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【社会】

マガジン・サンデー50歳 日本の漫画文化けん引 

2009年3月14日 夕刊

発売日の水曜日、店頭に平積みされる「週刊少年マガジン」と「週刊少年サンデー」=東京・上野の明正堂アトレ上野店で

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 週刊少年漫画誌の草分けである「週刊少年マガジン」(講談社)と「週刊少年サンデー」(小学館)が、十七日にそろって創刊五十周年を迎える。ライバルとしてしのぎを削りながら読者を大人にまで広げ、世界でも類を見ない日本の漫画文化をけん引したが、半世紀を経た今は娯楽の多様化で勢いに陰りも見える。

◆スポ根、ラブコメ

 一九五九年三月、同じ日に創刊された両誌だが、カラーは全く違う。「泥くさい『マガジン』、都会派の『サンデー』」と「マガジン」の森田浩章編集長。「サンデー」元編集者は「男の子の使命、おとこ気を熱く表現するのが『マガジン』、等身大の少年の悲喜こもごもを描くのが『サンデー』」と言う。

 「マガジン」の歩みを象徴する作品は、六〇年代後半から七〇年代初めに連載された「巨人の星」「あしたのジョー」など“スポ根”ものだ。当時の大学生は「マガジン」を、硬派な「朝日ジャーナル」と並んで愛読。熱い根性ものが、政治の季節の若者をとらえた。

 漫画研究家の中野晴行さんは「漫画は中学生までとされていたが、団塊の世代は大学生、社会人になっても購読し、漫画文化を広げた」と見る。

 「サンデー」は「うる星やつら」「タッチ」など七〇−八〇年代の“ラブコメ”ものが大ヒット。豊かな時代に、学校での日常風景に近い青春の物語が、中高校生らの共感と支持を集めた。

 「単行本化、アニメ化というビジネスモデルも定着していった」と中野さんは話す。

◆双方向の可能性

 日本雑誌協会などによると、ピークの九八年に四百五十万部を記録した「マガジン」は現在、百七十七万部。八三年に二百二十八万部だった「サンデー」は八十七万部。六八年創刊の「週刊少年ジャンプ」(集英社)は現在二百七十九万部だが、九四年の六百五十三万部の半分に満たない。

 ある出版社幹部によると、少子化の上、子どもたちは塾に通い遊ぶ時間が限られ、電子ゲームなど娯楽も多様化。雑誌でなくコミックスになってから読む傾向も進む。

 両誌は活性化を目指し昨年から、異例の共同企画事業に着手。互いの人気キャラクターを使った雑誌「名探偵コナン&金田一少年の事件簿」発行や、「うる星やつら」をはじめイラスト付きTシャツのユニクロによる販売などが話題になった。

 森田編集長は「若い人は次々と離れる。部数を思うとどうしても上の年代狙いにもなる。五十歳でも心が少年なら、とは思うが」と苦渋の表情。

 一方、「サンデー」の林正人編集長は「週刊漫画誌は読者のビビッドな反応で変化し得る、双方向性を備えたメディア。面白い作品を読者にぶつけ、可能性を見いだしたい」と話している。

 

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