また1つ、インターネットへの接続手段が増えた。いうまでもなく、それはWiMAXであり、インテルが強力にプッシュしていることもあり、短期間で欠かすことのできないインフラになりそうだ。 ●小さな端末を刺すだけで接続 UQコミュニケーションズのモニタ募集に応募し、1/4という確率を、なんとかくぐり抜けてモニタユーザーに選ばれた。そのモニタ用端末が手元に届いた。 ぼくが選んだ端末は、UD01SSで、USBタイプの小さい方の製品だ。縦方向のみに曲がるプラグ部分が本体に折りたためるようになっている。重量は18gと軽く小さい。 パッケージには簡単なマニュアルと、CD-ROMが同梱されていた。その指示通り、先に端末をPCのUSB端子に装着すると、ドライバのインストールソフトを実行するかどうかを問い合わせる自動再生のダイアログボックスが表示された。どうやら、最初の装着時のみ、マスストレージとして見えるようになっていて、そこからドライバの組み込みユーティリティが起動されるようだ。ドライバのインストール完了時に、マスストレージは解除され、ドライブは見えなくなる。 ドライバの組み込みが終わったら、次は、CD-ROMから接続用のユーティリティをセットアップする。どうせなら、そのセットアッププログラムも端末内に入れておいてほしかったところだ。 やることは、これだけだ。これだけで、USB端子に端末を刺せば自動的にインターネットに接続され、抜けば切れるという環境ができあがる。デスクトップには接続ユーティリティのアイコンが作成され、それを使って接続するのだが、設定オプションが3つ用意され、
という3つにチェックをしておけば、ユーザーがやることは、本当に刺すことと、抜くことだけになる。CUというのはコネクト・ユーティリティの頭文字だ。 本当は、これらの作業とは別に、端末にキャリアから発行されたネットワークIDとパスワードなどを書き込む必要があるはずだが、今回は、その手順は必要なく、最初から設定済みの端末が送られてきたようだ。本番通りの手順を踏まないと、モニタテストの意味がないんじゃないかと思うがどうだろう。 ●無意識の接続 ぼくが仕事をしているのはマンションの6Fで、屋内に弱いとの情報もあり、ちょっと心配だったのだが、窓際まで行かずとも、部屋の中で普通に接続することができた。また、近所にある行きつけの居酒屋や喫茶店などでも試してみたが特に問題なく接続できた。 都心であれば無線LANのアクセスポイントを容易に見つけることができるが、自宅周辺で無線LANが使えるのは駅前のマクドナルドだけだったので、比較的高速なインターネット接続ができるスペースが広がったことになる。 比較的高速という奥歯にもののはさまったような書き方をするのは、期待したほどのスピードが出なかったからだ。少なくとも自宅周辺では下り1Mbpsに満たない。でもVPN経由のリモートデスクトップで自宅のパソコンを使うくらいの用途なら十分だし、当然、ウェブやメールでストレスを感じることはない。 とにかくうれしいのは、ユーザーが接続を意識する必要がないという点だ。多くのサービスでは、サービス圏内に自分自身がいることを確認した上で、接続して認証するという作業が必要になる。これらの一部は自動化することもできるが、たいてい、Webブラウザに記憶させたIDとパスワードを送出するために、Webブラウザを開かなければならなかったり、接続ユーティリティの起動が必要だ。ダイヤルアップを自動的に開始する方法もあるが、ブラウザを開くなり、メールの送受信を続けるなどのトリガーが必要だ。接続にチャレンジできたとしても接続できなければエラーメッセージが頻繁に表示されることになるだろう。 でも、WiMAXでは、コンピュータの起動時に一度接続ユーティリティを起動しておけば、以降は、端末を刺すだけでいいのだ。 今は、USB端末なので、いくら小さいといっても刺しっぱなしにしておくのはちょっと無理があるが、WiMAX内蔵のPCが出てくるようになれば、もっと意識しなくてもよくなるはずだ。 ただ、端末に認証情報が書き込まれる以上、複数台の内蔵PCには複数の契約が必要になるだろう。そのようなニーズに応えるために本サービスの開始後は、1契約で複数端末を使えるオプションを用意することも考えているそうだ。でも、同時ログインが許されるかどうかは微妙だ。たとえば、自宅に放置した接続しっぱなしのPCのおかげで、出先ではにっちもさっちもいかないような状況だって考えられる。そのような事態に備え、別手段でインターネットに接続し、ウェブで強制切断をする仕組みなども欲しくなるかもしれない。