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麻生首相:実用書を大人買い 「四書五経」遠い昔?

本を品定めする麻生首相=東京都中央区の八重洲ブックセンター本店で2008年11月1日撮影
本を品定めする麻生首相=東京都中央区の八重洲ブックセンター本店で2008年11月1日撮影

 「漫画ばかり読んでいる」「KY(漢字が読めない)」といった批判を打ち消すのに躍起なのか、書店でビジネス書などを“大人買い”した麻生太郎首相。論語など「四書五経」が政治家にとって必読書と言われた時代は昔の話。今どきの宰相の愛読書といえば--。【坂巻士朗】

 麻生首相が1日、立ち寄ったのは東京駅前の八重洲ブックセンター本店。11月1日、11月30日、12月27日に続き、首相としては就任5カ月で4回目だ。

 首相の事務所によると、移動中はもとより、休暇中の自宅でも本を開く読書家だという。秘書は「漫画好きが注目されるが、漫画は気分転換の時だけ」。

 今回購入した10冊のジャンルは広い。といっても、文学書のたぐいは一切なく、実用書、ビジネス書が中心。景気対策を第一に掲げる麻生首相にとって、「危機を超えて すべてがわかる『世界大不況』講義」(伊藤元重著)は必読か。意外なのがジャーナリストの原寿雄さんの「ジャーナリズムの可能性」。実は同書は07年秋の自民、民主両党の大連立騒動にジャーナリズムがかかわった点を批判している。塩野七生さんの「わが友マキアヴェッリ」は、目的達成のためには手段も選ばない思想家への共感か? 日下公人さんらの「強い日本への発想」も求めたが、実はこれ11月末にも買っていた。

 敬愛してやまない祖父の吉田茂元首相もそうだったように、昭和の首相の多くは漢文の素養があり、論語など「四書五経」は必須の教養とされた。麻生首相が購入した本の書名を見る限り遠い過去の話になってしまったようだ。

 ベテラン政治記者によると、最近で読書家と記憶されているのは、大平正芳、中曽根康弘、宮沢喜一、橋本龍太郎の歴代首相。中曽根氏は在任当時、首相にとっての読書の必要性についてこう語ったという。

 「サミットのコーヒーブレークでは、欧州の首脳たちが歴史的な著書の内容を引き合いに雑談を始める。あたかも教養試験を受けているようだった」

 また、宮沢氏は洋書に親しんでいた。交流のあった経済評論家の佐高信さんはこう振り返る。

 「作家の城山三郎さんが『宮沢さんは文学が分かる人だ』って喜んだことがあった。初期の短編集『イースト・リバーの蟹』を贈った際に、(フランスのノーベル賞作家である)アナトール・フランスみたいだって言われたよ、と話していた」

 八重洲ブックセンターで、佐高さんの著書「小泉純一郎と竹中平蔵の罪」に目をとめた麻生首相。「買ったら面白いんじゃない。『麻生首相熟読』とか」と笑っただけで、購入は見送った。

 その佐高さんは「小泉・竹中路線での改革がどのような結果を生んだか。『郵政民営化に内心は反対だった』なんて責任転嫁している場合じゃない。耳の痛い話でも積極的に受け入れる姿勢が首相には求められる。これからでもいいから、ぜひ読んで」と話した。

毎日新聞 2009年3月7日 12時21分(最終更新 3月7日 12時34分)

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