インタビューに応じる福地茂雄NHK会長=東京・渋谷のNHK
民間企業から就任して1年。NHKの福地茂雄会長が朝日新聞のインタビューに答えた。11年7月の地上デジタル放送完全移行に対し、延期論が出ていることについて「絶対に困る」と予定通りの実施へ強い意向を示した。
――昨秋の総務省調査で、地上デジタル放送受信機の世帯普及率は46.9%。業界内外から、アナログ停波延期論も出始めている。放送事業者としてどう考えるか。
新しい中継局はアナログ送信が出来ないなど、延期に対応しうる設備投資をしていない。完全移行は約10年前から言われており、国会審議で付帯決議までされた。延期となれば、2階ではなくて、5階に上がってはしごをはずされる感じだ。今からどうこうするというのは絶対に困る。
――新中期経営計画(09〜11年度)を策定した昨年10月以降、景気は予想以上に冷え込んでいる。計画の実行は可能なのか。
急激な社会情勢の変化があれば見直すと、計画の表紙に書いてある。今やるべきは3月までの現行計画。08年度の事業収入目標6575億円を上回れば、新計画のスタートラインが前に出る。
――12年度以降の受信料収入「還元」の実行はどうか。
受信料は安いに越したことはない。余裕ができたら、受信料は下げないと。ただ、NHKの場合、その前にやるべきことが多すぎる。また、原資ができた時の視聴者への返し方は議論した方がいい。一律で十数円や百円玉1、2個から、(特定の人に)全額というケースまで、公平性など色々な兼ね合いがある。
――現行では、経営委員会が会長を決め、経営委員は首相が任命する制度になっている。会長は公募すべきだとの意見もあるが。
会長は人気投票じゃない。5千万世帯の視聴者に放送という商品を送り出し、職員1万人余りの生活を抱える組織のトップ。責任職だ。アサヒビール副社長の時、システムや物流などの勉強はしたが、それはあくまで勉強。現場のことは知らなかった。NHKもそう。中の人なら分かる、外の人は分からない、ではない。要するに経営が分かる適任者が選ばれればいい。