参院は2月23日の本会議で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案を採決したが、中央社会保険医療協議会(中医協)委員の前田雅英・首都大学東京教授の再任案など3機関7人について、民主、共産、社民、国民新の野党4党などの反対多数で否決、不同意とした。
衆院は20日に、自民、公明両党などの賛成多数で16人全員について同意していたが、国会同意人事は衆院の優越が認められていないため、前田氏ら7人の人事が白紙に戻ったことになる。
このほか、不同意となったのは、人事院人事官、再就職等監視委員会の委員長と委員4人の人事案。
厚生労働省によると、これまで中医協の公益委員が不同意となったことはない。前田氏の任期が切れる3月1日以降、このポストが1つ空白になる。
前田氏再任案への反対について、民主党で不同意を提案した足立信也参院議員は、キャリアブレインの取材に対し、大きく2つの理由を挙げた。
まず、前田氏が中医協公益委員就任後に開かれた会合について、43回中8回欠席しており、欠席回数が最も多かったとした。
次に、前田氏は中医協公益委員就任後、厚労省が死因究明制度を創設するために設置した「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」座長にも就任したが、同検討会の進め方に問題があったと指摘。「原因究明と責任追及を連動させたこともあり、診療関連死に刑法の手法を持って来ようとしたことに問題がある。また、インターネット調査では、民主党案の方に多く支持を頂いており、厚労省案と評価が分かれているので、民主党案も同時に議論すべきという意見があるが、『地方説明会』と称して厚労省案に決まったかのように国内に周知したことも、座長の判断としてどうかと思う。議事録を見ると、座長として、決まった結論に導きたいという運営をしているように見えたことも問題」と話している。
このほか、足立議員は前田氏に関する私見として、「中医協公益委員でありながら、多くの諮問機関に委員として名を連ね過ぎている。果たしてそれで公益性を保てるのだろうか。これが自分の中での最大の不同意の理由だと思う」と語った。
【関連記事】
・
第四次試案か、廃案か―2008年重大ニュース(9)「医療安全調の創設」
・
「大野事件判決は、判例とは言わない」―前田座長
・
事故調検討会再開「信じられない」―小松秀樹氏
・
医療安全調、捜査機関への通知めぐり両論