一世を風靡したiPhone 3G。日頃iMacやMac miniを使っているが、筆者は熱烈なApple信者と言うわけではない。発売当日、並んでまで買おうとは思わなかった。当日少し悪あがきでソフトバンクショップを数件回ったものの当然売り切れ。予想できた結果であり、それはそれで「まぁいいか」程度のものだった。 その後、iPhone 3Gのアプリを開発する案件があったため、必要に迫られ発売から約1カ月後の2008年8月9日に16GBの白を購入した。購入時に払った金額は0円だが、2年間24回の分割として通話料などに合算する支払い方法だ。従ってカードを使ったものの、その場での金銭的な動きは無かった。ほとんど通話しないこともあり、使用料金と合計した金額は毎月1万円未満となっている。 先日、8GBモデルが本当に0円になる新施策が発表され、既存ユーザーとしてはちょっと悔しい気分だ。できれば今からでも割り引いて欲しいくらいだ。 当初は開発用のPCの横に常時転がっているだろうと思っていたが、実際触ってみるとなかなか楽しく実用的。すっかりiPhone 3Gにハマってしまった。それから半年、今日までの経緯を書きたいと思う。 ●2008/08/09 初アプリ購入 iPhone 3Gの醍醐味はタッチパネルと3GとWi-Fiを使い、「いつでもネットに接続できること」、GPS、重力センサー、そして多彩なアプリにある。電話で通話が出来るのはおまけだと筆者は思っている。従ってMacBookがそのままギュッと小型化され、ついでに電話が付いていると思った方が分かりやすい。これを逆に取ってしまうと「携帯電話としては使い辛い」と言う意見になってしまうのかもしれない。 iPhone 3Gを事務所に持ち帰り、メール関連の設定をした後、まずSafariを使ってみた。現在Adobe Flashに未対応なのが唯一の残念な程度で、これほどスムーズにスピーディにそして見易い携帯用のWebブラウザは見たことがない。ボディーを90度回転させた時の横表示はもちろん、htmlのタグを理解し、見たい場所をタップすれば、その範囲だけズームアップする。通常これで十分読めるが、それでも文字が細かい時だけ指で更にズームすればいい。書体は綺麗で、これには正直驚いた。 次は早速iTunes経由でアプリをダウンロードした。初日ダウンロードしたアプリは以下の通り。最後の「Tuner Internet Radio」だけが700円。他は全て無料だ。この当時まだアプリは少なく、完成度もイマイチのものが多かったが、これについてはiPhoneのファームウェアも同じだった。Safariはすぐ落ちるし、全体的に作動が不安定など。これらの現象はファームウェアが2.1以降になってやっと収まった。 ・mixi
中でも一番楽しめたのは「Tuner Internet Radio」。このアプリは名前の通り、ネット放送をiPhone 3Gで再生できる。加えてiPhone 3Gは小さくモノラルだがスピーカーを内蔵しており、サイズを考えるとなかなかの音質。筆者は普段事務所でも自宅でもネット放送を流しっ放しなので、これは嬉しかった。いつでもどこでもiPhone 3Gさえあればまるで普通のラジオのように音楽が流れる。現在ダウンロードしたアプリはかなりの数に上るが、結局このTuner Internet Radioの使用頻度が一番高い。筆者にとってはなくてはならないアプリである。 ●2008/08/12 スケジュールのexport機能
iPhone 3Gとは直接関係無いのだが、筆者が開発/運営しているSNS「blue.jp」のスケジュール機能にiCalendar形式でエクスポートできる機能をテスト的に付けた。と言うのも、筆者のスケジュールが全てこのSNSのスケジュール機能の中に書き込まれているため、それをiPhone 3Gで扱うには、iCalendar形式でエクスポートし、iCalに読み込ませ、それを同期するのが一番手っ取り早いからだ。 手前味噌になるが、このスケジュール機能、Ajaxで書かれ、Google Scheduleとまでは行かないもののドラッグ&ドロップや重複する予定、日をまたがる予定を表現可能、友人や友人グループ、所属コミュニティへ予定を公開など結構便利で、サイトの完成直後、4年間ずっと使っている。