February 24, 2009
講談社セオリー「お金の探究」インタビュー
11月25日講談社から発売のセオリー「お金の探究」に私のロングインタビューが6ページに亘って掲載されています。
「社会起業家・佐上邦久さんは、10年前、マルサに入られて気がついた。」
今までの人生、堂々と全部カミングアウトしています。笑
親友の文豪、宮崎学さんとの事や、ホリエモンとの出会いなど、
一部を引用して以下に公開します。
ＪＲ芦屋駅から有料道路を登って、海抜５００ｍ強。鬱蒼とした緑の中に、日本屈指の超高級住宅街のひとつ、芦屋市奥池南町がある。中でもさらに奥まった南斜面の超一等地に、佐上邦久氏（48歳）の敷地約１０００坪という邸宅がある。
リゾート地にある落ち着いた別荘のような外観。中はあくまで使い勝手優先のモダンシックな装い。全室南向きで、部屋の隅々にまで柔らかい陽光が溢れるように差し込んでいる。圧巻は大きなプールと露天風呂が造られている広々としたベランダだ。眼下に大阪湾を一望でき、遠く水平線の手前には関空を望み手前には神戸の街が広がる。
本当に気持ちいいですねぇ。そう言うと、佐上氏は白い歯を見せて笑った。
「プールにはこだわりました。旅行が大好きで、僕らは夫婦で色々な所に行きました。その中でも特に大好きなのがアマンリゾーツ。あそこの考え方、接客態度、空気のあり方、何から何まで好きですねぇ。実は、あのプール、アマンキラ（バリ島）のスウィートにあるものを完璧に再現したんです。大きさも使ったタイルもすべて同じ物です。リビングから裸でプールに飛び込めます」
みんなの喜ぶ顔を見たい
できるだけ社会に還元したい
その佐上氏。学生時代はプロのハングライダーパイロットとして世界を転戦。そして、財を成したのが29歳で始めた宝石の通信販売だった。現在は個人投資家として有名。その一方で、動物愛護活動家として知られ、虐待された犬や猫の救済、地域猫に対して無料で避妊去勢手術を行う「財団法人どうぶつ基金」会長や、「国境無き医師団」の動物版とでも言うべき獣医療ボランティア団体「またたび獣医医師団」の主宰者でもある。
現在、佐上夫妻はこの邸宅に７匹の犬、２匹の猫と暮らしている。実はこの「子たち」、虐待されていたのを夫妻が引き取ったもの。
リビングにクリッとした目の犬が現れた。尾を振って、佐上氏の手をペロペロと舐める。佐上氏がその犬を愛おしそうに撫でる。
「あのケージの中には虐待されて何年間も引き篭もりになった犬がいるし、２匹の大型犬は目が見えない。僕、その犬を連れて毎日散歩に行く。僕、盲導犬ならぬ盲導人です。
事業に成功したあと、僕はいつも考えていた。僕が本当にやりたいこと、快楽を感じることって、何だろうと。そして、こう気づいた。僕はみんなが喜ぶ顔が見たい。人から、ありがとうって、そう言ってもらえるような人間になりたい。で、自分の力でできるだけの社会還元をしよう、そう思ったんです。でも、そのためには、それに相応しい人格者にならないと。こうなると、死ぬまで勉強、一生修行になっちゃう（笑）。僕がこうした生き方をするようになった、そのターニングポイントは、やっぱり国税当局に脱税で摘発されたことでしょうか」
アウトソーシングに徹した
アクセサリーの通販で大成功
近畿大学を卒業して、僕はまず小さな商社で３年半働きました。物を売る基本を徹底的に叩き込まれましたね。そこで学んだ最大の教訓は「お金と時間の約束は絶対に守れ」。これが信用につながる。
その後、学生時代の友人に誘われて、彼の父親が経営するベンチャー企業に入りました。そこがやっていたのは、いわゆる遊園地商売で、これがめちゃくちゃ儲かった。
例えば、博覧会などの大観覧車。あれ、制作費は４億円ぐらい。それを公称８億円にして、中央に大きな広告を出すと、スポンサーからポンッと４億円、５億円という金が出てくる。大儲けですよ。終わったら今度はそれを解体して別の博覧会に設置して同じことを繰り返す！
これを見て、僕は、ソフトを売ることの凄さ、モノにきちんと加価値をつければこんなに儲かるんだ！ ということを教えられた。
でも、この会社も３年で退社しました。理由は、自分１人で違うことをやってみたくなったからです。こう言うと、格好いいんですが、僕は29歳で完全にニートになった。で、やがて宝石の通信販売を思いついた。
