東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

AIG社員も怒りの声 幹部以外は支給なし 巨額ボーナス問題

2009年3月18日 朝刊

携帯電話をかけながら退社するAIG社員=16日、米ニューヨークAIG本社で(阿部伸哉撮影)

写真

 【ニューヨーク=阿部伸哉】米政府支援で経営再建中の保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)幹部の巨額ボーナス問題で、ついにオバマ大統領も十六日、ウォール街の「常識」に全面対決姿勢を示した。世間の批判をものともせず高額報酬を続ける金融業界。ニューヨークのAIG本社前では社員からも怒りの声が上がった。

 ウォール街近くのAIGビルを出入りする社員は、ほとんどが無言。若手男性社員二人組は「仕事があってうれしい」と言い残し、そそくさと回転ドアの向こうに消えた。社員の一人は「みんな世間の目を恐れ、外出時は社員証を外している」と明かした。

 東南アジア担当部長という男性は、取材に立ち止まって訴えた。「会社を傾かせたのは金融商品部門のたった四百五十人。他の十二万人は毎日、顧客を守るためせっせと働いている。ぼくだって怒っているよ。ボーナス? ぼくにはないよ」とまくしたてた。

 通りかかった市職員のマシュー・ニューウェルさん(29)は「連中のおかげで国も地方もめちゃくちゃ。税金がやつらの高級車に消えるのか。ふざけるな」とののしった。

 だが、近くのウォール街では同情論も根強い。

 同業他社という男性(52)は「ここではみんな報酬のために働いているんだ。AIGのボーナス? 会社の規模からすれば当然だろ」と悠然とたばこを吹かした。

◆財務長官も批判の的に

 【ワシントン=古川雅和】AIG幹部の巨額ボーナス問題が、米金融当局に対する批判に変わり始めている。AIG幹部へのボーナス支払い契約を残したまま四回目の支援を決め、報酬制限も具体化が進んでいないからだ。この問題が、金融政策に対する米国民の不信認に広がる可能性もある。

 オバマ大統領がAIGに対する怒りを見せてから約二時間半後、ホワイトハウスではギブズ大統領報道官が記者の厳しい質問を浴びた。「なぜ、ガイトナー財務長官はAIGの支援を決める前に(ボーナスの)契約(の有無)を確認しなかったのか」。ギブズ報道官は「財務省に問い合わせる」と答えるだけで精いっぱいだった。

 米財務省などは今月二日、AIGの経営破綻(はたん)による金融危機の再発を防ぐために、最大三百億ドルの資本増強枠を設定するなど追加の支援策を発表。だが、ボーナスの支払い契約が残った状況に、米記者からは「ガイトナー長官の失敗だ」と指摘する声が上がった。オバマ大統領が法律を駆使して「阻止する」と声を上げたが、米政府はまだその手段を探している状況だ。

 米財務省は、大手金融機関が昨年に二百億ドル近いボーナスを払っていたことを「無責任の極み」と批判したオバマ大統領の意向を受け、二月上旬に報酬制限を盛り込んだ新たな金融安定化策を発表した。だが、具体化は進んでおらず、新たなボーナス問題が起きる懸念は消えない。

 <AIGのボーナス問題> 同社は14日、2008年分ボーナスの一部として幹部約400人に総額1億6500万ドル(約160億円)の支給を米政府に通達。契約で支給義務があり「政府が勝手に変更すれば優秀な社員を引き留められない」と説明した。政府は同社に計1700億ドルの公的資金を投入、株式の8割を取得し、事実上の公的管理下に置いている。

 

この記事を印刷する