Thu, March 19, 2009 stanford2008の投稿

桜井淳所長から東大大学院人文社会系研究科のH先生への手紙 -神学研究の方法 22-

テーマ:ブログ

H先生



いつの時代にも各宗教とも厳しい戒律があります。たとえば、①"不殺生戒"(そのひとつとして、仏教においては、肉・魚介類の利用禁止による精進料理の勧め)(宗教ごとの利用禁止品目については本欄バックナンバー参照)、②聖典・経典の理解、③日課の祈り(イスラーム教では、アラビア半島のメッカ(Mecca)にあるカーバ宮殿方向を向かい、日に5回(日の出、正午、午後、夕刻、就寝前)の祈り)、④"断食"(イスラーム教では、年1回、具体的には、イスラーム暦の第9月(これにルビーをつければダマラーン)に、1ヵ月間、毎日の暁から日没まで、生命維持のための水以外は、制限されています)などがそれです。


唐突ですが、遣唐使として唐の時代の長安(上海から西に数百kmくらいのいまの西安)に仏教留学した最澄(留学当時38歳、その知識レベルからして、たとえるならば、大学の先生クラス)と空海(留学当時31歳、たとえるならば、大学の学生レベル)は、帰国後(最澄は、予定どおり1年後に帰国、空海は、20年間留学の予定でしたが、重大な規則違反をしてまでも、2年後に帰国しました)、仏教普及のために、お互いに切磋琢磨しましたが、最終的には、密教(自然まで含めた仏教)の理解をめぐり、絶縁状態になりました(『梅原猛著作集第9巻-三人の祖師-』、p.272、(小学館、2002))。"密教の理解をめぐり"とは、具体的には、空海が持ち帰った経典を最澄が借用したいと申し出たところ、空海は、"密教は、経典を読んだだけでは本質に到達することはできず、"毎日の深い修行"と併せて初めて到達できる"と諭したことです(p.272)。


一般論として言えば、神学と比較宗教学の研究では、神学や宗教を単なる研究対象としていますが、私には、空海の言葉が妙に耳に残ります。私は、今後ともずっと、あくまでも研究対象の立場を堅持しますが、実行可能な範囲内で、決して無理せず、"不殺生戒"(精進料理)と"断食"(週1回日曜日)と"毎日の深い修行"を日常生活の中に組み入れたいと思案中です。そして、最も根源的な神学の研究と一次資料としてのヘブライ語での旧約聖書の熟読吟味による聖書解釈論・聖書哲学の研究に努めたいと考えています。



桜井淳

Thu, March 19, 2009 stanford2008の投稿

桜井淳所長から親しい友人のX先生へのメール 2-核燃料サイクル施設の臨界リスク解析の考え方-

テーマ:ブログ

X先生



核燃料サイクル施設の安全審査においては、具体的には、新燃料貯蔵庫、新燃料輸送容器、使用済み燃料輸送容器、使用済み燃料中間貯蔵輸送容器の臨界安全解析評価において、保守的評価を行うために、実際には、起こりそうもない"最適減速状態"を想定しています。すなわち、それは、単純に、燃料材と減速材の幾何学的配置で決まる条件だけではなく、減速材の状態、具体的には、中性子吸収断面積が無視できない水のような減速材であれば、4℃の水密度最大の条件だけではなく、中性子の水中における吸収効果と減速効果のバランスから、吸収効果よりも減速効果の大きくなる水密度の条件で評価しています。具体的には、水密度の10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100%の個々の状態で臨界解析(実際の計算には世界的にオーソライズされている計算コードが採用されています)を行い、実効中性子増倍係数keffの変化を検討し、keffの値がピークになる密度を決めます。しかし、その水密度は、あくまでも、保守的評価のためであって、実際には、実現できるような状態ではありません。私は、原子力発電所に設置された新燃料貯蔵庫の臨界安全解析の経験がありますが、"最適減速状態"(この状態でもkeff<0.95の確保が義務づけられています)は、水密度の20-30%の時にkeffが急増するピークが現れますが、その密度は、分かりやすいたとえを行えば、スプリンクラー(実際には設置されていませんが)が作動した時に近いとされています。フランスから日本へMOX燃料が輸送されますが、何らかの不祥事(輸送船沈没、テロ、海賊襲撃等)によって、MOX燃料輸送容器が海中に落下したとしても、"最適減速状態"にはならないでしょう。私の推定では、もし、確率論的臨界リスク解析を実施すれば、輸送容器の海中への落下確率は、大きく見積もっても、輸送期間中に1/100以下、海中落下によって"最適減速状"(この状態でもkeff<0.95の確保が義務づけられています)になる確率は、輸送期間中に1/10000、よって、最終的には、臨界になる確率は、輸送期間中に1/100万分より小さな値となって、実際には、起こらないと考えてよいと思われます。このような考え方は、世界的に、これから本格的に研究されようとしている"臨界リスク解析"という研究分野ですが、行政側と世の中の認識が遅れているため、このような考え方は、まだまだ、受け入れられません。受け入れられる時期は、早くて、10年後くらいでしょうか。



