◆毎日新聞論説委員・与良正男
◇自分で首相を選んでおいて、自分のことを心配する議員
「麻生首相降ろしが始まった」--。新聞やテレビで、しきりとこんなニュースが流れています。麻生太郎総理大臣を首相の座から降ろそうとする動きが、自民党の中で始まったという話です。
毎日新聞が先月行った全国世論調査では麻生内閣の支持率はわずか11%。10人に1人しか支持していない、つまり、麻生さんには任せられないと答えた人が圧倒的に多かったのです。歴代の首相の中でもとくに低い数字だけに、自民党の国会議員は今、大あわてになっています。
以前、このコーナーで書きましたが、今年9月までには必ず衆院議員選挙選があります。自民党の議員からすれば、「人気のない麻生さんが首相のままでは、自民党は負けてしまう」「自分の選挙も危なくなっしまう」と思っているのでしょう。
では、麻生さんの次はだれが首相になるのか--という話の前に、考えておきたいことがあります。昨年秋、福田康夫前首相が突然、辞めると言い出して、「麻生さんが人気がありそうだから」と、麻生さんをリーダーに選んだのは、ほかでもない、自民党の人たちです。ところが支持率が下がると、そんな選んだ責任も忘れて、またまた別の人を探そうとする。
確かに日本の政治のルールでは、国会で多数を占める与党が選べば、その人が首相になります。でも小泉純一郎元首相が辞めて以来、一度も衆院選は行われていません。国民が首相を選んだわけでも、「この人が首相でいいですよ」と、有権者が選挙で託したわけでもないのです。
もっと気になるのは「麻生さんでは自分の選挙が危ない」と、政治家があっけらかんと口にすることです。「自分のため」ではない。「国民のために」となぜ言えないのでしょう。私には不思議です。
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政治部デスクなどを経て2004年から論説委員。早稲田大学大学院客員教授も務め、TBS「みのもんたの朝ズバッ!」、大阪・毎日放送「ちちんぷいぷい」にも出演。1957年生まれ。