銚子市立総合病院の診療休止問題をめぐり、岡野俊昭市長(62)に対する解職請求(リコール)の是非を問う住民投票が9日、告示された。リコール運動を推進してきた「何とかしよう銚子市政・市民の会」(茂木薫代表)は出陣式を行い、「岡野市長の下では地域医療の再生は不可能」と気勢を上げた。一方、岡野市長は会見で「休止は銚子の将来を見据えての決断。リコールは市政の混乱と停滞を生じさせ、病院の再開を遅らせている」と反論した。投開票は知事選と同じ29日で、双方が熱い論戦を展開する。【新沼章、柳澤一男】
有権者の3分の1を超える2万3405人分の有効署名を集めてリコールにこぎつけた「何とかしよう銚子市政・市民の会」(茂木薫代表)は、同市唐子町の事務所前で出陣式を開いた。
リコールに賛成する市議や市民ら約60人が集まり、茂木代表が「岡野市長に辞めてもらうためにも住民投票を成功させよう」とあいさつ。市立病院に入院していた患者らも「病院から追い出した市長を許すわけにはいかない」と訴え、勝利を誓い合った。参加した50代の自営業の男性は「命よりも市の財政の方が重いのか。病院の休止は許せない」と話した。
市長を支持する「真実の会」(白土勝彦代表)は市内4カ所で街頭演説をしたほか、宣伝カーで市内を回り、リコールに反対するよう呼びかけた。白土代表は「リコール推進派は権力の奪取を考えているに過ぎない。岡野市長を助けることが銚子再生の道」と訴えた。演説を聞いた70代の女性は「財政を立て直すためには、病院の休止はやむを得なかったと思う」と話した。
同日開かれた市議会一般質問でも、病院休止とリコール問題が取り上げられた。リコール推進派の小林良子市議(リベラル銚子21)が「リコールが理不尽という理由は何か」と問いただすと、岡野市長は「(リコール推進派は)『病院を守る公約を破ったためにリコールを請求した』と言うが、私は病院を守ろうと思い続け努力してきた。診療の維持が不可能になり、市を守るためにつらい決断をした」と強調した。
病院休止については「医師不足、財政事情からやむを得なかった。早期再開に向けて努力する」と繰り返し、出直し選挙には「社会正義の実現や病院の再開を見届ける」として出馬する考えを示した。
一方、リコールに反対する宮川雅夫議員(市民クラブ)は「病院の指定管理者選定について、リコール推進派も含めた市民に温かい目で見ていただき、一刻も早い病院の再開を願う」と岡野市長を激励した。
岡野市長は議会の合間に市役所内で記者会見し、診療再開のために公募した指定管理者に医療法人1団体から応募があったことを正式に発表し、「外科、内科、救急もできず、診療機能が維持できなくなって病院として立ち行かなくなった。市民の皆さんに理解していただき、冷静に判断してほしい」と話した。リコール推進派に対しては、「3月の住民投票は市議会、行政の混乱が目的。病院の再開に一生懸命になっているのに一度も協力してくれなかった」と批判した。
投票は知事選と同じ29日午前7時から午後8時まで市内30カ所で行われ、午後9時10分から市体育館で開票される。投票は解職に「賛成」か「反対」の欄に岡野市長の名前を記入。投票総数の過半数の賛成で失職が決まり、50日以内に出直し市長選が行われる。知事選告示の12日以降は、公選法の規定で組織的な街頭宣伝やチラシ配布が禁止される。有権者数は6万501人(3月2日現在)。
毎日新聞 2009年3月10日 地方版