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LaVieのおもてなし




 メーカー製のコンシューマ向けPCの購入は、建て売りの一軒家を購入するのに似ているかもしれない。そして、メーカーごとに、そのおもてなしのポリシーが異なる。今回は、NECの代表的なコンシューマ向けノートPC、「LaVie L」の2009年春モデル「LL750/SG6R」のおもてなしを体験してみた。

●LaVieがかなえるアウト・オブ・ボックス・エクスペリエンス

 ちょっと高級な日本旅館に宿泊すると、玄関で荷物を預かられ、部屋に案内され、お茶が振る舞われ、宿帳に名前を記入し、時候の挨拶をするなど、客であるこちらが恐縮するくらいに丁寧な扱いを受ける。それをよしとするかどうかは、個人の価値観次第ではあるが、日本のベンダーのコンシューマ向けPCには、おおむねそんな傾向があるように思う。

 今回試したLaVieの場合、まず、パッケージそのものは、特に高級感もない普通の段ボール箱に入っている。これは、グリーンを意識した風潮にしたがったものだろう。そして、上部のふたを開くと保証書が貼り付けられたもう片方のふたがあり、それを開くと、内部をのぞき見ることができる。

 内部には、PC本体が、やはり段ボールの緩衝材で支えられ、それと並んでアクセサリボックスが入っている。

 アクセサリボックスの中身は、バッテリ、ACケーブル、電源アダプタ、USBケーブルマウス、Office Personalの再インストール用ディスク、そしてマニュアル類を束ねて入れた透明の袋だ。また、それらと別に目立ちやすい黄色いペラが同梱されている。ペラというのは紙1枚のチラシのようなものだと思ってほしい。この黄色いペラには、「初回起動のご注意」と大書され、マニュアル「準備と設定」を読むようにと指示されている。

 さて、同梱のマニュアル類はどうなっているかというと、次のような構成になっている。

・ウィルスバスターのセットアップガイド
・インターネット活用ガイド
・121wareガイドブック
・パソコンのトラブルを解決する本
・1 準備と設定
・2 活用ブック
・優待情報パンフレット
・バックアップユーティリティのご注意ペラ
・USBコネクタ使用時のご注意ペラ
・Ultimateアップグレード優待のペラ
・PC修理チェックシート
・デジタル放送録画番組配信機能をお使いのお客様へペラ。ライセンスキー
・安全にお使いいただくために
・お客様登録方法一覧ペラ
・使用許諾ペラ

 かなり多いことがわかるが、まさに、至れり尽くせりだ。とにかく黄色いペラで喚起されているように「1 準備と設定」に目を通す。

 ちなみに、これらのマニュアルのほとんどすべてはPDFとしてウェブで公開されていて、購入前に目を通すこともできるし、購入したユーザーも、ダウンロードしてPCに保管しておくと便利かもしれない。下世話な想像をすれば、PDFで済ませることで、袋の封を切らずにドキュメントに目を通すことができるので、売り払うときに有利といった考え方もできる。

●オーナーの色に染まるLaVie

 さて、本体は、白い袋に入っている。液晶とキーボードの間には何も挟まれていない。過去に見てきた製品の多くは、液晶とキーボードの間に布や発泡スチロールが挟み込まれ、液晶面が傷つかないように配慮されていた。ある意味で、これはすごい自信だと思う。

 「1 準備と設定」にしたがい、本体にバッテリを取り付け、電源を接続する。電源の入力端子は背部にあり、そこにL型プラグを装着するようになっている。ここのところ使ってきた機体は、そのほとんどが左もしくは右脇奥に端子が配置されていたので、これもちょっとスマートに感じる。

 電源を入れる。

 BIOSが起動し、Windowsの初期設定が始まる。まずは、国や時刻や通貨の形式、キーボードレイアウトの設定、続いて、ライセンス条項へ同意だ。ここまでは、Windowsのお仕着せなのでどのメーカーも変わらない。

 次は、ユーザー名の入力で、マニュアルには例として「mita」というユーザー名が挙げられている。これはNEC本社のある港区三田にちなんでいるのだろう。

 ここで、マニュアルを見ると、ユーザー名には日本語を使わないようにとの注意が記載され、さらに、パスワードはあとで設定するようにとの注意がある。ユーザー名に日本語を使うと、ソフトによって正しく動作しない上、コンピュータ名にも日本語が混じるため、不具合の原因となり、あとあと不便なことが起こるとはっきり明記されている。そして、「mita」というユーザー名にした場合、コンピュータ名は自動的に「mita-pc」になることがわかるようになっている。

 このあたりの情報はマニュアルを読んでいなければわからない。だが、果たしてどのくらいの割合のオーナーが、ここまできちんと目を通すのだろうか。

 続いてコンピュータの保護設定ダイアログのあと、「ありがとうございます」が表示され開始ボタンのクリックで画面が変わり、しばらく待たされて、いきなりデスクトップ表示となる。

