額給付金は当初から問題視され、2兆円という現金が国民全員に支給される一見善政に見えそうな施策が、必ずしも多くの国民からの支持を集めていない。その理由は、まず麻生首相の二転三転する自信なげな姿勢そのものが、国民の不信をかったことがあげられよう。そのため定額給付金の性格、狙いなどを、国民に説得的に説明できずに国会での不毛な論戦を招いてきた。

 そしてその支給の時期が市町村ごとにばらばらで、国全体の政策としてその存在感が甚だ希薄なことである。更に、定額給付金の支給を受けた国民の声が報道されているが、「温泉へ行く」「ごちそうを食べる」程度の話が多かった。景気のための消費刺激とはいえ、税金2兆円も使ってこんなことでいいのか考えさせられる。

 もっと問題なのは、この定額給付金を評価しないという声が多いのに、辞退者がごく少ないという事実だ。まさにモラルの退廃である。最近の主要なマスコミの世論調査によると、定額給付金を「評価しない」とする意見が大体6割前後である。これに対し、「受けとらない」とする回答はほんの数%に過ぎない。評価しないなら、受け取らないのが筋であろう。このことは定額給付金に反対だが、政府がくれるからもらっておくといった身勝手なご都合主義のいい加減な態度といえる。腹の中で冷笑しているのだから、定額給付金が配られても麻生首相が期待しているように内閣支持率が上がるとも思えない。天下の愚策といわれた地域振興券以上に、愚策といえよう。(安曇野)

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