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【社会】

立ち退くか いや続ける 新宿のカフェ『ベルク』決意

2009年3月10日 13時51分

店内には写真展や市民団体などのチラシが置かれ、「新宿文化」の発信地になっている=東京都新宿区で

写真

 JR新宿駅東口の駅ビル地下の名物カフェ「ベルク」の三月末までの立ち退き期限が迫っている。一九七〇年代の新宿の雰囲気を残す小さなカフェ。営業継続を願うファンの署名は約一万二千人分も集まり、ビル側に提出された。果たしてその声は届くのか−。 (比護正史)

 七〇年創業のベルクは、駅ビル「ルミネエスト」の地下一階にある。十五坪ほどの広さ。二百種類近いメニューがあり、一日約千五百人が訪れる。壁には月替わりで開催している写真展の作品やビラが飾られ、雑然とした雰囲気が漂う。

 店主の井野朋也さん(48)によると、二〇〇七年二月、駅ビルを運営するルミネ(渋谷区)から、二年の期限付きの「定期契約」に変更するよう求められた。断ると今度は立ち退きを迫られた。ビル側は当初は、「ファッションビル化」を理由に挙げていたという。

 昨年九月、今年三月末までに立ち退かない場合は、賃料を一・五倍に引き上げるとの通達が届いた。

 立ち退き騒動を知ったファンの中には、独自に「応援ブログ」を開設した人も。手紙や電話での励ましの声も後を絶たない。

 「お客さんの顔を思い出すと、勝手に出て行っていいのかと。立ち退き話が出てから、逆に応援していただいて感謝してます」。ファンの声に押され、井野さんは営業続行に向けて抵抗していく決意をした。

 同じビルに入る携帯電話販売代理店も立ち退きを求められて訴訟になり、先月十三日の東京地裁の判決で、退去と未払い分の賃料の支払いなどを命じられた。この代理店は二年間の定期契約にサインしていた。

 ベルクの場合は、二年ごとに自動更新する「普通契約」を結んでいるため事情は異なるが、井野さんは「人ごとではない」と感じた。

 井野さんは「新しいものと古いものが混在してこそ街はいきいきする。新しいものばかりだと、呼吸できないじゃないですか」と話す。「できることならルミネと一緒に手を組み魅力ある商業施設にしたい」と語った。

 ルミネの話 契約については当事者間のものであり、コメントは差し控えたい。

(東京新聞)

 

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