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周産期母子医療センター:帝王切開「30分で手術可能」3割 麻酔医が不足

 全国の周産期母子医療センターの約3分の2が、国の整備指針に反して「(必要と診断されてから)30分以内の帝王切開手術」に対応できない場合があることが、厚生労働省研究班(主任研究者、池田智明・国立循環器病センター周産期科部長)の調査で分かった。産科医よりも麻酔科医の不足がネックになっており、厚労省が年度内に見直すセンターの指定基準に麻酔科医の定員を明記するよう求める声が出ている。

 調査は昨年3月、全国の総合周産期センターと地域周産期センターに行い、130施設の回答を調べた。

 国の指針では、地域センターは30分以内に帝王切開ができる人員配置、総合センターにはそれ以上の対応を求めている。だが「いつでも対応可能」と回答したのは総合センターの47%、地域センターの28%にとどまり、48%は「昼間なら対応可能」、17%は「ほぼ不可能」と答えた。

 対応が遅れる最大の理由は「手術室の確保」(43%)だったが、人的要因のトップは「麻酔科医不足」(25%)で、「産科医不足」(17%)、「看護師不足」(14%)より多かった。54%の施設は当直の麻酔科医がおらず、緊急の帝王切開では執刀の産科医が麻酔もかけているセンターが16%あった。

 麻酔科は産科、外科などと並び医師不足が深刻とされるが、帝王切開で通常かける麻酔の診療報酬が全身麻酔の場合より著しく低いため、特に周産期医療の現場に集まりにくいとの指摘がある。

 分析に当たった照井克生・埼玉医大准教授(産科麻酔科)は「リスクの高い妊婦を受け入れるセンターには産科手術専属の麻酔科医の配置を義務付け、人員確保がしやすいように診療報酬を加算すべきだ」と訴えている。【清水健二】

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 ■ことば

 ◇周産期母子医療センター

 リスクの高い出産や妊婦と新生児の高度医療を扱う医療機関。現在全国に、母体・胎児集中治療室(MFICU)を備えた「総合センター」が75施設、そのほかの「地域センター」が236施設ある。麻酔科医の配置は、総合センターでは必須、地域センターでは「望ましい」とされている。

毎日新聞 2009年3月5日 東京朝刊

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