不況まっただ中で、来春卒業予定の学生の就職活動が始まっている。就職イベントにも例年以上の人数が集まっているが、集まるのは学生だけではない。学生の親が代わりに就職フェアに出たり、就職説明会を受けたり。わが子の就職が気が気でない親のために、大学や就職支援サイトなどは親への手厚い支援を始めている。
昨年11月、リクルートが開いた就職イベントには、昨年の2倍以上にあたる約4万6千人の学生が詰めかけた。なかにはところどころに親らしき人の姿も。主催したリクルートによると、「子どもが来られないので代わりに来た」「親としても見ておきたい」など、出席する親は最近少なからずいるのだという。
「就職ジャーナル」編集長の川上直哉さんは「年々就職活動について親の関心は高まっている」という。編集部には親から「子どもが就職活動に動く気配がない」「聞いたこともない会社の内定をもらってきた」「子どもの代わりにエントリーシートを書いてもいいものか」といった不安や疑問が届く。
そこで昨年、「保護者のみなさまへ」という別冊を作り、大学を通じて配ったところ、要望が殺到。今年は「保護者のための就職ジャーナル」とタイトルを変え、昨年の3倍の約7万部を配布した。大学が親への説明会などで配っているという。
「イマドキの就活スケジュール」「保護者ができることは、何?」「就活中の子どもとの付き合い方」など、教育の専門家や大学の就職担当者などが解説している。
川上さんは「過保護な親が多くなっているのは確か」と言いつつも、「親も子も、高校までは偏差値というヒエラルキーがはっきりした中にいる。それが突然基準のあいまいな世界に放り出される不安は理解できる」と話す。
「就職活動は学生が最初の挫折を味わう場。親はとって代わるのではなく、あくまで子どものサポートを」と助言する。
大学側も、保護者だけを集めて「就職説明会」を開くなど対応を始めている。中央大は、キャリアセンターの15人の職員が毎夏2カ月かけて全都道府県を回り、保護者会を開催。就職に関する保護者の疑問や不安に直接答えている。「民間企業と公務員の両方を受けさせたい」「大学はどんな支援態勢なのか」などの声が上がるという。
キャリアセンターは「どの企業に行くのかの最終決定では保護者の意見が強い。言われて就職しても、すぐ辞めてしまう学生もいるので、親子の間での話し合いをお願いしている」という。
東京外国語大も3年ほど前から、入学して約半年後の11月に保護者に就職活動について説明する場を作った。2、3年生の保護者会ではさらに具体的に就職活動の流れや就職状況を説明している。
「どのくらい勉強ができたらどの企業に入れるのか」「名の知れた有名企業に入ってくれさえすればいい」といった声も多く、同大学生課は「就職活動と大学入試を勘違いしている方もいるので、現状をよく知ってもらいたい」と伝えている。
今年1月、立命館大は在学生の全保護者3万3千人に冊子を送った。テーマは「後悔しない就職のために、親は何ができるのか?」。同大キャリアオフィスは「少子高齢化で、親は地元で就職してほしいといった希望も強くなっている。親と子どもが一緒に就職や人生を考える時代に入っている」と話す。(宮地ゆう)
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