第81回アカデミー賞の短編アニメーション賞にノミネートされた『つみきのいえ』の加藤久仁生監督が、バラエティ・ジャパンのインタビューにその喜びを語った。同部門では、2003年『頭山』の山村浩二監督に次ぐ日本人2人目の快挙。「本当に驚いたし、うれしかった」と笑顔を見せた。
アヌシー、ヒロシマ…すでに国内外の映画祭で19冠
『つみきのいえ』は、昨年6月のフランス・アヌシー国際アニメーション映画祭の最高賞(アヌシー・クリスタル賞)とこども審査員賞、広島国際アニメーションフェスティバルのヒロシマ賞と観客賞など、すでに国内外12の映画祭で19の賞を獲得。だが、アカデミー賞という響きは味わいも違うようで、「映画祭は自ら参加して、その流れの中で賞が発表される。でも、アカデミー賞は感じている雰囲気というか、感覚は違いますね。皆が知っているし、周りからの反響もありました」と話す。
もともとは、幾重にも積み上げられた家を描いた一枚絵を、脚本の平田研也に見せたことが『つみきのいえ』の始まり。「世界観が面白い」と興味をもった平田が書き上げたストーリーラインに沿って、製作が進められていった。
水位の上昇によって、家を上に建て増ししてきた1人の老人が主人公。お気に入りのパイプを水中に落としてしまったため、下へ下へと潜っていくうちに、かつて暮らした家々で妻や娘ら家族との過去を回想していく。中には切ない思い出もあるが、すべて鉛筆で描かれたタッチの映像はどこか温かみがあり、色合いも豊かだ。
もともとは、幾重にも積み上げられた家を描いた一枚絵を、脚本の平田研也に見せたことが『つみきのいえ』の始まり。「世界観が面白い」と興味をもった平田が書き上げたストーリーラインに沿って、製作が進められていった。
水位の上昇によって、家を上に建て増ししてきた1人の老人が主人公。お気に入りのパイプを水中に落としてしまったため、下へ下へと潜っていくうちに、かつて暮らした家々で妻や娘ら家族との過去を回想していく。中には切ない思い出もあるが、すべて鉛筆で描かれたタッチの映像はどこか温かみがあり、色合いも豊かだ。
宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』以来の日本人受賞に期待
アニメでは水の表現が最も難しいとされているが、「海を舞台にしたものを作りたかったので……。おじいさんの生活を淡々と描くことに重点を置いた分、背景的には表現しきれていないですね。波や水の表現は、もっと追求したかった」と振り返る。半面、「おじいさんの生活、積み重ねてきた人生が感じられるよう陰影を強く出した。鉛筆の質感を生かしたかったし、回想が心情を表す絵になるよう色合いに変化をつけた」とこだわりも強調した。
幼少のころから宮崎駿、高畑勲両監督らのスタジオジブリ作品を見て育った世代。大学時代は一枚絵での表現を目指していたが、3年時に受けたアニメの授業に感化され「自分で描いた絵を動かしてみたい」と方向転換。ウェンディ・ティルビー監督の『ある一日のはじまり』、マーク・ベイカー監督の『丘の農家』などに影響を受けながらも、「刺激は受けるが、自分の作りたいものを中心に作る」という高い志で、精力的に作品を発表してきた。
アヌシーで入選を果たしたWebアニメ「或る旅人の日記」など、着実にキャリアを築き、ついにアカデミー賞に手が届くところまできた。ブラッド・ピットやアンジェリーナ・ジョリー、ショーン・ペンにメリル・ストリープら、そうそうたるハリウッドスターたちと同じレッドカーペットを歩くことになるが、「これまでテレビで見ていた雰囲気と、まだ一致していない部分がある。現地に行けば変わるでしょう。ある種、別世界ですが、何度も行けるところではないので、体感してこようと思います」と謙虚に語った。
渡米は11日(水)。ディズニー、ピクサー、ドリームワークスなどのアニメ工房を見学するツアーに参加し、22日の授賞式に出席する。“大先輩”宮崎監督の『千と千尋の神隠し』(2003、長編アニメーション映画賞)以来となる日本人の栄冠を、期待せずにはいられない。
幼少のころから宮崎駿、高畑勲両監督らのスタジオジブリ作品を見て育った世代。大学時代は一枚絵での表現を目指していたが、3年時に受けたアニメの授業に感化され「自分で描いた絵を動かしてみたい」と方向転換。ウェンディ・ティルビー監督の『ある一日のはじまり』、マーク・ベイカー監督の『丘の農家』などに影響を受けながらも、「刺激は受けるが、自分の作りたいものを中心に作る」という高い志で、精力的に作品を発表してきた。
アヌシーで入選を果たしたWebアニメ「或る旅人の日記」など、着実にキャリアを築き、ついにアカデミー賞に手が届くところまできた。ブラッド・ピットやアンジェリーナ・ジョリー、ショーン・ペンにメリル・ストリープら、そうそうたるハリウッドスターたちと同じレッドカーペットを歩くことになるが、「これまでテレビで見ていた雰囲気と、まだ一致していない部分がある。現地に行けば変わるでしょう。ある種、別世界ですが、何度も行けるところではないので、体感してこようと思います」と謙虚に語った。
渡米は11日(水)。ディズニー、ピクサー、ドリームワークスなどのアニメ工房を見学するツアーに参加し、22日の授賞式に出席する。“大先輩”宮崎監督の『千と千尋の神隠し』(2003、長編アニメーション映画賞)以来となる日本人の栄冠を、期待せずにはいられない。
加藤 久仁生 Kunio Katoh
1977年、鹿児島県生まれ。多摩美術大学在学中から、アニメーションの自主制作を始める。卒業後の01年、ロボットに入社。現在、キャラクター・アニメーション部アニメーションスタジオケージに所属し、Web、テレビCM、番組など、さまざまなアニメを手がけている。主な作品にNHKみんなのうた「セルの恋」、短編アニメ「R」などがある。
text by Gen Suzuki(Variety Japan)
1977年、鹿児島県生まれ。多摩美術大学在学中から、アニメーションの自主制作を始める。卒業後の01年、ロボットに入社。現在、キャラクター・アニメーション部アニメーションスタジオケージに所属し、Web、テレビCM、番組など、さまざまなアニメを手がけている。主な作品にNHKみんなのうた「セルの恋」、短編アニメ「R」などがある。
text by Gen Suzuki(Variety Japan)