広島電鉄が、被爆3日後の広島市内を走った「一番電車」に電気を送った旧廿日市変電所(廿日市市)の取り壊し工事を進めている。80年以上電気を送り新変電所へバトンタッチしたが、貴重な歴史建物を惜しむ声が上がっている。
旧変電所は広電宮島線廿日市駅の約150メートル東にあり、1922年の建造。明治期の駅舎や鉄道橋に多い「イギリス積み」というれんが工法で建てられている。原爆投下3日後の8月9日に運転を再開した電車(己斐―西天満町)の電力源となった。広島県が98年に発行した調査報告書「広島県の近代化遺産」にも掲載されている。
しかし、市が進める廿日市駅北土地区画整理事業の対象地域に専用送電線があったことから、広電、中国電力、市が2006年から協議して送電線の廃止に合意。近くに建設した新変電所の完成に伴い、旧変電所は昨年3月末に停止した。
【写真説明】取り壊し作業が進む広島電鉄の旧廿日市変電所
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