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2009年3月4日

◎小沢氏秘書逮捕 まず自らの言葉で釈明を

 政治資金規正法違反容疑で、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が逮捕された事件は、 政界に巣食う「政治とカネ」の根深い問題をまた一つあぶりだした。長期間にわたって、西松建設側から小沢氏側に巨額のトンネル献金が行われていた事実は重く、通り一遍の説明や、まして「黙して語らず」では国民が納得しない。小沢代表は会見を開くなど、疑惑の全容について、まず自らの言葉で釈明すべきだろう。

 政治団体を隠れみのにした違法な闇献金事件が後を絶たぬなかで、次期首相の有力候補 の公設秘書逮捕は衝撃的である。政界に巣食う政治資金の底知れぬ闇の深さを思わずにはいられない。

 西松建設が政治団体をダミーにして政界にトンネル献金をしていたとされる疑惑につい て、小沢代表は「政治団体からと思って受け取ったのだと思うので何の違法性もない」と述べたという。

 しかし、西松建設がダミーに使っていた二つの政治団体は、事務所の所在地が同じで、 代表にはそれぞれ西松建設OBが就いていた。政治資金規正法は議員の政治団体に、企業や団体が献金することを禁じている。小沢氏側に流れたカネは十二年間で二億円近くに上るとの見方もあり、違法なカネの出し手が西松建設で、事実上の「企業献金」だったことを「知らなかった」では済まないだろう。

 次期衆院選が近い政治状況を思えば、民主党が「国策捜査」などといきり立つ気持ちも 分からぬでもないが、東京地検特捜部は、長期にわたり巨額のカネを受け取っていた点を悪質とみたのではないか。小沢氏の資金団体は、かつて政治資金で購入したマンションを貸し出して家賃収入を得ていた問題が発覚したこともあり、政治とカネにまつわる疑惑が指摘されていた。

 西松建設の献金疑惑については、小沢氏以外にも複数の政治家の名が取りざたされてい る。企業と政治家の癒着に向ける国民の目は厳しい。東京地検特捜部はそんな国民の心情を理解し、疑惑の全容解明に努めてほしい。各国が経済危機に必死になって対処しているときだけに、日本の政治の情けない現状を残念に思う。

◎高速料金引き下げ 効果を生かす戦略が必要

 二〇〇八年度第二次補正予算の関連法案が衆院再可決を経て、ようやく成立する運びと なった。地域経済の活性化という観点から、石川、富山県に早急に取り組んでほしいのは、今月中にも実施が見込まれる高速道路料金の大幅引き下げに対応し、その効果を地域に確実にたぐり寄せる戦略を描くことである。

 高速料金が休日は千円で乗り放題になれば、マイカーなどによる観光需要が期待でき、 しかも二年間にわたって継続される。このような大胆な引き下げは、観光誘客の新たな地域間競争の火ぶたが切られることを意味し、たとえば徳島県では統一ロゴ作成などの戦略をまとめ、既に全庁体制でプロジェクトチームが動き出している。

 石川、富山県では北陸新幹線開業に備えた準備が進んでいるが、五年後の二〇一四年度 ばかりに目を奪われていては、眼前のチャンスをみすみす逃すことにもなりかねない。前倒し可能な施策は早急に実行に移すなど、高速料金引き下げを新幹線開業の前哨戦と位置づけ、全庁的な体制を整えたい。

 高速料金の引き下げは、地方の場合、土日祝日は普通車(ETC搭載車)なら上限千円 、平日昼間でも三割引となる。マイカー利用に的を絞ったキャンペーンや高速道路SAでの情報発信拡充など、できることはたくさんある。二年間の引き下げ期間中の具体的な誘客目標を県として掲げるのも一案だろう。

 石川県は昨夏の東海北陸自動車道の全線開通では、開通効果を引き出す事前準備は必ず しも早いとは言えなかった。今回は全国的な誘客競争であり、大きく構えて観光関連施策を強化する必要がある。北陸一体で広域連携する視点も極めて大事である。

 二次補正予算関連法案の成立で定額給付金の支給も始まる。両県でも独自に金額を上乗 せする「プレミア付き商品券」などを導入する自治体や商工団体が増えている。国の予算をいかに上手に活用し、冷え込む消費マインドの改善や地域の内需拡大につなげていくか。これからは自治体の知恵や工夫が試される番である。


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