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グアム協定署名 問われる五つの「合理性」2009年2月18日

 日米両政府は17日、「在沖米海兵隊のグアム移転に係る協定」に署名した。協定の最大の目的は、海兵隊のグアム移転費用を日本側に負担させ、米軍再編計画を確実に実行させることにある。
 協定によれば、日本側の負担金は「2008会計年度ドルで28億ドルの額を限度」(1条、7条)と定めている。円高ドル安の今なら、1ドル90円換算で2520億円だ。
 なぜ日本が、これだけの膨大な税金を米軍の新基地建設のために支出しなければならないのか。
 その理由を協定は「沖縄県を含む地域社会の負担を軽減し、もって安全保障上の同盟関係に対する国民の支持を高める基礎を提供する」(前文)ためと説明している。
 沖縄の負担軽減と安保の安定的運用がセットになって、普天間移設と部隊のグアム移転が計画された。移設も移転も日本側の要望だから日本が費用を負担するという。
 だが、本当にそうなのか。ハワイの海兵隊太平洋軍司令部に研究滞在した大阪大学大学院のロバート・エルドリッヂ准教授は「グアム移駐は沖縄での削減を求められたからではなく、より柔軟にいろいろな所に展開できるように、国防総省が以前から考えていたこと」と解説している。
 だとすれば「沖縄の負担軽減」の論理は、日本に巨額の財政負担を強いるための詭弁(きべん)にすぎない。
 “現代の不平等条約”ともやゆされる「日米地位協定」でさえ、「新たな米軍施設の建設費用は米国の負担で行われる」とある。
 「法的根拠のない多額の費用負担」に対する経済的・法的合理性を問われ泥縄式に協定締結というつじつま合わせに出たと映る。
 米軍は普天間移設に反対してきた。支援部隊と攻撃部隊との一体的運用という軍事的合理性が、その主張の論拠だった。
 だが、危険な基地の放置が沖縄県民の反軍・反米感情を高め、安保の安定的運用を阻害しかねないとの政治的合理性が軍事的合理性をけ散らした。
 その政治的合理性も、経済的・法的合理性を欠き、泥縄の協定締結で体裁を保とうとしているが、辺野古沿岸での新基地建設の「環境的非合理性」の克服は困難だ。
 無理を重ねず、ブッシュからオバマ米新政権への交代を機に米軍再編合意も見直し、軍事から外交重視へ、基地から経済重視へ日米安保も転換を始めたい。


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