僕の幼なじみで、宝石屋で修行して、１ヵ月のうち２週間はタイにルビーの買い付けに行く、そんな仕事をしていた奴がいるんです。彼は、当時、日本では一、二を争うルビーとサフィアの目利きだった。彼と色々と話をしているうちに、タイに行って日本を留守にしている間、僕が宝石を預かって、売ることになった。そうしたら、これが飛ぶように売れた。
アッと言う間に、月収が２００万円。これはいいぞ！ そう喜んでいた。そうしたら、バブル崩壊。まったく売れなくなった。その時、僕の手元には１００万円か、２００万円しかなくて、結婚したばかり。今さらながら、嫁さん、ようついて来たな〜。
結局、コネがない、金がない、人手もない。無い無い尽くし。で、僕に何ができるだろうと真剣に考えた。頭の中でできそうな項目を書いていく。そして、これはダメ、あれもダメ、と消していくんです。いわゆる消去法。
ヒントは雑誌でした。雑誌を見ていて、通販に気づいたんです。広告料さえ払えばトヨタ、資生堂、ティファニーという世界の一流ブランドと同じ土俵で、通販は戦える！ ここで宝石の通販をやれば勝負できる。
で、最初に広告を載せたのが『愛犬の友』。犬のペンダントやブローチ。これは絶対に好きな人は買うだろう、そう思った。結果は30万円の経費をかけて、来た注文は10万円くらい。赤字だった。でもね、僕は凄く嬉しかったんです。来るやん、俺の出した広告で買ってくれはる人がいる！ あとは知恵の問題や。そう思った。
それと、考えたのは、従来の通販システムを変えること。従業員は雇えないし、無駄な経費も在庫も持てない。それで全部アウトソーシングできるシステムを作り上げた。ＤＭやチラシ、注文を受ける電話、商品の発送、代金未納の場合の取立て。これを全部アウトソーシングした。そうすると、僕１人でやれる。僕がやるのは仕入れ企画と広告作り。
年収は、あッという間に１億円を超えましたね。経常利益は倍々ゲームでした。しかも、全てアウトソーシングだから、時間は自由、携帯電話さえあればいい。それでいて、どんどん儲かった。
妻と犬を連れて、よく旅行に行きました。北海道で２ヵ月キャンピングカーで過ごし、解禁になったばかりの利尻島のエゾバフンウニを食べまくる。１年のうち３ヵ月くらいは海外を回り、プーケットに別荘を買い、リーマンの会長なんかと近所付き合い。フェラーリを買ってみたり、まあ、30代で若くして成功して調子に乗っていた。
そんな時です。10年前の６月だったか。
当時、僕は生駒山の近くに住んでいました。日課である朝の２時間の犬との散歩を済ませて帰ってくると、家の前に、背広姿の人がぎょうさんいる。何だろう、そう思った途端、彼らが突然、僕を取り囲んで、そして、僕に家宅捜査令状をつきつけたんです。
「まじめにやれば、
取られた以上に稼げます」
『大阪読売新聞』（98年６月26日付朝刊）には、こう報じられている。
【「恋が実るペンダント」などアクセサリー専門誌などで宣伝し、若い女性の間で人気を集めていた大阪市天王寺区、通信販売会社「エピックス」＝佐上邦久社長＝が、三年間に約二億円の所得を隠し、法人税約七千五百万円を脱税したとして、大阪国税局は二十五日までに、同社と佐上社長を法人税法違反容疑で大阪地検に告発した。同社は重加算税二千八百万円を含む計一億円を追徴課税され、修正申告した模様だ。
同社はペンダントやネックレスなど装身具の原材料として、タイから安価なルビーを輸入し、仕入れ価格を水増しし、一九九七年一月までの三年間の法人所得が赤字であるかのように見せかけていた。
隠した所得は割引金融債券（二億円分）の購入に充てていたという。開運お守りとして通信販売していたペンダントやネックレスは、年間二億円を売り上げていた。】（一部略）
本当に反省しています。あの時の僕は税理士も雇わず、会計も自分で処理していた。
家の前に、30人はいました。全部、マルサの人たちです。あとで聞いたら、親戚、親兄弟、全部同じ時間に１５０人体制で一斉捜査したそうです。
捜査は丸々一日かかりました。部屋の隅々まで引っくり返し、それこそパンツの裏までといった感じで、制裁だと、僕は思った。だから、即日、認めた。「ハイ、やりました」と。ワリコーやワリシンも、僕の方から差し出しました。