 つい、すぐに使い始めてしまいそうになるが、ほどなく「しばらくお待ちください」というダイアログが表示される。最初に目にするのは、デスクトップの壁紙なのだから、最初は美しい壁紙を表示させるのではなく、しばらくお待ちくださいの壁紙でもいいんじゃないかと思う。その壁紙が、これからなすべき手順の地図になっていればもっといい。

 ちょっと待って、「121ポップリンク」の設定ダイアログが表示される。「121ポップリンク」はサポート情報の自動お知らせサービスで、利用する、しないを選択できる。当然、デフォルトは「利用する」で、次に進む。

 また「しばらくお待ちください」が表示されるが、ここで、かなりの時間待つことになる。5分くらいだろうか。

 そして、次は、ソフトウェアのセットアップだ。ここで推奨の「標準セットアップ」か、「最小セットアップ」を選択することができる。最小セットアップを選んだとしても、あとから自由にソフトウェアを追加・削除することができると表示されている。これをうれしく思うユーザーも多いだろう。

 「完了のダイアログ」でOKをクリックすると、再び「しばらくお待ちください」となり、続いて「再起動します」のダイアログ。そして、自動的に再起動される。

 再起動後、また、「しばらくお待ちください」のダイアログが出たあと、文字サイズの設定とガジェット登録の設定ダイアログが表示され、それに続き、IEのスタートページを選択する。ここではBIGLOBEのホームページか、Yahoo! Japanのホームページどちらかの2択となっている。当然、デフォルトはBIGLOBEだ。

 そのあと、フィルタリングに関する注意文が表示され、とりあえず、作業は一段落だ。ここでようやくウィルスバスターが動き始めたことを知らせるバルーンがタスクバー右下に表示され、いきなり再起動される。マニュアルにはそうなるとは書いてない。

 このあと、マニュアルは、マウスの接続、パスワードの設定方法の記載に進み、準備は終了となる。

●延々と続くアップデートにユーザーは耐えられるのか

 ここまでの作業は、PCをインターネットに接続せずに行なった。というか、いつ、インターネットに接続してほしいのかがよくわからないのだ。もちろんマニュアルには、初めてインターネットを使うユーザー向け、PCを買い換えたユーザー向けなどの説明があるが、このPCを最初にインターネットにつなぐのは、どのタイミングがいいのかが明記されていない。

 とりあえず、準備作業が完了したところで、有線LANにつないでみた。

 よく知っているユーザーなら、手っ取り早くWindows Updateをかけ、ついでにMicrosoft Updateもインストールしてしまうのだが、そのまま放置してみる。

 ほどなくウィルスバスターのユーザー登録のすすめバルーンが表示されるものの、長い時間HDDへのアクセスが続いているようだ。そのうち、Windowsの更新プログラムのダウンロード中のバルーンが表示され、最終的に、20個計121.1MBをダウンロードしてインストールされた。

 インストール中には、JWordアップデートのお知らせバルーンが表示されるが、そのまま放置した。

 特に今回のアップデートでは、.NET Framework 3.5 SP1のインストールに時間がかかり、そこだけで、異様に長い時間がかかる。知っていれば、食事などに出ればいいのだが、一般のユーザーは、そうはいかないだろう。

 インストールの終了後、「今すぐ再起動」ボタンをクリックし、再起動すると、さらに更新プログラムが見つかる。ここでは、重要なプログラムとオプションを1つづつインストールする。

 そうこうしているうちに、今度は「121ポップリンク」がバルーンを表示し、新しいNECサポートプログラムがリリースされたことを伝える。詳細を表示させると、WinDVD AVC for NECのアップデートモジュールが出たというのでダウンロードしてして実行する。

 そのうち、ウィルスバスターがファイルを更新し、システムの再起動が必要だという。また、121ポップリンクが、Microsoft Updateが無効だと警告を表示する。指示に従って再起動する。

 再起動後、本機はMicrosoft Officeプリインストールなので、アプリケーションを起動してみることにする。デスクトップにはWordやExcelの各アイコンが表示されているので、その中からExcelを起動してみる。

 Excelは、2007でSP1適用済みだ。最初にユーザー名の指定ダイアログが表示されたあと、普通に起動するが、そのあとでライセンス条項の同意ダイアログが表示され、それに同意すると、ようこそダイアログとしてプライバシーオプションの設定となる。

 ここでは、「オンラインヘルプの参照」、「更新プログラムの確認」、「Officeの品質向上に協力」などを選択することができる。

 それをやっている最中に、「121ポップリンク」が「Microsoft Update」が無効だと警告する。また、アップデートを確認すると「Digital Video Network Player」のアップデートモジュールが適用され、その使用許諾ダイアログに同意しなければならなかった。

