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中東和平:「シリアの花嫁」の映画監督、対話の推進を強調

「シリアの花嫁」のエラン・リクリス監督=東京都千代田区で木葉健二撮影
「シリアの花嫁」のエラン・リクリス監督=東京都千代田区で木葉健二撮影

 イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区侵攻が「終結」してから約2カ月。パレスチナ側に多大な被害を出したが、イスラエル側にも「暴力の停止と共存」を呼びかける人々はいる。その一人、映画監督のエラン・リクリス氏(54)は「皆が目を覚まし、双方の苦しみを終わらせなければ」と訴える。

 リクリス監督は「シリアの花嫁」(04年、東京・岩波ホールなどで上映中)で、イスラエル占領下のシリア・ゴラン高原から二度と家族の元に戻れないことを知りながら、イスラエルと国交のないシリア側に嫁ぐイスラム教ドゥルーズ派の女性を主人公に据えた。

 「レモンの木」(08年)では、イスラエルと自治区ヨルダン川西岸の境界近くに所有するレモン果樹園が、治安上の理由でイスラエル当局に破壊されそうになったパレスチナ人女性の抵抗を描いた。いずれも押し付けられた「境界線」に翻弄(ほんろう)されながら、自らの人生を選び取ろうともがく人々の姿が活写されている。

 自己正当化や相互非難が支配しがちな中東紛争の言説空間。リクリス氏は「多くの人が共感できる普通の人々を描き、判断を押しつけない作品作りに努めている」と語る。

 外交官の父に伴われ海外で育った。ブラジルで通ったアメリカンスクールで、女性教師から「耳を傾けること」の重要性を学び、ベトナム戦争に苦しむ超大国の姿に戦いの不毛さを感じ取った。第4次中東戦争では兵役に就き、高校時代の級友の多くを失った。

 母国をめぐる戦いはいまだやまない。「このままの状態では生き続けることはできない」。リクリス氏は暴力を超えた対話の可能性に希望をつなぐ。中東和平の将来は不透明だが、「もっと酷い状況を克服した国々もある。子供たちのために、関係を改善しなければ」と呼びかける。

 「シリアの花嫁」上映情報はhttp://www.bitters.co.jp/hanayome/

【和田浩明】

毎日新聞 2009年3月16日 12時57分(最終更新 3月16日 13時16分)

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