不法入国で退去強制命令を受けて出頭したフィリピン人、カルデロン・アランさん(36)=埼玉県蕨市=が東京入国管理局に収容された9日午後、中学1年の長女ノリコさん(13)が東京・霞が関の司法記者クラブで会見した。ノリコさんは「今すぐにでも戻ってきてほしい。3人で日本にいたい気持ちは変わりません」と涙をこらえて話した。
ノリコさんはこの日朝、中学に登校したが、アランさんが午後1時過ぎに収容されたと連絡を受け、早退して母サラさん(38)と会見に臨んだ。「すごいショックです」と話すノリコさんの横で、サラさんは黙って涙を流し続けた。
入管は、一家が望む家族全員の在留特別許可を認めず、13日までに一家3人で帰国するか、ノリコさんの在留特別許可を申し出るかを意思表明しなければ、サラさんとノリコさんも16日に収容し、17日に送還すると通告した。
法務省の担当者は「一家には、親せきらの下で学業を継続させるためならば、長女に在留特別許可を与えると伝えてある。両親が退去強制されると最低5年は入国が認められないが、一定期間を置いて上陸を特別に許可する用意があると法相が表明している」としている。収容に踏み切った理由については「最大限、特別に配慮すると伝えてきたが、あくまでも3人全員の在留を求め帰国の意思を示さない」と説明した。
一家の代理人の渡辺彰悟弁護士は、自分たちが発起人になり、ノリコさんの日本での就学費などを援助するため「のりこ基金」を設立したという。【稲田佳代、桐野耕一】
毎日新聞 2009年3月10日 東京朝刊