村崎 あとはこれ、スマイリーキチク(鬼畜)、じゃなかった、キクチが女子高生コンクリート漬け殺人に関与していたとか本人のブログに中傷コメント書き込んでいた連中が、書類送検になっただろ(★24)。 唐沢 キチクだからこいつが犯人に違いないとでも思ったかね。それにしても、飯島愛もそうだったけど、コンクリ殺人に有名人が関わっていたって都市伝説は、どうしてここまで広まるんだろう。 村崎 少年法で、犯人グループの名前が公表されなかったからでしょ。だから、その気になれば、あの事件当時未成年だった有名人は誰でもあの犯人に仕立て上げられるわけだよ。 唐沢 飯島愛の場合は若い頃は不良だったってこともあって、勝手にイメージをあわせられちゃったってところもあるんだろうけど、スマイリーキクチの場合はどうだったのかね。 村崎 それが別に素行不良だったとかいう話も聞かないし、せいぜいが毒舌芸で売っているってだけで、あとはまったく根の葉もない噂なんだと。でも、ネットではこういう噂、一度炎上しちゃうと、本人がいくら否定したところで、もう止めようがないんだよ。だからこういう場合、逆に「オウム事件にも関わっていました」とか「連合赤軍にも入っていました」とか「下山事件も実行犯はオレです」とか、「ゾルゲ事件でもスパイやってました〜」とか、もっと派手な出鱈目を吹きまくって、騒いだほうがだんだんバカバカしくなってくるように誘導するのも、ひとつの手なんじゃないかと思うんだが、どうかねえ……? それにしてもいつも思うんだが、“書類送検”って、字だけ見るとただ「書類を送る」ってことで、それ以外何もなしってことかい? 唐沢 一応、書類送検された人間には前科がつくから、実刑にならなくても、今後履歴書の賞罰欄には一生、このことを書かないと虚偽になるわけ。匿名のカキコだから何を書いてもリスクはまったくないと思ったら、大間違いだよ。 村崎 それから、赤報隊の朝日新聞阪神支局襲撃事件の犯人が名乗り出たとかで、「週刊新潮」に手記を掲載していて、それに朝日が「事実と異なる点が多く含まれている」と反証記事を朝刊に載せていたんだが(★25)、最近は新聞も雑誌も売れなくてマスコミ不況だから、新潮と朝日がグルになって、部数アップの謀略を仕掛けているんじゃねえかとすら思えるね(笑)。どうやら今回のはその後の報道を見ていると「ガセ」ってことで落ち着きそうなんだけど。 唐沢 ホントにこの名乗り出てきた人が実行犯だとしたら、ちょっと可哀相だよね、誰にも信じてもらえなくて(笑)。 村崎 それに便乗したのか、赤報隊を名乗る人物から実弾とみられる金属片がNHK各支局に送りつけられてきて、騒ぎになっているけど(★26)、これは何なんだ? 唐沢 単なる便乗犯だとは思うけど、とにかくNHKとか朝日とか権威的なマスコミが嫌いな人間の反抗というかね。 村崎 NHKで思い出したけどさ、いま、あそこの連続スペシャルドラマで「白洲次郎」、やってるだろ。ここ数年来というか最近の白洲次郎ブームを見ていて思うんだけど(★27)、麻生や中川みたいな政治家以前に人としてどうかと思うような腐った政治家連中にうんざりした人たちが、かつての昭和史に英雄を求めているように見えるんだな。なんか白洲次郎って、急速な勢いで“坂本龍馬化”しているような気がしない? こないだ「週刊文春」に白洲次郎伝説を揶揄するような記事が掲載されていたんだけど、没後からなぜか少しずつ、現在に至るまで身長の記録が伸びているんだとさ(笑)。 唐沢 イエス・キリストみたいだね(笑)。 村崎 要するに英雄&聖人化されちゃっているわけ。先日、たまたま坂本龍馬の研究本を、道端のホームレスから百円で買って(笑)読んでみたらさ、龍馬も死んだ直後からずっともてはやされる伝説的な人物だったかというと、そんなことはなくて、死後しばらくは維新のドサクサで全く忘れられていて、それが明治も15年くらい過ぎて板垣退助が自由民権運動キャンペーンの一環で“土佐の英雄”として持ち上げるようになってから思い出され始め、日露の国交が断絶した日に龍馬が皇后陛下の夢枕に立って日本の守りを約束して……とかいうウソくさい新聞記事で一気に全国的な龍馬ブームが起きて、だんだん伝説が一人歩きするようになって、かなりフィクションの要素が混じるようになっだんだってね。司馬遼太郎が書くような頃には、すでにフィクションの要素も史実に取り込まれるようになっちゃって、完璧に伝説の英雄になっちゃったんだよな。今の白洲次郎ブームって、龍馬の英雄伝説化のプロセスを同様にだどっているような気がするのよ。 