社内体制 (09年2月)
毎日新聞社の環境への取り組みをしている組織は、環境委員会と環境マネジメント事務局の2極体制を取っています。
環境委員会
環境委員会は、全社的に環境問題に取り組もうと、2002年12月に発足しました。京都議定書(下記参照)が1997年に採択されたことを受けて、国内外で二酸化炭素(CO2)排出量削減など環境対策が重視される中、当社も本格的に組織を作りました。
組織体制は、社内の環境問題を統括する委員長を置き、各本支社の代表・支社長が副委員長となり、それぞれの本支社で環境対応や環境保全活動などに取り組んでいます。
環境委員会は、環境関連の法令などに対応するほか、環境負荷の一層の低減を目指しています。さらに環境保全活動を進めることにより、当社の企業価値を高めていきます。こうした「環境経営」を進めることで持続可能な社会の実現に寄与していきます。
社内の体制
▽委員長=人事総務本部長
▽副委員長=各本支社の代表・支社長
▽委員=総本部機構本部長、各本社の代表室長、支社の総務部長など
▽事務局=社長室、各本支社代表室・総務担当部門、東京本社総務部・科学環境部・環境マネジメント事務局、水と緑の地球環境本部(事務局長=人事・総務本部)
▽各本支社の環境委員会・事務局=全社環境委員会の体制に準じて各本支社で構成
京都議定書
京都議定書(気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書)は1997年12月、京都市で開かれた地球温暖化防止京都会議(第3回気候変動枠組条約締約国会議、COP3)で議決されました。世界最大のCO2排出国である米国は国内事情で受け入れを拒否しましたが、ロシアが批准したことによって05年2月に発効しました。
地球温暖化の原因となる温室効果ガスであるCO2やメタンなどについて、先進国における削減率を、90年を基準年として各国別に定め、定められた期間内に目標を達成します。日本は約束期間(08年~12年)の間に、これら温室効果ガスの排出量を6%削減することが義務付けられました。
これを受けて国内では環境負荷の小さいものを優先して購入するグリーン購入法などが施行されたほか、環境省と経済産業省は一定規模以上の企業にエネルギー使用量を報告させたり、自治体も企業に対して温室効果ガスの排出量を報告させたりしています。また、環境省は企業の環境活動を知らせる「環境報告書」や、企業活動における環境費用を表した「環境会計」のガイドラインを作成し、導入を呼びかけています。さらに、「国内排出量取引制度」が08年10月から試行が始まり、政府は企業に対し自主的に排出量を定めてこの制度に参加するよう呼びかけています。環境マネジメントの国際規格ISO14001の認証を受けた国内企業が2万社を超えるなど企業の取り組みが本格化しています。
しかし、こうした取り組みにもかかわらず、日本の温室効果ガス排出量は約束期間前年の07年度の速報値で90年比+8.7%になりました。これは07年7月の新潟県中越沖地震以降、東京電力柏崎刈羽原発が運転を停止していることが主な原因となっています。議定書の約束期間に入った08年度も改善の見通しは立っていません。目標達成には約14%の削減が必要で、厳しい状況が続いています。
CO2排出量の削減目標
環境委員会は03年4月、「温室効果ガスの排出削減の推進」「産業廃棄物の適正管理」「グリーン購入の推進」などの環境活動を掲げた「環境行動計画」を定めました。計画に基づき06年4月には、CO2排出量の削減目標について本支社と印刷工場のグループ20事業所で「04年度比で10年度に5%削減する」との目標を掲げました。さらに、08年3月に改訂された「2008年度環境行動計画」では、CO2排出量の削減目標がグループ全体で「04年度比で10年度に7%削減する」に強化されました。同時に行動計画は、東京本社で08年度中 にISO14001認証取得を目指すことも掲げ、同本社に08年4月「環境マネジメント事務局」が設置されました。
環境マネジメント事務局
環境マネジメント事務局は、ISO14001認証の1年以内の取得を目指し、東京本社のCO2排出量削減に向けた社員の環境モラルの向上、紙や電力使用量の削減、ごみの減量化などにまず取り組んでいます。ISOの取得の過程でわが社の業務を可視化し、より効率的な業務遂行の一助とすることも狙いです。ISO認証は09年度以降、他本社へも順次拡大する方針です。
ISO14001認証取得は製造業を中心に盛んですが、生産、流通、サービスの分野でみると、雇用で約8割を占める中小企業には浸透しているとはいえません。言論機関である新聞社として率先垂範し、自らの環境モラルを高める必要があります。
ISO取得のためには、環境マネジメントシステム(EMS)の構築が必須ですが、新聞社ならではの側面もあります。というのは、紙・ごみ・電気(エネルギー)の削減だけでなく、プラスの環境に影響を与える側面を持っているからです。科学環境部の作る「環境面」、MOTTAINAI運動、富士山再生キャンペーン、My Mai Treeなどの水と緑の地球環境本部の活動とその紙面化などの特色を生かしたISO取得を目指しています。