 そうこうしているうちにMicrosoft Updateがダウンロードを開始し、15個の重要なプログラムと2個のオプションを見つける。オプションはSilverlightとOffice Liveアドインで、その他はおおむねOffice関連のアップデートだ。ここでは、オプションを除いてインストールする。

 その結果、1つの更新プログラムが必要なしで、1つが失敗し、13個が成功となった。ちょっと不安に思いつつ再起動し、念のためにWindows Updateで確認すると失敗はない。

 パワーユーザー的には、これでようやく使える状態になったわけだが、ここまでにかれこれ2時間近くかかっている。これでもまだ、ウィルスバスターは未登録なので、動いているのに有効になっていない状態だ。

 電源を入れてから約2時間もの間、PCにつきっきりで、これらの作業をユーザーがやってくれることを、本当に期待していいのかどうか、ちょっと心配だ。

●ネットブックは本当に安いのか

 LaVieの場合、製品には多くのソフトが含まれていたとしても、それらをセットアップするのかどうかをユーザーが決めることができる。これはユーザーとしては歓迎できるが、メーカー側にとってはイヤなことかもしれない。なぜなら、同じ製品なのに、さまざまな状態のものが存在することになり、もし、トラブルの発生時に、その原因を絞り込むサポートの負担が大きくなるからだ。再セットアップ時に自由にできる製品は多いが、工場出荷状態で、選択できるというのは好感が持てる。

 先日、ようやく届いた「VAIO type P」と比べると、ソニーとNECの考え方の違いがよくわかる。LaVieが、そのオーナーの意志を尊重し、オーナーの色に染まろうとしているのに対して、VAIOはオーナーをVAIOの世界に引きづり込もうする。

 VAIOでは、Windowsのセットアップのあと、デスクトップが表示されても何も起こらない。そして、なぜか3回目の起動後、「VAIOをはじめる前の準備」が自動的にスタートし、ここで、ビデオや写真の解析をするかどうか、音楽の解析をするかどうかを問い合わせてくる。つまり、VAIOは、ソフトのインストール済みが前提で、その設定を促しているにすぎない。

 一方、VAIOとLaVieに共通しているのは、その製品で何ができるのかというアピールが徹底的に不足している点だ。熱心にWatch等の記事を読み、新製品に搭載された新たなテクノロジや、ソフトウェアによる利便性を、あらかじめ知っているならまだしも、店員の薦めにしたがい、財布と相談しながら製品を選び、購入したユーザーに、その知識を求めるのは酷だ。

 たとえば、今回のLaVieでは、メモリカードスロットに、撮影済みのメモリカードを装着すると、自動的にスライドショーが始まる機能が搭載されたのだが、そんなことは、やってみるまでわからない。おそらく、販売店頭でも説明されなかったかもしれない。それらを積極的に使ってもらおうという姿勢があまり強く感じられないのは、NECの奥ゆかしさなのだろうか。

 PCの新規購入が初めてのPCというケースは、すでにレアになってきているはずだ。多くの家庭では、3〜5年でPCを買い換えるだろうが、Vistaの不人気は一般にも風評を呼び、さらに長く使い続けている家庭も少なくないだろう。例え、子どもが初めて使うPCを手に入れるとしても、親のPCを使ったことはあるだろうし、親がそばにいて初期設定を済ませることもできる。

 初期設定を済ませ、そのPCで何ができるのかを、まるでアドベンチャーゲームのように、スタートメニューをたどりつつ探していくこともおもしろそうだが、多くのユーザーは、自分がPCをある程度知っていると思い込んでいる。だから、奥深くまで調べていこうとはしないかもしれない。やはり、装置全体を俯瞰できる地図のようなものが必要なのではないかと改めて感じた。

 ちなみにこのLaVie Lは、昨年末に発売されたもので、15.4型ワイド液晶のプレミアムノートPCだ。Core 2 Duo P8600(2.4GHz)に4GB(!)メモリを搭載、320GBのHDDにOfficeまでついているのに、安い通販サイトではすでに11万円を切る価格が簡単に見つけかる。ヨドバシカメラでさえ、この原稿執筆時点で137,100円の20%ポイント還元と、びっくりするような値段だ。当然、Centrino2ロゴが誇らしげに貼り付けられている。Montevinaは、ようやく完成したともいえるインテルのモバイルプラットフォームとしてきわめて優れているものだ。

 確かにネットブックは安い。5万円で買えるかもしれない。LaVieの予算があれば、2台買ってもおつりがくる。でも、その内容の違いは果たして5万円程度のものなのだろうか。そのあたりをよく考えて、次のマシンを選びたいものだ。

□関連記事
【2008年12月22日】NEC、タッチパッドで手書きできるA4ノート「LaVie L」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1222/nec.htm

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(2009年2月27日)

[Reported by 山田祥平]

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