2009年02月18日 社説
[グアム協定署名]
むなしく響く負担軽減
中曽根弘文外相とクリントン米国務長官は、オバマ政権発足後初めての日米外相会談で「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」に署名した。
協定締結の動きが突然、表面化し、内容(全文)も知らされないまま、あっという間に協定が交わされる。一九五一年九月、サンフランシスコ講和条約と同じ日に締結された旧安保条約もそうだった。
グアム移転協定の中身は、県民生活に深くかかわり、県の将来を大きく左右する。県議会が昨年七月、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」を賛成多数で可決したのは、問題の重大さを認識したからだが、県議会の意志は今回、一顧だにされなかった。
衆院選で民意を問うならまだしも、なぜ今、唐突に協定なのか。いくつもの「なぜ」が次から次に浮かび、疑問はふくれ上がるばかりだ。
日米両政府は二〇〇六年五月、在日米軍再編に関する最終報告(「再編実施のための日米のロードマップ」)をまとめた。
協定は、ロードマップに記載された米軍再編案の実施と、グアム移転のための日本側の資金拠出を約束したものである。
ロードマップを国会承認が必要な協定にあえて「格上げ」したのはなぜなのか。
衆院で三分の二の勢力があるうちに、条約と同レベルの拘束力を持つ二国間協定を結び、政権交代が実現しても、合意内容が変更されたり破棄されることがないよう縛りをきつくする―政府の隠れた意図は明白である。
一九九五年十一月に設置された日米特別行動委員会(SACO)の取り組みと、米軍再編に基づく取り組みが決定的に異なるのは、米軍再編に基づく普天間移設が事実上、地元の頭越しに進められたことだ。
丁寧な合意形成を図るというもっとも大事な手続きが軽視されてきたことは、ロードマップの「正当性」を疑わせるものだと言わなければならない。
憲法第九五条は、一つの地方公共団体にのみ適用される特別法は、住民投票で過半数の同意を得なければこれを制定することができない、と定めている。
グアム移転協定は沖縄だけを対象にした特別法ではなく、今回、この条文を適用することはできないだろう。しかし、多くの県民が、ロードマップに盛り込まれた日米合意案には「合意していない」と思っていることも確かだ。
協定に盛り込まれた日本側拠出額二十八億ドル(上限)の積算根拠は、依然として不透明である。
海兵隊のグアム移転経費であるはずなのに、二〇〇九年度政府予算案に計上された日本側負担分の一部は、グアムの米海軍、空軍の施設整備に充てられることも明らかになっている。
ロードマップの協定化は、沖縄にとって、あまりにも問題が多い。国会は、小の虫が踏みつぶされることのないよう、問題点を洗い出し、沖縄の「目に見える実質的負担軽減」を実現してもらいたい。
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