医師が治療費を請求するレセプト(診療報酬明細書)について、2011年4月からオンラインでしか認めないとした政府方針が揺らいでいる。日本医師会などが反発し、衆院選での日医の支持をもくろむ自民党が同調し始めたからだ。1月には35都府県の医師が義務化撤回を求め提訴する騒ぎも起きており、2年後に迫った完全オンライン化は先送りの可能性が出ている。
医療機関は審査機関を通じてレセプトを保険運営者に提出し、報酬を請求する。オンライン請求なら不正請求やミスを発見しやすく、事務経費削減による医療費抑制も可能となるが、現在オンライン化しているのは病院の29%、開業医の3.2%にとどまる。
そこで政府は06年4月、オンライン請求を段階的に義務化する方針を決めた。既に08年度から大規模病院で始めたほか、10年度には専用機器導入済みの開業医、11年度からは全医療機関に広げる。
しかし、高齢の医師には機器の操作が難しい面があるうえ、設備費数百万円を自己負担する必要がある。厚生労働省は零細診療所には2年の猶予を設けるほか、代行機関による請求も認めるが、約1万4000医療機関を対象とした全国保険医団体連合会の調査には、医師の12.2%が「義務化されれば閉院する」と答えた。日医も「患者に利点はなく、医師不足に拍車をかける」と批判している。
自民党も慎重姿勢に転じた。先月27日の同党医療委員会では「希望者だけにすればいい」といった声が相次ぎ、11年度からの完全移行を求める意見はなかった。【吉田啓志】
毎日新聞 2009年3月17日 18時58分