2009年3月10日3時0分
在留特別許可は、強制退去処分が出ても、法相が本人・家族の状況や人道的配慮の必要性などを総合的に考慮して、個別に滞在を認める制度だ。法務省は06年、ガイドラインを公表した。07年までの5年間で年に7千〜1万3千件程度認めており、希望者の8〜9割前後が許可された計算になる。
今回の場合、夫妻がまじめに働き、職場や地域社会になじんでいたことは、国外退去処分の妥当性が争われた裁判でも認められ、2万人を超える嘆願署名も集まった。のり子さんは「私にとって母国は日本。家族とも友人とも離れたくない」と訴えた。
だが、夫妻は偽造旅券で入国しており、入管は正規のビザが切れた不法残留より悪質と判断。最高裁でも「子に責任はないが、不法入国の親が強制退去となれば一定の不利益はやむを得ない」とする判断が維持された。
従来は強制退去が決まった時点で子どもが中学生以上だと、「日本に定着し、国籍のある国での生活は困難」と許可されるケースが多かった。しかし、今回は母親の不法滞在が発覚して処分が決まった時、のり子さんは小学5年生。入管幹部は「中学生になったのは訴訟で争っていたから。それで判断を変えれば、罪を認めてすぐに帰った人に対し公平を欠く」と話す。
一方、在留特別許可問題に取り組んできた中京女子大の駒井洋教授は「不法入国を水際で防ぐことは大事だが、子どもの人権や10年以上まじめに働いていたことを考えれば、在留を認めてもよい事例だ」と指摘する。
同様のケースがどのくらいあるか正確な統計はないが、外国人の人権問題に取り組むNGO「APFS」(東京)によると、親の不法滞在で強制退去処分になった子どもは現在、全国で100人以上いるという。(延与光貞)
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■在留特別許可で考慮される事情
《主なプラス要素》
・日本人の子や配偶者
・未成年である日本人の子を養育
・難病で日本での治療が必要
・日本に定着し、当該国での生活が困難
《主なマイナス要素》
・犯罪行為など素行不良
・出入国管理行政の根幹にかかわる違反・退去強制歴がある