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離島医療担う次世代育て 竹富診療所で研修医が実習2008年8月31日

「手が腫れた」と診療所を訪れた患者さんを診る研修医の伊藤秀憲さん(左)と外山久太郎医師=竹富島の竹富診療所

 【竹富島=竹富】未来の“ドクター・コトー”を育てようと、竹富島の町立竹富診療所で研修医を受け入れる新たな試みが始まっている。「いつか一人でも島に戻ってきてくれたら」と出発した地道な種まきだが、実習中の研修医は離島医療の厳しい現実を知るとともに、自ら地域に入り込んで島の命を懸命に守ろうとする医師の姿勢に触れ、地域医療への使命感や喜びも感じ始めている。
 竹富町には現在、6つの診療所(町立2、県立4)がある。そのうち竹富島は長年、医師不足の沖縄だけに認められた医療従事者の医介輔が常駐していたが、医介輔が2002年に引退し、その後約2年間は週1度の巡回診療で対応していた。04年2月に初めて医師が常駐し、07年4月からは外山久太郎医師(64)が勤務している。
 外山さんが赴任後、北里大学から「地域医療の現場を学ばせてほしい」と研修医受け入れの依頼があり、今年6月から研修医の受け入れを始めた。
 外山さん自身に離島医療への強い思いがある。台湾で生まれ、戦後に医介輔をしていた祖父を頼って小浜島に引き揚げた。首里高卒業後、九州大学に進学。北里大学病院勤務を経て、平塚共済病院で研修委員長も務めた。60歳を前に「自分が培ってきた医療の技術、知識で沖縄の離島の役に立ちたい。そうしなければ医者として終われない」と思い、離島医に応募した。
 外山さんの下で、8月1日から実習中の研修医2年目の伊藤秀憲(ひでのり)さん(28)は「大学病院と違い、ここでは内科・外科問わず全部診なければならない。短期間でずいぶん診断の力がついたと思う」と手応えを感じている。
 だがそれ以上に学んだのは理想に近い地域医療を実践しようとする外山さんの姿勢だ。外山さんは「診療所に来やすいように」と老人クラブの会合や島の行事に欠かさず顔を出し、24時間365日で患者を受け入れている。
 そんな外山さんを見ているうちに伊藤さんも「離島の医師には島の命を預かる責任がある。いつか離島診療にかかわってみたい」との思いになった。外山さんの種まきが実をつける日もそう遠くはなさそうだ。
(深沢友紀)


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