知的障害のある子供たちへの性教育をめぐって、教育委員会や都議から不当な介入を受けたなどとして、東京の養護学校の元教師や保護者らが起こした裁判で、東京地裁は12日、教員らへの処分は不当だったなどとして、損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
「みんなが生まれてくる前はどこにいたか知ってる?お母さんのお腹の中にいたの」
これは、東京都内の養護学校で実際に行われていた知的障害のある子供たちに向けた「性教育」の授業場面を再現したものです。障害のある子供が理解しやすいようにと体の呼び名を歌にしています。
「胸におっぱい お腹におへそ おへその下に ワギナだよ」
こうした形で性器の名称なども教えてきましたが、こうした教育の在り方に対して・・・。
「感覚がまひしているよ。こういう教材を使うのはおかしい」
6年前、この養護学校に突然、都の教育委員会と都議らが立ち入りました。「不適切な教育」だとして、100点以上に上る教材を没収したのです。
13人の教師が厳重注意となり、2年間で48人の教師が異動となってしまいました。
これに対し、教師と保護者らが「教育への不当な介入だ」として損害賠償などを求める、裁判を起こしました。教師らは性が理解できないために性犯罪の被害者や加害者になるケースは少なくなく、長年、試行錯誤を重ねて、教師と保護者の間でつくり出してきた教材だったと訴えました。
そして12日、判決で東京地裁は「当時の教育は学校指導要領に反するものだったとはいえない」としたうえで、教師への厳重注意処分は妥当性を欠く裁量権の乱用だと判断、立ち入り時の「感覚がまひしている」といった都議らの発言についても一方的で教師らの名誉を傷つけるものだとして都や都議に対して、総額およそ210万円の支払いを命じました
「不当な支配にあたるというふうに、判決が下されたことはとても喜ばしく思っています」(原告側)
「教育内容への不当介入は許されないという判決が出た、教育史上、画期的な判決だと思っています」(原告側)
判決について、東京都教育長は「大変遺憾で、今後の対応を検討したい」、3人の都議は「何ら違法性はないと確信している」としています。(12日17:05)