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【蹴球探訪】

勝敗に関係ない!? 練習非公開

2009年3月10日

非公開練習の風景…写真は岡田ジャパンが豪州戦前に行ったもの=2月7日、千葉市内で

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 3月7日、ついに17年目のシーズンを迎えたJリーグ。今季の開幕を前に監督会議で各クラブに異例の要請が伝えられた。最近、増加する各チームの「非公開練習」に対し、鬼武チェアマンが自ら苦言を呈したのだ。「メンバーやセットプレーを見せたくない」「集中するため」など隠す側の理由はさまざまだが、勝つための方策であるはずの非公開も、開幕戦の結果を見る限り効果薄。むしろデメリットの方が多いと言えそうだ。 (荒川敬則)

◆一番の理由は「集中したい」

 ここ数年、試合前に非公開練習を行うクラブが確実に増加している。93年にJリーグがスタートした当初、非公開練習といえば、外国人監督の専売特許だったが、近年は日本人監督も当然のように非公開練習を行う。

 「セットプレーや、紅白戦のメンバーのみを隠したい」という一部非公開派から、「ほとんどすべてを公開したくない」といった完全非公開派まで、監督のスタンスはさまざま。しかし、選手に取材しても、ファンや報道陣の視線をシャットアウトして、何か“特別”な練習を実施しているクラブは実はほとんどない。情報漏れを防ぐ意味合いもあるだろうが、一番の理由は「集中したいから」というものだ。

 これに対し、Jリーグの鬼武チェアマンは、伸び悩む観客動員にも配慮し、「各クラブはサービス精神が足りない」と、練習の公開を各クラブに要請した。開幕直前には、強い口調で要請後も非公開練習を行ったクラブを非難した。

 また、佐々木常務理事も「ファンに『練習には来るな。試合には見に来て』とは、あまりに都合のいい話。練習に集中できないというが、公式戦で1万人以上の観客の前でプレーする選手がそんなことで集中できないとはおかしい」と痛烈に非公開を非難した。

◆「勝率」は1割7分

 そこで、開幕戦を戦ったJ1各クラブの非公開練習と、その成果である勝敗を調べてみた。果たして“非公開練習”に本当に成果はあったのだろうか。

 今季の開幕直前の1週間で練習をすべて公開したのは昨季のJリーグ王者の鹿島をはじめ、名古屋、大分、柏、広島、磐田の6クラブ。一方、2日間以上練習を公開しなかったのはFC東京、浦和、山形、清水、神戸、千葉の6クラブ。1日でも非公開練習を実施したのは12クラブだった。

 開幕戦に限った成績だと、練習を公開したクラブは3勝2敗1分と勝率6割。一方、非公開を実施した12クラブは4勝5敗3分で、勝率は4割4分4厘。さらに2日以上の非公開練習を行った6クラブに関していえば、勝てたのは山形だけ。勝率1割7分では、効果のほどはまったくなかったと言わざるを得ない。

 代表の試合など短期決戦で互いに情報の少ない対戦であれば、非公開というのは効果はあるかもしれない。しかし、開幕戦の結果を見ても分かるように、たとえ選手の集中が多少そがれたり、スタメン情報などが漏れても、勝敗を大きく左右するほどの影響はないはずだ。

◆やっぱりファン減らすだけ…

 Jリーグの佐々木常務理事も言うように、本来は観客に「見せる」ために試合をするプロのJリーガーがわずか数百人のファン、10人足らずの報道陣に集中できないなら、5万人を超えるファンの前で試合の時だけ集中できるのかは、はなはだ疑問だ。

 かつて、ある選手に「記者と話したくない。ファンへのサービスも意味があるのか分からない。勝てばいいんでしょ」と言われたことがある。その選手に対して「それをすべてやりたくないなら、プロをやめるべきだ。自分の年俸がどこからきているのか、もう一度考えた方がいい」と忠告したことがあった。少なくとも“プロ”であるという自覚があるならそんな言葉は出てこないだろう。観客動員が伸び悩み、不況から多くのクラブがスポンサー獲得に悲鳴をあげる中、1人でも多くのファンに「見てもらう」ことが大事になる。「非公開」について各クラブが再考する時期ではないだろうか。

 

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