もちろん、価格設定のイメージも気になるところだ。 ●ほぼネット接続可能な環境 今、既存のインターネット接続サービスで、もっともこれに近いのはドコモの公衆無線LANサービスだ。このサービスでは、通常のブラウザによる認証の他に、802.1x認証をサポートしている。だから、最初の接続時に認証情報を設定しておけば、以降は、アクセスポイントが見つかるたびに、ユーザーの意志を問わず、自動的に接続が完了する。 たとえば、都心を地下鉄で移動中にパソコンを起動していれば、駅に着くたびに接続し、駅間で切断され、次の駅で接続するといった状態を繰り返す。WiMAXのサービスエリアが理想的な状態に広がれば、同様の環境ができあがることになるはずだ。 特定のエリアではもっとも高速な無線LANを使い、広いエリアではWiMAX、それらが使えないところで緊急手段として3G通信を使うといったところだろうか。無線LANでWiMAXを代替するのははなから無理として、3G通信とWiMAXの棲み分けは気になるところだ。 人口カバー率がほぼ100%に達している3G通信と現時点でのWiMAXを比べるのは無理があるが、せっせとサービスエリアを拡大しているイーモバイルなどのキャリアとWiMAXを比べれば、今のところ、エリアの点ではイーモバイルに軍配があがる。ただし、接続の作業自体はすでに書いたように、WiMAXが圧倒的に簡便だ。なんといっても、知らないうちにインターネットにつながっているという感じが心地よい。 バッテリの運用時間を無視できるのなら、WiMAXも3Gも無線LANも、全部、接続をチャレンジし続け、つながるところではつないでしまうようにしておきたくなる。Windowsは、複数の経路がある場合、自動的にもっとも高速な経路を選んで使うので、ほんとうにシームレスな接続環境が手に入る。この3つを併用すれば、たとえば、日本国内でぼくがインターネットにつながらないのは地下鉄駅間と搭乗中の飛行機内だけとなるだろう。トンネルの多くは3G通信ができるので、地上の移動で不自由することはないはずだ。 おそらくは、普段の生活で、PCを開いている時間の95%以上はインターネットにつながっている。そういう時代がようやくやってきたということだ。今のところそのためのコストは、WiMAX、3G定額通信、無線LANで合計15,000円/月といったところだ。もちろん、そのうちもっともコストが高いのが3G定額通信だ。WiMAXが人口カバー率100%近くを達成し、3G通信網に匹敵するようになるのが早いか、3G定額通信のコストがWiMAX並に落ちるのが早いか。いや、無線LANさえ駆逐されるほど、高速ならそれが理想だ。 ●世界標準だからできること WiMAXに期待できるのは、このサービスがワールドワイドで標準の規格であるという点だ。リーズナブルな料金で、海外におけるローミング接続ができるようになっていたり、少しでも廉価な接続のために、海外滞在時は、そのときだけ別のWiMAXキャリアと契約を結ぶといったことができるようになってほしい。 その場合、単一の機器に複数の認証情報を記憶させる必要がありそうだが、そういうことができるようになっているんだろうか。今の3G通信のローミング料金はあまりにも高額で、あの価格ではサービスがないのと同じだから、それを決して見習わないでほしい。 米国内であれば、2008年秋までは、AT&Tがプリペイド携帯電話を使ったデータ通信サービスを、1カ月20ドルの定額で提供していて滞在中には重宝していたが、そのサービスも今はなくなってしまった。代替できるものとしてはVerizon Wirelessの「Broadband Access DayPass」があるが、こちらは、1日あたりの接続料が9.99ドルと、ちょっと高価だし、サービスエリアも狭い。たとえば、ぼくのお気に入りのヨセミテ国立公園内では、AT&Tの3G通信はできるが、Verizon Wirelessはサービスエリア圏外となっている。 これらの3G通信がなさけないビジネスを続けているうちに、一気にWiMAXが普及し、地球をネットワークが覆うといった状況がくるのが楽しみだ。Centrinoによって、多くのPCが無線LAN機能を内蔵し、無線LANが当たり前になったように、WiMAXも、それに近いプロセスを、より短期間で達成してほしいと思う。 □関連記事
(2009年3月6日)
[Reported by 山田祥平]
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