東京本社のEMSの構築は08年9月までにほぼ完成し、10月から実際にこのシステムに沿った各職場での環境への取り組みが始まりました。これまで行ってきた蛍光灯の安定器のインバーター化、クールビズ・ウォームビズの実施などに加えて、アイドリングストップ、ごみの分別の徹底、コピー用紙使用枚数の削減などに取り組んでいます。社内にある自動販売機も08年度には各本支社で一斉に更新し、東京本社は従来37台あったものを32台にし、全機種を省エネ型としたことで消費電力が半減すると見込まれています。大阪本社も全部を入れ替え、消費電力量が最大で45%削減できる見込みです。
産業廃棄物の管理も一層の徹底が計られており、東京本社は販売店からの新聞梱包材(PPバンド、PEフィルム)の回収エリアを千葉、埼玉、神奈川の一部まで拡大、約400店舗となりました。大阪本社は管内の販売店650店中、160店でPPバンドとPEフィルムを回収しています。中部本社はほぼ全店舗から回収しています。
毎日新聞社の環境に関する基本法ともいえる「環境基本規程」やそれに付随する各種規程類、各種手順書類も完成しました。基本規程にうたった環境理念、環境方針も08年10月の経営会議で承認され、発効しました。
環境への取り組みの歴史
毎日新聞社は、2007年4月「水と緑の地球環境本部」を発足させました。それまで各セクションで取り組んでいた環境に関するキャンペーンを集め、さらに強化していくのが狙いです。
毎日新聞社が「人口問題調査会」を発足させたのは1949年です。長年の研究の積み重ねで、信頼のあるデータの提供をしています。こうしたシンクタンク機能だけではなく、キャンペーンを中心とした行動、理念と実践の両面をやろうというのが水と緑の地球環境本部の使命です
毎日新聞社は企業理念に「生命を育む...」の文言を入れたのが91年。「日韓国際環境賞」を94年に創設し、朝鮮日報とともに日韓両国のNGOなどを顕彰しています。
96年には、従来の「科学部」を「科学環境部」に改称し、同業他社に先駆けて97年から常設の「環境面」を掲載しています。
「富士山再生キャンペーン」を開始したのが2000年。ノーベル平和賞を受賞したケニヤのワンガリ・マータイさんを招へいし、観堂義憲編集局長(当時)との対談で「もったいない」という言葉を知ったマータイさんとともに「MOTTAINAI」運動を主導しています。2006年からは創刊135周年記念として「My Mai Tree」を展開しています。林野庁が主導する植林は単一樹種で1平方㍍に1本という形だが、毎日新聞社の方式は、横浜国立大学の宮脇昭名誉教授の指導によりシイ、タブ、カシなど80種もの樹種を混植し、さらに1平方㍍に3本というように密植させると競争が起きて成長が早く、活着率も高くなります。これまでに自前の取り組みで14万本、後援植樹も含めると38万本を植えています。
「そらべあ」の活動は、温暖化の影響で親と離れ離れになったホッキョクグマの兄弟をシンボルキャラクターにして、幼稚園や保育園にソーラーパネルを贈る運動を展開しています。ソニーの乾電池のパッケージには「そらべあ」が付いていて、その売り上げの一部を基金に回しています。
本社1階にある「水と緑の地球環境本部」のギャラリーでは、毎月のように環境に関する講演会や映画会を開催し、多くの読者の共感を集めています。
毎日新聞社とサテライト工場の二酸化炭素排出量と省エネ対策
【二酸化炭素排出量削減】
毎日新聞社は2008年2月に決定した「2008年度環境行動計画」で、二酸化炭素(CO2)削減の目標を本支社とサテライト工場を含めた毎日グループ全体で「2004年度比で2010年度に7%削減」に引き上げました。2005年度計画で打ち出した「04年度比で10年度に5%削減」という目標を一層強化しました。また、業界で組織する社団法人日本新聞協会の「自主行動計画」の「基準年(05年度)比で10年度に5%削減」をも上回る目標としました。
毎日グループのCO2排出量は、東京、大阪、西部、中部の4本社、北海道の1支社については、それぞれ電気、ガス、重油、ガソリン、灯油、ジェット燃料、水の各項目の使用量をCO2の排出量に換算しました。これには各本社の支局・通信部などの出先の取材機関の使用量も含まれています。サテライト工場は、北海道北広島市から佐賀県鳥栖市にある14工場の同じく電気、ガス、重油、水の使用量をもとに算出しました。07年度からは、新たに稼働した川崎工場も含めた15工場のデータを含んでいます。
この表をみてもらうと分かりますが、07年度の排出量は04年度に比べて5.98%の削減となっています。目標の7%削減まで、あと2・02%に迫っています。毎日新聞社は、今後も一層の省資源、省エネルギーに務め、一日も早い目標達成と大幅なCO2削減を推進します。