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  ▼ 記者の視点
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後期臨床研修制度を担うのは誰か
自律性と自浄作用有する第三者機関創設を提言
2009.3.2

 厚生労働省の「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究」班はすでに8回の班会議を終え、議論は最終コーナーを回った。報告書の取りまとめに向けた論点としては、<1>各診療科の専門医研修の在り方<2>家庭医・総合医の養成<3>具体的な医師後期臨床研修制度の在り方―が指摘されている。

 同研究班の最大の目的は、医師の後期臨床研修制度の在り方について調査・研究し、制度の運営主体となる「第三者機関」の創設を提言することにある。第三者機関は、医療者が自ら専門医・家庭医の質的担保や人数のコントロールなどを行う組織となることを想定する。

●ビジョンから続く議論

 ここで、同研究班が発足するまでの経緯をおさらいしてみたい。

 厚労省の「安心と希望の医療確保ビジョン会議」の初会合が2008年1月に開かれた。長期的な日本の医療ビジョンを策定するため、舛添要一厚生労働相の肝いりで設置したものだ。同年6月のビジョン取りまとめを受け、厚労省は「安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会」を設置。同年9月には中間取りまとめを公表し、医師養成数を将来的に50%程度増加させるといった大胆な提言を盛り込んだ。

 さらに同検討会から、医師の臨床研修制度をテーマとする新たな検討の場が2つ生まれた。1つは厚労省と文部科学省が合同で設置する「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」で、主に初期臨床研修制度について議論し、すでに意見の取りまとめ案を公表した。そして、後期臨床研修制度の在り方を議論するため、同研究班がほぼ同時期に発足した。

 そもそも同研究班は舛添厚労相の意向で始まった会議の流れに沿って設置されたこともあり、従来の枠組みとは異なる形で議論が進められているといってよさそうだ。

 班会議は第6回を除いて公開され、毎回の議論はインターネット上のホームページを通じて情報提供された。その透明性の高さは特筆に値する。同研究班の班長を務める土屋了介・国立がんセンター中央病院長も講演で、ホームページを通じてリアルタイムで議論の内容を情報発信することで多くの関心が寄せられ、従来の枠組みにとらわれない幅広い議論が展開されたことを評価した。

●「家庭医」も専門医

 これまで同研究班の班会議では、さまざまな立場の医療関係者からヒアリングを行った。日本専門医制評価・認定機構、日本医師会、日本学術会議、全国医学部長病院長会議、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会など、多岐にわたる。土屋班長は、ヒアリングはこれら既存の組織が第三者機関の受け皿として要件を満たすかどうか判断する材料だったことをうかがわせた。

 結果はどうか。土屋班長の見方は厳しい。「国民・患者不在」「権益確保」「後輩医師や国民・患者は眼中になし」「実行力なし」「回顧主義」「軸足が不明確」などといった言葉が続き、あたかも既存の組織は眼中にないようだ。

 第三者機関は新たな組織として、自律性と自浄作用を有し、医師の後期臨床研修制度を運営する主体となることが期待されている。

 報告書には「卒後研修(専門医制度)委員会」の名称で、その設立に関する記述が盛り込まれる見通しだ。専門医制度についても関与し、その中で専門医としての「家庭医」を明確に位置付ける。構成員メンバーについては研修医代表も想定する。さらに「保険者と被保険者としての『市民』を入れること」も今後の検討課題と指摘する。

 同研究班の当初のもくろみでは、第三者機関を2009年4月に発足させることを目標に掲げる。現時点でその実現はかなり難しいといわざるを得ないが、報告書がどのように受け止められるか、今後の動向を注意深く見守っていきたい。(那須 庸仁)


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