キヤノンの大規模施設建設をめぐる脱税事件で、法人税法違反容疑で逮捕された会社社長の大賀規久容疑者(65)が、キヤノンから施設の候補地を探すよう依頼されていたことが分かった。キヤノンが朝日新聞の取材に認めた。関係者によると、大賀社長は依頼時に得た情報をもとに、大手ゼネコン「鹿島」以外のゼネコンなどとの仲介役も務めていたという。
鹿島と同様に大賀社長に多額のコンサルタント料を支払っていたケースもあり、大賀社長がキヤノン発注工事の受注企業から「キヤノン側の窓口」と認識されていたことが浮き彫りになった。
大賀社長は経営していた3社のうち1社の脱税容疑で逮捕されたが、東京地検特捜部は別の2社についても脱税容疑が固まったとして、週明けにも再逮捕する方針。隠した所得は総額で30億円を超えるという。
大賀社長の関与が新たに判明したのは、キヤノンの電子装置製造子会社の「キヤノンアネルバ」(川崎市)の新本社建設プロジェクト。東京の準大手ゼネコンが約82億円で受注、07年夏に完成した。
キヤノンなどによると、手狭になっていたそれまでのアネルバ本社を移すことになったため、大賀社長らに候補地の情報提供を依頼。大賀社長から川崎市麻生区の土地を紹介された。他にも複数の候補地があったが、キヤノンは「交通の利便性や十分な広さが確保できることからこの土地を選定した」という。
この過程で、大賀社長は準大手ゼネコンをキヤノンに紹介。ゼネコンがその後の実際の用地取得などを担うようになったこともあり、建設工事の受注にも成功したとされる。ゼネコンは、この他にも東京都目黒区のキヤノンの施設の建設工事を計約68億円で受注。大賀社長側に少なくとも1億円のコンサルタント料を提供した模様だ。