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海と環境シリーズ

元世界チャンプ 沖縄の海を守る

イソギン この美しい沖縄の海を守りたい (リベルテダイビングサービス提供)
Photo By スポニチ

 スポニチが海と環境のこと、真剣に考えてみました−。沖縄に海を汚す環境破壊と戦う元世界チャンピオンがいます。平仲信明さん(43)=リングネームは明信=はボクシングジム経営と平行して、サンゴ礁に悪影響を与える赤土流出防止剤の施工・販売の会社を手がけています。平仲さんは怒っています。「海と環境シリーズ」第8弾は、沖縄と人と自然を愛する世界最強の“社長”が主人公です。

 沖縄が世界に誇るサンゴ礁に、危機が迫っている。土地の乱開発で流出した赤土が海に流れ、サンゴを死滅させようとしている。白化現象と呼ばれる深刻な環境破壊だ。平仲さんは立ち上がった。

 「沖縄には観光しかないんです。1千万人の観光客には環境が一番大事。サンゴ、川、タバコの吸い殻…。問題はたくさんあります」。

 平仲さんは沖縄を環境立県にしたいと考えている。それには3つの“K”が一番大事と訴えた。「環境、観光、健康です」。観光するには健康が必要。健康には環境が大切。環境が悪ければ観光客も来ない、という訳だ。

 その目は現役当時より厳しく、そして輝いていた。「僕はね、沖縄をもっとよくしたいんですよ」。沖縄を誰より愛する男がいた。環境問題に取り組む人間の中で、間違いなくこの人が地上最強だろう。

 平仲さんはボクシングの元WBA世界ジュニア・ウエルター(現スーパー・ライト)級王者。相手の骨を砕く強打を恐れられ、世界挑戦権を持ちながらチャンピオンに対戦を避けられ続けた逸話は、ボクシング界の伝説だ。

 現在は沖縄・豊見城市で、日本ライト級4位の中森宏などを擁する平仲ボクシングスクールジムの会長を務める。もうひとつの肩書きは「株式会社 平仲」の代表取締役兼営業本部長。事業を立ち上げたのは、ボクシングに対する情熱と沖縄への深い愛情からだ。

 「平仲」は土壌(赤土)等流出防止・緑化を中心とする環境開発事業を展開する。平仲さんの口元にひげをたくわえた強面(こわもて)の風貌からは考えにくい?が、かなりのインテリだ。南部農林高では畜産、日本大学では農獣医学部で学び、とくに化学には精通している。

 現在、もっとも力を入れているのは土壌の浸食防止剤「EMNコート21」の販売、施工。簡単に言えば、工事などでむき出しになった赤土を環境に無害な特殊接着剤で固め、流出を防ぐもの。この防止剤には植物の種子が含まれており、接着剤の効果が薄れる頃には一面草が根を張り、土壌が緑化しているというものだ。

 「稼いだ分はほとんどボクシング事業につぎ込んでいます」。そこには平仲さんが師と仰ぐ2人、「沖縄を作った」と言われる宮城仁四郎氏と、県の土木事業をリードした大城鎌吉氏の影響があった。「沖縄は環境問題と人作りが重要。ジムをやるならお金がいる。人に頼らず自分で事業をやりなさい、と教えていただきました」。

 ジムには常時130〜160人の練習生がいる。普通のジムの倍にもなる。ところが高校生からお金を取らない。そればかりか、用具などすべて平仲さんのポケットマネーで買い与えている。「人作り」の実践だ。環境を守ったお金でボクサーを育てる。こんな素敵な商売はない。

 環境事業、ジム経営に携わる人間は下請けも含め100人を超える。平仲さんは「今一番の宝物はスタッフ、選手、家族です」と言った。こんな世界王者に守られている沖縄の海が、ちょっとうらやましい。

 ◆平仲 信明(ひらなか・のぶあき)1963(昭和38)年11月14日、沖縄県島尻郡出身。現役時は明信。ロサンゼルス五輪代表(ベスト8)、元WBA世界ジュニアウエルター級王者。テレビ局や大手ジムの援助なし、文字通り拳だけで世界の頂点に上り詰めた。練習のかたわら単身米国に乗り込んで、自ら世界戦の交渉を行ったことでも有名。沖縄ジム所属初の世界王者。最終成績は22戦20勝(18KO)2敗。

 ≪海に生きる人たちもエール≫海に生きる人たちも平仲さんの取り組みを応援する。那覇市でダイビングショップ「リベルテ・ダイビングサービス」を経営する木村俊明さん(42)も、赤土流出による環境破壊を危惧(きぐ)する。「サンゴが減ると、魚も減ります」。海に潜ると「人が住んでいない場所ほど透明度が高い」と“当たり前のこと”を感じてしまうという。木村さんは「沖縄の海は透明度、生物の多様性、サンゴの豊富さすべてで世界屈指なんです」と訴えた。“当たり前”が当たり前でなくなるように「平仲さんの取り組みが本当に広がれば沖縄の海にもいい」とエールを送った。

[ 2007年05月15日 14:15]

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