その後の取調べは、本当に辛かったですね。週に、１、２度、税務署に行き、取調室に入れられ、まさに「刑事VS.犯人」といったドラマそのもの。この時、今でも物凄く記憶に残っているマルサの人の言葉がある。
「佐上さん、大丈夫だから。ちゃんと罪を償って、ここで挫けずがんばりなさい。あのね、バブルの時に稼いだ人たち以外で、マルサに入られた人は、みんな出世して、取られた以上のお金を稼いでいるんですよ」
僕は、正直、ジーンと来た。
結局、判決が出るまで約２年。結果は懲役一年執行猶予三年でした。
この事件のあと、お付き合いをすることになった税理士さんにもこう言われた。
「払うものは払って堂々と生きた方がいい。脱税して貯めたお金なんて、結局使えない」
それからは、本当に真面目に払っています。節税というようなことも一切していません。
僕はその当時から動物愛護の活動をしていました。近所の野良犬を拾ってきて里親探しをしたり、犬猫が殺処分施設の狭い檻の中に何十匹と酷い状態で押し込められているのに対して、行政の方と闘っていたりもしました。僕は、それもあって目をつけられたのかなぁ、とも思いました。
でも、ルールを守らない人間が行政に何を言ったって、耳を貸してくれない。これを機会に、払うものはキチッと払って、堂々と生きて行こうと、そう心に誓ったんです。
「時給１億円」の会社を買いに
あの男がやってきた！
おかげさまで、会社の方はその後、順調そのもので、02年には約23億円の経常利益をあげました。税金を約62％払いましたから手元には残ったのは９億ほどですが。この時、会社には臨時雇いの２人の女子従業員がいただけ。この年、僕が会社に行って働いていたのは２週間に１回、１時間だけ。実働、年間20時間ですから、計算上、僕の時給は１億円だった。
この当時、ホリエモンと会ったことがあるんです。
その時、彼の会社には１５００人の従業員がいた。で、会社のキャッシュは数千億円、経常利益15億円を実態はともかく誇っていた。
僕、思わずこう言った。「君、株でウマイことやってるらしいけど、商売、ほんまアカンなぁ。俺なんか女の子２人で、それで20億円や。参ったか（笑）」
ホリエモンって、純朴で、いい男で、
「ハハー、参りましたぁ」
そう言って、笑ってた。
ところが、驚いたことに、その翌週、宮内亮治（ライブドア元取締役）がやってきて、突然、こう言った。
「佐上さん、会社、１００億円で売ってください」
僕もまだ修行が足りないから、この誘いに乗りかけて、「プライベートジェット20億か、田園調布の家15億か、安いわ〜行ったろか」なんてネット見てにんまりしていた。
ところが、話を聞いていくと、おかしい。要はのちに摘発されるスキームなわけです。それで、脱税では、と言うと、彼、平然とこう言った。
「いや、佐上さんと僕が黙っていればバレません」
僕は呆れて怒鳴ってしまった。
「宮内君、『天知る、地知る、君知る、我知る』っていうこの言葉、知ってるか？ 『神さまが見ている。世間が知っている。君が知っている。我が知っている』という意味や。一番怖いのは何か、わかるか？ 『我知る』なんだよ。自分は誤魔化せないだろ。だから、変なこと、やっちゃダメだよ」
会社売っていたら今頃どうなってたか。
僕、昔、よく人間関係に疲れて、自然に癒されたくて旅行に行った。で、メル友で作家の宮崎学さんを、「今度、大自然を見に行きましょうよ。アラスカでも一緒に行きませんか。癒されます」、そう誘った時がある。宮崎さん、ヤクザから右翼、左翼、政治家、人脈グチャグチャじゃないですか。そうしたら、宮崎さん、こう答えたんです。
「佐上さん、僕はね、自然よりも人間に感動したい。何よりも人間に感動したいんです」
僕はその時、よくわからなかったけど、最近、40代半ばを過ぎて、その言葉の意味がしみじみと、心に染みるようになった。
自分が生きていく中で、やっぱり感動する人間に出会いたい、そして、自分もそんな感動を与えられるような人間になりたい。本当にそう思えるようになった。
動物愛護の財団法人に
お金も時間もつぎ込む
動物愛護運動をやっていると、よく、「寄付控除を受け、節税するためにそうした活動をやっているんだろう」なんて、邪推を受けたりします。全く違います。
