【エルサレム前田英司】19日付のイスラエル紙ハーレツは、先のパレスチナ自治区ガザ地区攻撃に参加したイスラエル兵の証言を掲載した。兵士間の連絡不徹底などで無抵抗の市民が射殺されたり、意図的に家屋が破壊されたりしていた事態が報じられた。軍当局はこれまで兵士の行動が倫理的だったと主張しているが、同紙は「証言内容は軍の説明と相反する」と批判している。
兵士が地元メディアに戦闘現場の具体的な状況を証言するのは異例。軍当局は特定の軍事関連報道を検閲しているが、ハーレツは「初の無検閲の証言」としている。
歩兵分隊長の証言によると、パレスチナ人民家を占拠した際、住人に「家を出て右側へ進め」と退去を命じたところ、誤って左側に行った母子3人が屋上にいた狙撃兵に射殺された。狙撃兵は母子の姿を確認していたが、住人退去の連絡を受けていなかった。誰も近づけるなと指示されていた距離に母子が近づいたため、命令に従って射殺したという。
分隊長は「狙撃兵は指示通り動いただけ。(現場の)雰囲気はパレスチナ人の命はイスラエル兵の命よりずっと軽い、という感じだった」と話した。
軍当局は、現時点で証言を確認できる証拠はないとしつつも、調査するという。
イスラエル軍は昨年12月27日、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスを弱体化するため、大規模な空爆を開始。1週間後には地上侵攻に踏み切り、1月18日の「停戦」までに多数の市民を含む1300人以上のパレスチナ人が死亡した。
毎日新聞 2009年3月19日 20時44分(最終更新 3月19日 23時26分)