◎介護人材の養成 もう一段の報酬アップを
政府の緊急雇用・経済対策の一環として、石川、富山県は離職者に介護分野への就業を
促す取り組みを強めている。その一つとしてホームヘルパー二級の養成講座が金沢、小松、富山市で相次いで開講した。行政の支援を受けて介護職に就く人が一人でも増えることが期待されるが、介護人材が不足している最大の理由は、厳しい仕事の割に賃金が低いことであり、一層の待遇改善が望まれる。
政府は昨年まとめた経済対策の中で、介護報酬の3%引き上げを決め、新年度から実施
されることになっている。これによって、介護労働者の給与は月二万円ほどアップすると政府は見込んでいる。しかし、他産業に比べると給与水準はまだまだ低い。〇七年調査で介護労働者の月給は全産業平均に比べ女性で三万円、男性で十二万円も低い状況である。
介護体制の整備は社会保障政策としてはむろん、雇用と内需拡大の経済政策の柱といっ
てもよい。麻生太郎首相は補正予算関連法の成立を受け、近く追加経済対策の策定に乗り出す方針だが、その中で介護報酬のもう一段の引き上げを考えてはどうか。
石川、富山県の介護分野の有効求人倍率は二倍を大きく上回る一方、雇用情勢の悪化で
介護職をめざす人が増えている。実際の介護は重労働であり、県内の福祉関係者らの間では、就業希望者の増加を喜びながらも「高い志や思いやりの心を持った人でなければ長続きしない」と懸念する声も聞かれる。もっともな指摘であるが、それだけになお、志を持ちながら生活難から介護現場を去る人が多い現状を改める必要がある。
民主党は介護報酬を10%引き上げる法案をまとめている。介護報酬は過去二回にわた
り計5%近く引き下げられており、3%アップで給与改善はおぼつかないとの理由からである。事業者の判断で賃金以外に充てられる可能性もある。介護人材は社会の安全網の要であり、介護職を嫌われない職業として確立することは政治の務めでもあろう。報酬のさらなる引き上げで与野党が一致点を見いだすことは十分可能なはずだ。
◎小沢氏の検察批判 国民の理解は得られぬ
小沢一郎民主党代表の会見は、強制捜査に踏み切った東京地検への批判に終始した。献
金の違法性はもとより、自らの代表辞任についても否定するなど、あくまで強気一辺倒で、西松建設のダミー団体から、巨額の献金を長期にわたって受けていた理由についての具体的な説明はなく、お詫びの言葉もなかった。
検察との対決姿勢を打ち出して、正面突破を図るつもりなのだろうが、事件の核心部分
を語らず、批判オンリーという強気路線が通用するとは思えない。もし今回の強制捜査の対象が自民党の議員秘書だったら、小沢氏はじめ民主党議員は「責任を取って辞任せよ」の大合唱だっただろう。解散・総選挙が取りざたされるなかでの逮捕であっても、そのことを問題視しただろうか。火の粉が自分たちの側に降りかかったときだけ「不当な国家権力の行使」や「民主主義を危うくする」「公正さを著しく欠く」などと大仰に騒いでも、国民の理解は得られない。
そもそも東京地検特捜部がこれまでに手がけたロッキード事件やリクルート事件、東京
佐川急便事件、金丸信元自民党副総裁の脱税事件、ゼネコン汚職などの逮捕者は、自民党議員が圧倒的に多い。小沢氏は検察権力が政府・与党の意向で動くような未成熟な国家だと本気で思っているのだろうか。民主党の幹部が「国策捜査だ」「仕組まれた陰謀だ」などと付和雷同するのも見苦しい限りである。
小沢氏は会見で、「大きな金額の(献金の)背景を小沢代表事務所では調べないのか」
という核心に触れる質問に対して、「献金をくれるという方について、このおカネは、どういうところから出るのかということは普通の一般常識として、せんさくしない」「献金してくださる皆さんの善意を信じてやっている」と述べた。十一年間にわたって一億八千万円もの巨額のカネを受けていながら、出どころを調べない、知らないというのは不自然ではないか。
違法な献金を受けていたことが問題なのに、「きちんと記載している」と言うばかりで
は、疑問に答えたことにはならない。