26日間働いて、受け取った給与は4万円足らずだった。「こんな扱いを受けたことはない」。2月から生活保護を受けている福岡市博多区の大工の男性(64)は怒りを抑えられない。
昨年10月、スポーツ紙の広告で「職人急募 日給8千〜1万5千円 寮(食事)有」と書かれた建設会社の求人案内を見た。翌日の採用面接。日当、勤務時間などの労働条件や寮費の説明はなかった。
「おかしいと思った。でも、『仕事に就きたい』『家に住みたい』の思いに駆られ、断る選択肢はなかった」。当時の所持金は5千円。その1カ月前、別の建設会社をやめ、廃車で寝泊まりする生活を続けていた。
福岡市内からワゴン車で近県の建設現場に向かった。寮は8畳間で相部屋。テレビもエアコンもなかったが、我慢するしかなかった。会社からは毎日、朝昼兼用の食費として千円が支給された。だが、入社から2カ月たっても、給与は支払われなかった。
12月、手持ちが500円を切り、たまりかねて寮を出た。再び廃車での生活。年明け、弁護士の支援を受けて会社に未払い賃金の支払いを求めた。日給9千円で計算すると23万円余りになるはずが、寮費や光熱費、食費、団体保険料、出張費などの名目で差し引かれ、振り込まれたのは3万7千円だけだった。
男性の代理人弁護士は「ハウジングプアの状態にある労働者の弱みにつけ込んでいる」と会社側を批判。労働基準法違反の疑いが強いとみて、労働審判の申し立てを検討している。
大阪市中央区の女性(54)は昨年夏、夫がリストラされ、収入が途絶えて家賃の支払いが遅れがちになった。玄関ドアに督促状を張られ、2月17日にはドアロックされて閉め出された。現在、提訴の準備を進めている。