以前掲載したv1.0はJavaとOracleで書かれていたが、2007年12月、Ruby on RailsとMy SQLへ1から書き直したv2.0になったこともあり、iCalendarのプラグインを導入、日付順にループを回せば即エクスポート出来たので対応はかなり簡単だった。 加えて内蔵のSafariでうまく表示できるように、「スケーリングの関係でメニューバーが崩れていたので調整」、「専用のMetaタグ(※1)を挿入し、縦/横問わず幅一杯に表示」、「長いURLがあると枠をはみ出し、スケーリングが変わってしまうため省略形URLへ置き換える」という、3点を組み込み、快適にアクセスできるように改善した。 日頃最も使っているサイトでもあり、さすがに実機があるのと無いのでは、気合の入れ方が違う。あったら便利と思うことは即対応してしまった。 ※1 <meta name="viewport" content="width=770;" />。width=の部分にサイトの横幅を入れれば、iPhone 3GのSafariでアクセスした時に、横幅一杯にスケーリングされで表示する。 ●2008/08/14 Griffin Wave Case iPhone 3G
購入してから数日間、ジーンズのポケットへドコモ「SH703i」と一緒にiPhone 3Gを入れていたが、角などが当たりキズが付きそうだったため、専用のジャケットを購入しに渋谷のAppleストアまで行った。ざっと見回し、何となくデザインが気に入った「Griffin Wave Case iPhone 3G」を購入。早速付けてみたものの、これはちょっと失敗だった。 理由はいくつかあるが、1番は「かさばる」こと。これを付けた状態で、SH703iと一緒にジーンズのポケットへ入れるとポケットがかなり窮屈になる。更に保護パネルが分厚く、タッチパネルの反応が鈍くなった気がするなど、残念ながら数日使ってお蔵入りとした。 □Griffin Technologyのホームページ ●2008/08/16 iPhone 3G用アクセサリ
結局裸のままでiPhone 3Gを使っていたものの、やはり気になるのは「パネルへのキズ」と「指紋がベタベタ付くこと」だ。筆者はあまり細かい事は気にしないタイプなので大丈夫だろうと思っていたが、至近距離で触る機器なだけに、指紋は想像以上に気になる存在だった。渋谷のビックカメラを覗いて見るとフィルムには「ギラツキ防止」タイプと、「ピカピカ綺麗」タイプがあった。 「ピカピカ綺麗」=グレアタイプは確かに綺麗なのだが、映り込みが気になるため、「ギラツキ防止」=アンチグレアタイプを購入した。何もない状態よりコントラストや鮮やかさに関しては若干劣るものの、映り込みや指紋は全く気にならない。既に使い出して半年経過しているが全く問題無く張り付いたままだ。 アクセサリにもう1つ「イヤーパッド」を追加した。筆者は昔から自宅でも事務所でも自由に音楽を聴ける環境で、ヘッドホンをする習慣が無いため、iPhone 3G付属のヘッドセットは箱に入れたままだった。ある日好奇心でちょっと試してみたところ、素の状態では耳に引っかからずポロリと落ちてしまい、試すどころの話ではない。先のフィルムを購入するついでに買ってみた。結果は上々。普通に使う分には耳から落ちなくなった。ただ歩きながら使うとそれでも落ちてくる。またiPhone 3G付属のヘッドセットの音はあまり良くない。しかし、先に書いたように元々ヘッドホンをする習慣が無いため、この時点ではまぁいいかと思った。 ●2008/08/23 iPhoneで撮ってみた
iPhone 3Gには200万画素(1,600×1,200ピクセル)のデジカメが付いている。ただし、AF無しのパンフォーカス(マクロモード無し)、オートホワイトバランスのみ、露出補正無し、と今時のデジカメを考えるとかなり割り切った仕様だ。 カメラアプリを起動して実際撮影可能になるまで少し時間がかかる。シャッターボタンはタッチパネルで、押す時ではなく、離す時にシャッターが切れる仕掛けだ。余談になるが、これはソフトウェアキーボードも同じ仕様で、仮に押すときに間違った場所を押しても、離さずそのままスライドさせ、目的の場所で指を離せば該当する文字が入力される。 購入してから事務所内で少し試した程度であまり真面目に使ってなかったこともあり、この日いろいろ撮ってみた。