中川昭一財務相が辞任した。先進７カ国財務相・中央銀行総裁会議（Ｇ７）の後の記者会見にもうろう状態で臨み、批判を浴びていた。日本の政策を内外にアピールする大事な場面での失態だ。辞任はやむを得ない。

　酔っぱらっていたようにも見えた。原因について財務相は、風邪薬を普通の量の倍近く飲んだためと説明している。専門家によると、薬をアルコールと一緒に飲むと少量でも薬の血中濃度が高まる可能性があるという。

　かねて知られる酒好きだ。会見の失敗も、本当の原因は酒だった可能性が否定しきれない。

　仮に薬のためだったとしても、体調管理に失敗し公の席で醜態をさらした責任は重い。辞任やむなし、との声が与党内からも出てきたのは当然だろう。

　中川氏は初め、２００９年度予算案と関連法案が衆院を通過してから辞める考えを示していた。職にとどまり予算審議に臨んだ場合には、責任ある答弁はできなかった。辞任先送りを撤回するほかに道はなかった。

　問題が表面化したとき、麻生太郎首相はすぐに罷免すべきだった。首相の判断も甘かった。

　中川氏は先日は、衆院本会議で財政演説の原稿を何度も読み間違えている。過度の飲酒癖と合わせ、政治家としての資質に疑問が生じていた。任命した首相の責任も問われる。

　金融担当相も兼務する要職の辞任である。中川氏は首相の「お友達」として、麻生政権の誕生に力を尽くした一人でもある。首相には痛手が大きい。

　麻生政権の支持率は低迷したままだ。２月初めの共同通信社の世論調査では２０％を割り込んでいる。今度の問題で、もう一段下がるのは避けられないだろう。

　麻生首相はそうでなくても、漢字の読み間違いや、定額給付金、郵政民営化をめぐる発言のぶれを批判されている。最近は小泉純一郎元首相に、民営化見直し発言について「笑っちゃうくらい、ただただあきれている」と痛烈な言葉を浴びせられた。

　安倍晋三、福田康夫首相と、２代続けての政権放りだしを受けて発足した内閣である。本来なら選挙管理内閣の役割を負わされた政権として、組閣のあと速やかに衆院を解散し、国民の信を問うべきだった。

　このままずるずる居座るようでは、国民に対する責任はますます果たせなくなる。麻生首相に決断を促したい。