桜井淳

Wed, March 11, 2009 stanford2008の投稿

桜井淳所長から東大大学院人文社会系研究科のH先生への手紙 -神学研究の方法 21-

テーマ:ブログ

H先生



比較宗教論の視点から、仏教についても基本的なことは、勉強しています。最近、啓蒙書ですが、久しぶりに、瀬戸内寂聴『般若心経』(中央公論社、1991)を読み直してみました。これは、寂聴尼僧の京都にある私設のお寺である寂庵での11回の般若心経法話をまとめたものです。寂聴尼僧の法話を聞くために、考えられないくらい多くのひとたちが集まっています。東北の山奥の天台寺での法話には、午前中2000名、午後3000名も集まるのですから、奇跡的な数です。これほどひとを集められる著名人はいないのではないでしょうか。これを読むとその意味がよく分かります。寂聴尼僧の法話の魅力を一言で言えば、①寂聴尼僧の人間としての魅力、②生き方の魅力、③知識の豊富さ、④話し方のうまさ、⑤内容の面白さ、⑥ただ面白いだけでなく、その中に、ほんの少しですが、人生の本質が散りばめられており、参加者は、いつ飛び出すか分からないその本質を聞き逃すまいと、注意を集中して、耳を傾けているのです。各法話では、最初の8割くらいの時間は、世の中のことや自身の人生、さらに、釈迦の人生や仏教についてであって、残り2割くらいの時間で、本来の目的である「般若心経」について、解説しています。仏教をこれほど面白く話せるひとはいないのではないでしょうか。感心しました。しかし、釈迦や仏教について、私の知らないことは、ひとつもありませんでした。「般若心経」は、本文266字の非常に短いお経であるために、誰にでもよく分かる内容ですが、解釈の仕方によっては、無限に深い意味が含まれているのでしょう。その内容は、一言で言えば、仏教の本質であるところの"人間いかに生きるべきか"、その指針、すなわち、"好ましい考え方と行い"について、説いたものです。



桜井淳

Wed, March 11, 2009 stanford2008の投稿

桜井淳所長から東大大学院人文社会系研究科のH先生への手紙 -神学研究の方法 20-

テーマ:ブログ

H先生



比較宗教学の視点からいくつかの資料を熟読吟味しています。そうするうちに、旧約聖書、新約聖書、仏教経典等の記載内容には、いくつかの共通な表現があり、そのうちのひとつは、"40日"という日数です。たとえば、ユダヤ教の旧約聖書には、ノアの方舟について、40日間も大洪水が続いたこと、大洪水の40日後に、ノアは伝令のために鳩を放ったこと、モーセが山にこもって40日間も断食をしたこと、そして、キリスト教の新約聖書には、イエスが山にこもって40日間も断食をしたこと、さらに、仏教の経典には、釈迦が修行中に40日間も断食をしたこと等です。すべては、旧約聖書に基づく、後々のひとたちによる辻褄合わせの作文のように思われますが、いかがでしょうか。



桜井淳

Wed, March 11, 2009 stanford2008の投稿

【事務所報告】4月に開催される学術セミナー

テーマ:ブログ

「第4回弘道館・偕楽園公園の歴史・自然探訪セミナー」開催案内-千波湖湖畔・桜山桜シーズンコース-


(1)主催 桜井淳水戸事務所(代表 桜井 淳)
(2)実施概要 水戸市には、市街地隣接公園としては、ニューヨーク市セントラルパークに次ぎ、世界第2位の面積を有する偕楽園公園(偕楽園・千波湖・千波公園・桜山公園からなる周囲7kmの複合公園)と江戸時代末期に開設された学問所の弘道館があり、観梅期・桜期・新緑期・紅葉期に、それらの歴史をたどり、7kmの自然探訪を行います。千波湖わきの桜川には、秋頃、太平洋から那珂川を経て、鮭がさかのぼります。水戸市在住30年(偕楽園公園は毎日の散歩コース)の桜井淳所長が学術文献(水戸市立博物館『千波湖の自然』(1987)、名越時正『水戸藩弘道館とその教育』(茨城県教師会、2007)、鈴木英一『水戸弘道館小史』(文眞堂、2003))を基にして歴史を語り、自然探訪の案内役を務めます。東京から特急で約1時間の水戸駅、歩きやすい服装と靴でご参加ください。


集合場所 水戸駅 10:00
10:00-12:00 弘道館(徳川斉昭が江戸末期開所の学問所)の展示品見学と歴史・自然探訪
12:30-13:00 千波湖(2万年前にできたとされる)の歴史・自然探訪
13:00-14:00 偕楽園(徳川斉昭が江戸末期開園)の歴史・自然探訪
14:00-14:30 桜山公園の歴史・自然探訪
14:30-15:30 徳川博物館入館
15:30-16:30 千波公園の歴史・自然探訪
16:30-18:00 自由討論

(3)担当者 桜井 淳と桜井淳水戸事務所スタッフ1名
(4)配布資料 桜井作成資料等
(5)応募資格 弘道館・偕楽園公園の歴史と自然に興味を持っている者。
(6)定員 20名
(7)実施日時場所 2009年4月4, 11日(土)
(8)申込先 桜井淳水戸事務所セミナー事務局
(9)参加費 10000円

powered by Ameba by CyberAgent