結果はなかなか。少なくともSH703iよりは写りが良い。機能的に何もなくシャッターを押すだけのソニー「サイバーショットU」(2002年)を思い出す。いったんカメラアプリが起動してからは、かなりいいペースでシャッターを切れる。普段使い用としては筆者としては十分だ。 ●2008/08/27 祝! iPhone Appが実機で動いた iPhone 3G用のアプリを作るには専用のSDKが必要になる。実機ではなくSDK付属のiPhoneシミュレータ上で作動させるだけであれば無料で誰でもAppleのサイトからダウンロード可能だ。iPhone 3G用のアプリ開発を初めてから暫くの間はこの環境で開発/テストしていたが、テスト版がそろそろ形になってきたこともあり、iPhone Developer Programを購入し、実機で動かすことにした。 8月26日に購入、翌日環境を作り、アプリを実機へ転送、動いた時にはかなり感動ものだった。当初NDAの関係でネット上に情報は皆無。Appleの資料(しかも英語)だけで手探りだったこともあり、この時のことは今でも鮮明に覚えている。この開発中のアプリ、諸事情からまだ公開できていないが、今月中にはリリースすることになっている。 ●2008/09/12 Air jacket set for iPhone 3G
これまで、裸の状態でパネルにフィルムだけ張っていたが、薄いジャケットが出てきたので早速購入した。使った感想は「とにかく薄い」の一言。付けた状態を写真で撮っても解らないほどだ。現在この手の製品がいろいろ出ているようだが、半年間気に入って使っているし、何度か床を直撃しているが、キズ一つ付いていない。ただ、フロントの周囲にある金属のフレーム部分は無防備なため、そこだけ一部細かいすりキズがあるものの、筆者的には許容範囲だ。 □製品情報 ●2008/09/13 iPhone 2.1「iTunes 8のGenius機能」
9月13日にiPhoneのファームウェアが2.1になった。全体的に安定したり、連文節変換対応、バックアップの時間を大幅に短縮など、いろいろと改善された。中でもiTunes 8のGenius機能に対応したことが筆者的には面白かった。 このGenius機能、すでに半年近く前の話なので、今や当たり前となっているが、シャッフルのように単純にランダム再生するのではなく、指定した曲と雰囲気(気分?)が似ている曲を自動的にピックアップするというのだから、システム的に考えても興味深い仕掛けだ。しかもiTunes経由で情報収集をOKした全世界のユーザーからデータを集め、その精度もかなりのものと思われる。筆者のiPhone 3Gには1,400曲ほど入っているが、なかなか的を得た選曲をしてくる。新たにGeniusを設定する時は、どんな構成になるのかワクワクしながら結果を見たて「ほーそう来るか」と感心している。 ●2008/10/05 「fring」はiPhoneのキラーアプリの予感
iPhone 3G用のSkypeはまだ出ていないが、この日、Skypeにも対応したVoIPアプリ、「fring」が登場した。Skype、MSN Messenger、Google Talk、ICQ、Twitter、Yahoo! Chat、AIMで、チャットやVoIP(Wi-Fi時のみ)による通話が出来る。 筆者は古いタイプの人間なのかVoIPの時、PC内蔵のマイク+スピーカーやヘッドセットを使っての会話はどうも苦手で、受話器タイプか携帯電話タイプか、いずれにしても普通に電話しているような感覚で扱える機器を使いたい。従ってiPhone 3GでSkypeが出来ると、これほどピッタリな機器はないだろう。かなり気に入って使っている。夜中にゴロゴロしながら電話ではなく、Skypeをいったん始めるとなかなか終われない。 ●2008/11/18 SENNHEISER MM 50を入手
