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マクドナルド:「名ばかり管理職」で和解、1千万支払いへ

マクドナルドの「名ばかり管理職訴訟」で和解が成立し、会見で記者の質問に笑顔で答える原告の高野広志さん=東京・霞が関の司法記者クラブで2009年3月18日午後2時33分、三浦博之撮影
マクドナルドの「名ばかり管理職訴訟」で和解が成立し、会見で記者の質問に笑顔で答える原告の高野広志さん=東京・霞が関の司法記者クラブで2009年3月18日午後2時33分、三浦博之撮影

 ハンバーガーチェーン「日本マクドナルド」店長の高野広志さん(47)が、管理職扱いされて時間外手当を受け取れないのは違法として、同社に残業代などの支払いを求めた「名ばかり管理職訴訟」は18日、東京高裁(鈴木健太裁判長)で和解が成立した。会社側は高野さんの主張を全面的に認めた。

 和解の内容は(1)1審が支払いを命じた約755万円に、1審以降の残業代を加えた和解金計約1000万円を支払う(2)高野さんが管理監督者に当たらないことを認め、提訴を理由とした降格、配置転換、減給をしない--など。

 125熊谷店(埼玉県熊谷市)店長の高野さんは、99年に別の店舗で店長に昇格して以降、残業代が支払われなくなり提訴した。08年1月の1審・東京地裁判決は、「職務権限や待遇から見て管理監督者に当たらない」と判断。会社側は控訴したが、同8月から他の店長にも残業代を支払っている。

 1審判決を大きく上回る内容での和解になり、代理人の棗(なつめ)一郎弁護士は「管理監督者に当たらないことを会社が認めた点に大きな意義があり、提訴を理由にした降格を禁じた和解内容もかなり珍しい。日本の過酷な長時間労働が改善されるきっかけになる」と評価した。【銭場裕司】

 ▽日本マクドナルドの話 和解は本人にとってもそのほかの社員にとっても、ベストだという経営判断をした。

 ◇解説…管理監督者扱い、安易には許さず

 日本マクドナルドの店長は「名ばかり管理職」かが争われた裁判の和解は、企業側による安易な管理監督者扱いを許さないことを明確にした点で意義が大きい。

 1審判決は従来の判決を踏襲したものだったが、影響は非常に大きかった。同社に限らず、チェーン展開する飲食店やコンビニエンスストアなど流通の現場では、店長を管理監督者扱いすることが横行していたからだ。

 名ばかり管理職が問題なのは、労働基準法の時間管理(1日8時間労働など)を外れ、いくら残業しても残業代が支払われないことだけではない。長時間労働が常態化することによる過労死や過労うつなどの健康被害が最も深刻な問題だ。高野さんが訴えた理由もここにあった。実際、あるファミリーレストランでは、店長が相次いで過労死している。

 厚生労働省は1審判決後、「管理職が直ちに管理監督者とはならない」と管理監督者の範囲の周知を徹底した。多くの企業も店長の管理監督者扱いを見直している。経済状況の悪化が進む中、厚労省や企業は、こうした違法行為を再度横行させてはならない。【東海林智】

毎日新聞 2009年3月18日 19時51分(最終更新 3月19日 0時30分)

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