記者の目

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記者の目:降圧剤が要らなくなった=長倉正知

 「これなら薬は要りませんね」。昨年末、うれしい主治医の言葉だった。血圧を下げる降圧剤を勝手にやめて2年半。のみ始めたらやめられないと言われている薬を、ついにやめられたのだ。6~8年前、当時の生活家庭面に「歩く『生活習慣病』よれよれ奮戦記」という月1回の連載を書いていたが、これはその最終報告である。

 肥満気味なので、血圧が高いと若いころから言われていた。お酒が大好きで30代には脂肪肝と診断され、痛風の発作も経験した。連載開始の半年ほど前、150/110(単位はmmHg、以下同じ)という血圧に医師からアウトを宣告され、降圧剤をのみ始めた。44歳だった。健康診断のたびに「そのうち糖尿病だ」と脅され続けた。

 それでも薬をやめることができたのは、運動と食生活の改善である。それには、きっかけもあった。

 4年前、週刊エコノミストの著者インタビューを引き受けた。そこで「高血圧は薬で下げるな!」の著者、医師の浜六郎さんを取り上げた。高血圧の基準はどんどん低くなっている。連載当時は140/90だった正常値が、今や130/85である。医療費の増加が叫ばれる中、正常値を下げ、高血圧「患者」を増やしているような厚生労働省や関連学会に、疑問を感じ始めていたころだった。浜さんらの医師グループの取材を通じて知った正常値のいかがわしさや、降圧剤の危険性にはここでは触れない。だが、今の基準は下げ過ぎだと考えるようになり、薬をやめたのだ。

 もちろん、やめる前に血圧計を買った。ウオーキングを続けていたので、血圧は急に上がらない自信はあった。しかし主治医は反対するし、自己責任での投薬中止だった(本当の高血圧症の方は、危険ですからまねしないでください)。

 だが血圧は簡単には下がらない。そんな時、今度は「空腹力」の著者、医師の石原結實(ゆうみ)さんを取材した。「現代人は食べ過ぎ」「空腹は免疫力を増加させる」という石原さんの話は新鮮だった。石原流に自分なりの工夫をプラスし、1日の総摂取カロリーを減らす食事に変えてみた。

 それから1年。現在の私の生活を紹介すると--。

 毎朝7時前に起き、朝食前に愛犬レオと散歩する。できるだけ速足で、40分から1時間ほど歩く。駅の階段は2段跳びで上る。デスク業務なのでできるだけ社内を歩き回るようにし、上り下りは階段を使う。ただ雨や二日酔いの朝は散歩はしないし、疲れていれば階段は使わない。無理はしない。それでも1日の歩数はほとんど1万歩を超す。

 食生活では、朝は牛乳をかけたシリアル。昼と夜は石原流で、昼はショウガ紅茶と黒糖、夜は(ここが気に入っているのだが)自由に飲みかつ食べる。栄養バランスには気を付けるが、カロリー計算はしない。朝はご飯の日もあるし、昼食も誘われれば何でも付き合う。「あれはダメ」「塩分は7グラム」なんてことは決めない。おいしくなければ続かない。空腹感も慣れれば何てことはないし、黒糖をかじって血糖値を上げれば解消する。はやりのサプリメントは飲まず、代わりに毎日酒を飲むが、家で食事をすることが増えたので、酒量は確実に減ってきている。

 この結果、体重は83キロが74キロに減った。ズボンのウエストも98センチが88センチになった。肝機能や尿酸値、コレステロールはほぼ正常値。血圧も、寝る前と起床時に測って血圧手帳に記入しているが、だいたい135/85前後に収まる。家庭で測った時の治療の目安だそうだ。4カ月間付けた血圧手帳を見せた時の主治医の答えが、冒頭の言葉だ。

 健康ブームといわれて久しく、世の中にはさまざまな健康法があふれている。そもそも「健康」といったって、その定義は人それぞれだ。少々高血圧でもがんにならないような方法が良いと思う人もいれば、心臓病や脳血管障害を怖がる人もいる。認知症にならないことが最優先という考え方もあるだろう。人それぞれに健康法はあり、今回私が紹介した方法も、その一つに過ぎない。これが「唯一」とか「絶対」とか言うつもりはない。

 薬をやめられた以外にも良いことがある。「スマートになった」という言葉は心を安らかにしてくれる。さらに昼はほとんどお金を使わないし、夜も週に何回か酒を飲む以外はまっすぐ帰るので、とってもお財布に優しいのだ。

 ただやせてきただけに、この2~5年間で作ったスーツが全部だぶだぶになってしまった。ジーンズもスラックスも買い直した。「不経済な体ね」という妻の文句には閉口している。(東京総務部)

毎日新聞 2009年3月13日 0時01分

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