今、僕が会長をやっている「財団法人どうぶつ基金」は理事、ボランティアは当然一切報酬なし、交通費、通信費自分持ちで、お金はほとんど野良猫の不妊とワクチンなど、動物に直接使われます。
また、妻が主宰する「またたび獣医医師団」もそうで、他人さまからの寄付は受けないし、参加者のポケットマネーから自己負担で、お金だけでなく活動もするのが原則です。大体毎月○○●万円使っている。
「財団法人どうぶつ基金」は、もともと横浜の名士で富岡さんという三井家縁のおばちゃまが始められたもので、彼女が捨て犬や猫を拾って、数億円という全財産を投げ出して、清川村（神奈川県）にシェルター（保護施設）を作り、世話をしていたものなんです。
ところが富岡さんが亡くなると、シュルターの崩壊が始まった。当時、50匹から60匹いた犬や猫は放ったらかしになり、散歩に出してももらえず、最低限生きていける程度の世話しかしなくなった。シェルターの役目である一般家庭への里親探しもほとんど行われていなかった。
調べてみると、ボランティアの連中も理事も名ばかりで、あろうことか一番大切な基本財産まで食い潰そうとしていた。で、当時の会長からその建て直しを頼まれたのが、そもそも僕がこの財団に関わることになったきっかけでした。
この子たちをまず、幸せにするために、全部、里親に出そう。それがスタートで、今、ウチにいる３匹もここからやって来た。その後、固いオーストラリアのドル債を５０００万円買ったりして財団の収支を安定させて、今は、地域を決めて、猫に避妊去勢手術を無料で行い、もと居た場所に戻してやる、という運動をしています。
年間一千匹の避妊去勢手術を、神奈川県の大和市と座間市で集中的にやったところ、なんと座間市の保健所での猫の引き取り殺処分がゼロになった！ 凄いでしょ。これは画期的なビジネスモデルですよ。
「人間は絶対に
損切りができない」
話がひと段落すると佐上氏は嬉しそうにティーカップを持った。
「僕、お茶にはめちゃくちゃこだわっているんですよ。毎年、その年に一番いい出来だったお茶を買い、１年間に５�圓肋暖颪靴泙后４靄榲�にはダージリンのファーストフラッシュ。でも、07年はダージリンが不作だった。今年はジュンバナ茶園のＤＪ７に決めました」
その佐上氏の隣で、夫人が20歳になった猫（長寿で獣医師会から表彰！）を胸に抱えて優しく微笑んでいる。佐上氏は酒も飲まず、オーガニック派。メガネにかなう10件ほどの店を夫婦でめぐる日々だ。
「今、仕事、お金儲けという実業の形で言えば、２年ほど前からほとんどやっていません。国際投資がほとんどですね。
僕の場合、「ＹＵＣＡＳＥＥ」の「アブラハムプライベートバンク」という会社を通じてＥＵ籍の円建てファンドに投資しています。過去10年の平均利回り30％、複利ですから10年前に買っていれば十数倍になっています。この大恐慌でも、過去１年の利回りは70％です。
それに僕は、相場はしません。超長期投資のみです。基本的に現物株を買います。だから今流行りのレバレッジなんて絶対にかけない。それを忠実に守っている。
だいたいスイングトレードとか、３ヵ月で２割儲けるとか、１週間で２％稼ぐとか、あるいはデイトレで朝買って夜売るとか、絶対に負けます。僕もやりましたけど、勝てない。人間はどうしても損切りができないんです」
子供のように手のかかる７匹の犬と２匹の猫の世話、そして世界を股にかけた動物愛護活動が佐上氏の現在の最大の生きがいとなっているようだ。
「邱永漢さんの言葉にこんなのがあるんです。『お金は儲けて半人前、使って一人前』。でも、僕は『お金は儲けて４分の一人前、税金払って半人前、使って一人前』だと思っていて、これを座右の銘にしています。
お金をどう使うか、それは稼ぐことよりずっと難しい。だからどう稼ぐかよりも、どう使うことがみんなを幸せにするのか、真剣に考えてもらいたい。僕は今、この日本にも僕と同じように考える人が増えている、大きな変革の波が来ている、そう信じています」
他の記事は、本を買ってね 笑
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この記事へのコメント
マルサの人が１５０人ってスゴイですね