若田光一さん:記念品小中生10万人写真に画像処理で規制

2009年3月19日 15時00分 更新:3月19日 15時20分

若田光一さんが宇宙に持っていったものと同じ写真画像の一部。職員が、解像度を下げる処理をした=さいたま市浦和区駒場2で2009年3月17日、桐野耕一撮影
若田光一さんが宇宙に持っていったものと同じ写真画像の一部。職員が、解像度を下げる処理をした=さいたま市浦和区駒場2で2009年3月17日、桐野耕一撮影

 日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在に挑戦している若田光一さん(45)は、出身地・さいたま市の小、中学生ら約10万人分の写真データが入ったDVDを携えて旅立った。「子供の夢も一緒に宇宙へ」との企画だが、写真は「個人情報保護のため」として、肝心の子供の顔は誰か分からないよう画像処理されている。【桐野耕一】

 埼玉県大宮市(現さいたま市)出身で高校まで県内で過ごした若田さんは昨年3月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を通じて「市の記念品を持っていきたい」と市に相談した。これを受け、市青少年宇宙科学館は「夢や希望を与えるため、子供らの写真を」と発案。市立の小中学校と特別支援学校の全159校に学級ごとに写真を撮ってもらった。

 科学館は集まった写真を1枚のDVDに納めたが、編集の際、「万が一の流出に備える必要がある」と考え、職員6人で1カ月かけ、拡大しても子供の顔が判別できないように画像の解像度を下げる処理をした。処理された写真は「ゆめをのせてうちゅうへ」など、紙に大きく書いたメッセージは判読できる程度で、DVDのレプリカと納められた写真は現在、科学館にも展示されている。

 DVDは若田さんが帰還後に市に返還されるが、ある市立小学校長は「そこまで個人情報の取り扱いに気配りする必要があるのか」と首をかしげる。一方で、小学6年の娘がいる市内の主婦(44)からは「校内誌にも子供の顔を載せたくない親がいる。適切な判断では」との声もある。

 個人情報保護に詳しい国立情報学研究所客員教授の岡村久道弁護士は「写真処理に1カ月費やすなら、保護者に了解を取る努力をした方が良かったのでは。過剰な個人情報保護だろう。せっかく宇宙へ持っていくのに夢のない話になってしまった」と残念がる。

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