唐沢 どんな伝記だって、フィクションの要素が入り込むのは避けられないとは思うけどね、その伝説を利用したいと考える連中の都合にいいように改ざんされるのは問題だよね。 村崎 オレも、マッカーサーを叱り飛ばしたとか、白洲次郎の痛快なエピソードってけっこう好きなものが多いんだけど、正直それが本当のことなのかどうかというと、疑わしい部分はあるとは思う。 唐沢 これだけ伝説化されるっていうのは、やっぱりどの政治家も信じられなくなった現在、規範になるべき人材を、日本人が求めているってことなんだろうね。ただ、それが度を越したハマリ方になるのが怖いんだよね。坂本龍馬だって、“土佐の英雄”程度なら郷土の財産として残るのはいいと思うんだけど、龍馬と自分を同一化するようなミュージシャンなんかが出てきたりするとね、“オマエの人生と坂本龍馬に何の関係があるんだ”って言いたくなってくる。 村崎 偉人を持ち上げるのは勝手だが、持ち上げる側にも品格ってもんが必要なんだよな。だからオレ、麻生の口から白洲次郎の名前が上がったりするのがどうにも不愉快でしょうがないんだよ。はっきり言って、このオレごときが白洲次郎さんの名前を口にするのも不敬だと思って自重したいくらいなんで。 唐沢 戦争に直面しなきゃいけなかった人と、戦争を通過しないで生きてこられた人とは、そもそも同じ土俵に並べられるわけないもんね。特に麻生の世代ってのは、日本経済が右肩上がりだった時代に、その恩恵をたっぷり浴びながら生きてきた世代でしょ。こう言っちゃなんだけど、ホントに白洲次郎みたいな人材を今の日本に求めるなら、日本がもう一度、戦争に匹敵する危機的な状況に見舞われるしかない。ああいう人は、危機に直面しなきゃいけない必然性から生まれてくるもんなんだから。 村崎 あまりにも尊敬できるちゃんとした大人がいなさすぎるからこそ、白洲次郎のような格好良い英雄が求められてる時代なんだってのは分かるけどね。でも、坂本龍馬だって、太平をむさぼって過ごしてきた徳川政権時代が急に幕末の混乱に突入した中で、初めて出てきた存在なわけでしょ。いかに今が不景気でも、餓死する国民が出るほどでもない程度じゃ、本来的な英雄なんて生まれてこないだろうな。 唐沢 これから戦争に巻き込まれる可能性も、何だかかんだいって、ほとんどないだろうしね。となると、あとは宇宙人に攻め込んでもらうしかない(笑)。 村崎 “百年に一度の未曾有の経済危機”とかいわれても、誰が悪いのか名指しできない状況じゃ、単にモヤモヤが残ったまま自滅の道をたどるしかないよな。アメリカが諸悪の根源だってことはなんとなくわかるけど、オバマ政権に変わったところで、実質的効果がこれから出てくるのか、はなはだ疑問だし。 唐沢 今のオバマ政権の最高顧問って、カーター政権時代に大統領補佐官をやっていたズビグネフ・ブレンジンスキーだよね。ブレジンスキーって「日本はアメリカの属国」と明言していることで有名な人なんだよ。 村崎 奴らの腹のなかじゃ、属国どころか「日本はアメリカの財布」なんだよ。じゃなきゃ、あんな屈辱的な日米首脳会談なんかやらねえって。 唐沢 それがイヤだから反米的な独立体制で行こうとすると、今度は軍隊を持たなきゃいけない、石油ルートも独自に築かないといけないなどなど、諸々の問題に直面せざるをえない。結局、高度経済成長っていうのは、しばらく復興に専念して安全保障関係のことはあんまり考えたくないから、安保関係はアメリカに丸投げしちゃえって吉田茂が決めたことで、初めて成し遂げられたようなもんでしょ。でも、経済的にうまくいくようになって、安保関係もどこかで線引きしなきゃいけなくなったときにそのまんま放置しておいたもんだから、今になっていろんな問題が起こってくるわけで。なんとなくこの年になって、三島由紀夫の気持ちがわかるようになってきた(笑)。 村崎 とにかく、年明けからショボいニュースばっかりで、派手な猟奇事件も起きないし、もう何でもいいから麻生にはさっさと辞めてもらわないと、気分が一新しないよな。 唐沢 あれだけさんざん麻生を持ち上げていたアキバのオタクたちは「オレたちが送った喝采を返せ!」って言いたいところだろうね。オタク一揆でも起きないかね(笑)。 村崎 そういや、こないだ、千葉や松戸で包丁の大量盗難事件があって(★28)、すわ麻生内閣への集団暴動でも始まるのかと思ったら、犯人がこないだ目黒のスーパーで現行犯で捕まったんだけど、単に包丁フェチのコレクター親父だったんだと。 唐沢 これだからオタクは……いや、包丁フェチはオタクと違うぞ(笑)! |