冒頭で「昔からヘッドホンをする習慣は無いと」書いたが、実はiPhone 3Gを持ってからその状況が少しずつ変わってきたのだ。1時間を越える少し長めの散歩や電車の中など、試しにと使ってから、徐々にiPod化し始めたのだ。こうなるとオリジナルのヘッドセットは耳から直ぐに外れる上に音がイマイチなのが急に気になりだした。 友人に尋ねたり、ちょっと借りて試してみたり、ネットで情報を調べたりと、いろいろ探した結果、少し前に視聴して気になっていたSENNHEISER「CX400」がベースになっているSENNHEISER「MM 50」を入手した。 カナル型のヘッドセットである。運よく、友人が少し使って装着感が合わなかったらしく、お蔵入りしていたものがあったので譲って頂いた。ちなみにその友人はもっとガッチリ耳に入るSHUREの方が好みだそうだ。筆者の場合は逆で、軽く入る程度でよかったのでこのMM 50がマッチした。 カナル式なので耳からポロポロ外れる事も無く、もちろん音質はオリジナルと比較してグンと向上。お気に入りの逸品だ。 □製品情報 ●2009/01/04 iPhone用ワンセグチューナを購入
個人的には携帯でワンセグを見たいとは思わないのだが、ソフトバンクがユーザーの要望を聞き、気合を入れて作ったこともあり、試しに購入した。9千円ちょっとと、USBタイプのワンセグチューナーと比較するとやや高いが、予備バッテリとWi-Fiが入っていることを考慮すると妥当な線だろう。 発売当初は、iPhone 3G側のWi-Fi設定を手動でこのアダプタ側にSSIDを変更する必要があり面倒だったが、アプリのバージョンが上がり、自動的に切り替わるように改善された。 筆者の事務所は半地下と言うこともあり、AM/FMラジオ、アナログTV、地デジ、ワンセグと、電波と名が付くものはまるで入らない環境なのだが、このWi-Fiで飛ばすワンセグは、机から離れた辛うじて電波の入る場所へこのアダプタを置くことができ、唯一事務所内でTVを見れるデバイスとなっている。外へ持ち歩くことは無いが、事務所で軽くTVを見るのに重宝している。 □製品情報 ●半年を振り返って 半年間使ったデバイスとしての感想は、まずバッテリはこれまで1回も1日の途中で切れたことはない。ただ使い方がネットだけ、たまに音楽、通話はしないと言った極端なパターンなので大丈夫なのだろう。例えばワンセグチューナーと同時に使ったり、内蔵スピーカーで最大音量にして音楽を再生したりすると、みるみるバッテリが減って行く。 通話の音質は少なくとも送受信ともSH703iよりはクリアで聞き取り易い。送信に関しても何人かと聞き比べの電話をした時、皆同じ答えだった。ヘッドセットを使った通話は1度も行なっていないため音質については、純正、SENNHEISER MM 50ともに不明だ。 大きさについては、賛否両論だと思われるが、最近の携帯は折り畳み式で分厚いものも多く、それらと比較すると薄い。ただ面積が大きいのは液晶パネルのサイズ的に仕方ない部分であるし、逆にこれがあるからネットも見やすい。何度か書いているように、筆者の場合、ジーンズのポケットに無理なく入るのが基準のため、そう言った意味では全く問題ないサイズだ。ただ、iPod touchをたまに触るとその薄さには驚いてしまうこともある。 ●iPhoneで変わる生活もある 事務所は自宅から徒歩で行ける範囲にあり、どちらも自由に音楽を聞ける環境だったので、ヘッドホンの必要性は全く感じず、学生の頃バンドをやっていた時に持っていた程度だ。以降Myヘッドホンは所有していなかった。従って移動中や歩きながら音楽を聞く習慣も無く、iPhoneどころかiPodすら全く興味を示さなかった筆者が、開発目的とは言え、iPhone 3Gを所有してから、ネット端末として使うのはもちろん、Myヘッドホンを持ち、移動中や歩きながら音楽を聴くようになってしまった。 また、夜中にちょっとしたメールや、サイトの閲覧などは、枕元にノートPCがあるにも関わらず、iPhone 3Gで寝転びながら見るようになった。体勢を変えず気楽にネットできるので手に取りやすい。更に内蔵の小型スピーカーが便利で、モノラルとは言え、ネットラジオをまるで普通のラジオのように聞くことができる。 そう考えると昔から小さいマシンは好きだったが、生活に変化を与える機器は無く、これほどまでに生活に密着したのはiPhone 3Gが初めてだ。これだけのパワーを持ち、即ネットに接続できるPCがジーンズのポケットに入ってしまうのは、何よりもいい意味でカルチャーショックを引き起こす。これからも良きパートナーとして使って行きたいと思う。 □アップルのホームページ (2009年3月13日) [Reported by 西川和久]
【PC Watchホームページ】
|